自己嫌悪とは?その正体とチェック診断・苦しい現状から抜け出す方法

自己嫌悪とは、自分で自分自身が嫌になることです。自分を極端に批判したり、責めたり、欠点ばかり指摘したりするので、自己嫌悪を抱えた人生は、とてもつらく苦しいものとなります。
 
「強い自己嫌悪から、少しでも楽になりたい」
そう願っていても、なかなか抜け出せないのが、自己嫌悪の難しいところです。
 
そこで本記事では、自己嫌悪の原因となっている正体に気づき、自己嫌悪から抜け出すための具体的な方法をお伝えします。

本記事のポイント

  • なぜ自己嫌悪が生まれるのかメカニズムから理解できる
  • 自分の自己嫌悪の度合いをチェック診断
  • 自己嫌悪から抜け出す具体的なメソッドを解説

「自己嫌悪が強くて悩んでいる」
「どうすれば嫌な気持ちから抜けられるのか知りたい」
…という方におすすめの内容となっています。
 
この解説を最後までお読みいただければ、「そもそも自己嫌悪とは何か?」を理解したうえで、自己嫌悪とどう向き合えばよいのか、解決策を把握できます。
 
自己嫌悪に陥っている現状から抜け出すきっかけとなるはずです。少しずつでも自分を好きになるための手がかりにしていただければと思います。


1. 自己嫌悪とは?基本の知識


最初に自己嫌悪とは何か、基本の知識からご紹介します。

1-1. 自己嫌悪とは自分で自分自身が嫌になること

冒頭でも触れたとおり、自己嫌悪の意味は「自分で自分自身が嫌になること」です。
 
「嫌悪」には、以下の意味があります。

嫌悪の意味

  • 憎しみ、嫌うこと
  • 強い不快感を持つこと
  • 感情的にひどく嫌うこと

自己嫌悪を詳しくいえば、
「自分を憎しみ嫌うこと、自分に対して強い不快感を持つこと、自分を感情的にひどく嫌うこと」
と表現できます。

1-2. 自己嫌悪の対義語は「自愛」

自己嫌悪をもう少し深く理解するために、自己嫌悪の反対は何か、見てみましょう。
 
自己嫌悪の対義語は「自愛」になります。自愛の意味は「自分を大切にすること、自分を愛すること」です。

 
よく手紙の文末などに「ご自愛ください」と書きますが、「自分を大切にしてください」という意味です。
 
自己嫌悪が強くなると、その分、自愛の気持ちは失われ、自分を大切にできなくなります。

1-3. 自己嫌悪がもたらす問題

自愛と自己嫌悪のどちらが人生に幸せをもたらすか?と問われたら、「もちろん自愛」と多くの人が答えるでしょう。
 
強い自己嫌悪が長期的に続くと、心身に有害な影響をもたらす可能性があります。
 
自己嫌悪によって引き起こされる問題として、以下が挙げられます。

  • 自己破壊的な行動をとる(拒食・過食・大量飲酒・金銭浪費・ギャンブル・自傷行為・危険運転・安全ではない性行為など)
  • 新しいことにチャレンジできない
  • 自分で物事を決断することが難しくなる
  • 将来に対して憂うつな気持ちが強くなる
  • 人間関係がうまくいかない

    自己嫌悪が極まると自己破壊衝動へとつながり、最悪なケースでは自ら命を絶ってしまいます。

    物事がうまくいかないのは自己嫌悪のせいかもしれない

    身近なケースを考えてみても、たとえば「どうしても食べすぎて、ダイエットがうまくいかない」というとき、自己嫌悪が影響していることがあります。
     
    なぜなら、「健康的な食生活をすること」は、自分を大切にすることだからです。自愛感情を持っている人は、自分を大切にできます。
     
    しかし、自己嫌悪が強い人にとって自分を大切にすることは、難しいのです。まるで自分に罰を与えるかのようによくない行動をしたり、あえて粗末に扱ったりします。
     
    怖いのは、これが「無意識」で起きていることもある点です。
     
    自分では気づいていなくても、じつは大嫌いな人(=自分)が幸せになることを許せず、その人が破滅するように導いてしまうのです。これが、自己嫌悪がもたらす大きな問題です。
     
    参考:I Hate Myself: 11 Ways to Combat Self-Loathing


    2. 自己嫌悪の度合いを診断できるチェック方法


    誰しも自分のことが嫌になる経験はあるものですが、それが人生に悪影響を与えるほど強いのか、その度合いが気になるところかと思います。
     
    ここでは、簡単なリストを使ってチェックしてみましょう。

    2-1. 自己嫌悪チェック表

    以下は自己嫌悪が強い人に見られる兆候(サイン)です。当てはまるものがいくつあるか、チェックしてみましょう。

     項目
    1目標を達成することや人生をよりよく生きることを、自分の意思で拒んでしまう。
    2苦しい思いから自分で抜け出すことができない。
    3自尊心が低く、自分はいつも不十分だと感じている。
    4よいことがあっても、否定的なことばかり考えている。
    5自己嫌悪の気持ちが、勝手に頭の中に出てくるようだ。
    6無価値感や憂うつ感が強く、考えが全体的に暗くなってしまう。
    7自分が感じたことを事実として表現する。たとえば「私はダメだと感じる」ではなく「私はダメだ」と言う。
    8褒め言葉を受け入れるのが苦手だ。
    9いつもオール・オア・ナッシング(0か100で間がない)の思考をしている。
    10認められたい気持ちが強く、常に他人からの承認を求めている。

    参考:I Hate Myself: 11 Ways to Combat Self-Loathing – Talkspace

    2-2. 6個以上当てはまったら自己嫌悪が強いタイプ

    前提からお話ししたいのですが、自己嫌悪の気持ちを抱くことは、誰にでもあります。

    チェック表で当てはまる項目があったからといって、すぐ問題となることはありません。むしろ、ひとつも当てはまらない人のほうが珍しいはずです。
     
    ただし、健全な人でもあり得る自己嫌悪の範囲を超え、過剰になっている場合には、その事実に気づき、適切なケアをする必要が出てきます。
     
    「自分の自己嫌悪は、ほかの人に比べて過剰かもしれない」
    と注意してほしいラインが10項目のうち6個以上に当てはまった場合です。
     
    心や体の健康によくない影響が出る前に、少しずつでも自己嫌悪から抜け出す方法を模索していくことが大切です。
     
    まずは次の章で、どんな原因が隠れているのか、見ていきましょう。


    3. 自己嫌悪が止まらない原因


    常に自己嫌悪の状態が続いている場合、考えられる原因として以下が挙げられます。

    • 子ども時代の心の傷
    • 自分への高すぎる期待・完璧主義
    • 自尊感情や自己肯定感の低さ
    • メンタルヘルス不調

    それぞれ解説します。

    3-1. 子ども時代の心の傷

    1つめの原因は「子ども時代の心の傷」です。
     
    東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授は、以下のとおり述べています。

    何が原因で心の中に「自己嫌悪の芽」が生まれるのでしょうか。
    私は3歳くらいまでの発達段階で受けた心の傷が原因だと考えます。
    肉体的虐待や性的虐待があればもちろん心の傷を受けますが、そうではなく、一見「正しく立派に見える」育て方であっても、心の傷は形成されます。

    出典:安冨 歩『あなたが生きづらいのは「自己嫌悪」のせいである。』

    安冨教授によれば、カギを握るのは「感情の否定」す。
     
    感情を否定される経験を通じて「本当の気持ちを表現してはいけない」と学んだ子どもは、「自分の感情を表現してはいけない」という世界観から「自分の感情は悪である」という感覚を持ちます。
     
    この「自分の感情は悪である」という感覚が、自己嫌悪の芽となっていくというのです。
     
    幼少期に、子どもらしくありのままの感情を表現することが難しかった場合、それが大人になってから自己嫌悪の原因となっている可能性があります。

    3-2. 自分への高すぎる期待・完璧主義

    2つめの原因は「自分への高すぎる期待・完璧主義」です。
     
    明石家さんまさんの名言として、こんな言葉が知られています。

    「俺は、絶対落ち込まないのよ。
    落ち込む人っていうのは、自分のこと過大評価しすぎやねん。
    過大評価しているから、うまくいかなくて落ち込むのよ」

    2022年5月、上島竜兵さんが亡くなったあとのラジオでも、こんなことを述べていました。

    「(自分自身を)過信している人は悩みを持つ。
    できるって思うのに、できないから。
    俺はぶっちゃけた話、できないと思い切って、生きてきているから」

    “生きてるだけで丸もうけ”を座右の銘とする彼の、いま苦しんでいる人への温かなメッセージといえます。
     
    実際、自己嫌悪の強い人は、完璧主義で自分に対して高すぎる目標や理想を掲げていることが多い傾向にあります。
     
    ハードルが高すぎるがゆえにクリアできず、ますます自己嫌悪に陥る——という悪循環です。

    3-3. 自尊感情や自己肯定感の低さ

    3つめの原因は「自尊感情や自己肯定感の低さ」です。
     
    先ほど自己嫌悪の対義語として「自愛」という言葉をご紹介しましたが、自尊感情や自己肯定感がないと自愛の気持ちを持つことができません

    自尊感情とは?

    自己に対して肯定的な評価を抱いている状態、あるいは、自分自身を価値ある存在として捉える感覚を指す、心理学の用語。

    出典:デジタル大辞泉

    自己肯定感とは?

    長所も短所も含めて、ありのままの自分を肯定し受け入れている状態。

    以下は自己肯定感のセルフチェック表です。いくつの項目が当てはまるか、チェックしてみましょう。
     
    ▼ 自己肯定感のセルフチェック

     項目
    1他人の目が気になる
    2ダメ出しに過剰反応する
    3精神的に不安定になりやすい
    4 悪いことが起きると自分のせいだと思う
    5自信のなさをカバーするため頑張り続けている
    6幼少期に自分が十分に大事にされたとは思えない
    7自分のことが好きになれない
    8人から褒められても素直に受け取れない
    9自由に生きている人がうらやましい
    10生きづらさを抱えている

    出典:【セルフチェック付き】自己肯定感とは?高め方から注意点まで解説
     
    5個以上の項目に当てはまる場合、自己肯定感が低い傾向にあります。

    3-4. メンタルヘルス不調

     4つめの原因は「メンタルヘルス不調」です。
     
    自己嫌悪が強いことが原因でメンタルヘルスに不調が起きることもありますが、その逆のパターンもあります。
     
    メンタルヘルスに不調が起き、その症状として自己嫌悪が強くなっている、というケースです。この場合には、自己流ではなく専門的な医療サポートを受ける必要があります。
     
    自己嫌悪が強くなるこころの病気は、種類も症状もさまざまです。一例として以下があります(リンク先は厚生労働省の説明ページです)。

    心当たりがある場合には、まずは心療内科やメンタルヘルスクリニックを受診するようにしましょう。


    4. 苦しい自己嫌悪から抜け出す4つの方法

    ここまで自己嫌悪が止まらない原因を見てきました。原因に気づくだけでも癒しとなり、気持ちがラクになることも珍しくありません。
     
    次なる一歩として、苦しい自己嫌悪の気持ちから抜け出すために、どんな取り組みをすればよいでしょうか。
     
    効果的な4つの方法をご紹介します。

    • セルフコンパッションを実践する
    • 認知のゆがみを直す
    • 自己肯定感を高める
    • ネガティブ思考を変える

    以下で詳しく見ていきましょう。

    4-1. セルフコンパッションを実践する

    1つめの方法は「セルフコンパッションを実践する」です。
     
    セルフコンパッション(self-compassion)とは、直訳すると「自分への思いやり」という意味です。
     
    ハーバード大学やスタンフォード大学などで研究が進められており、“自分を思いやるためのレッスン”として、根の深い自己嫌悪から抜け出すために有効です。
     
    セルフコンパッションは、次の要素から成り立っています。

    • 自分に優しくすること
    • 共通の人間性を認識すること
      (苦しみのせいで孤立していると思わずに、他者との繋がりを大切にすること)
    • マインドフルネスになること
      (苦しみを無視したり、誇張したりせず、自分の体験としてバランスよく自覚しつづけること)

    出典:クリスティン・ネフ『セルフ・コンパッション[新訳版]』

    具体的な実践として、以下の4つのことから始めてみてください。

    • 体に心地よいことをする
      たとえば、体に良いものを食べる、横になって休む、自分の首・足・手などをマッサージする、散歩をするなど、体の調子を整えることは自分を慈しむことにつながります。
    • 自分への手紙を書く
      あなたが苦痛を感じた状況を思い浮かべてください(恋人との別れ、失業、プレゼンの失敗など)。その状況を自分宛の手紙に書いてみましょう。ただし、自分自身を含め、誰も責めないでください。このエクササイズは、自分のありのままの感情を育むために行います。

    • 自分自身を励ます
      困難な状況やストレスの多い状況に親友が直面したら、自分は親友へなんと声をかけるだろうか、と考えてみてください。そして、自分がそのような状況に陥ったとき、親友へするのと同じ思いやりのある対応を、自分自身にしてあげてください。

    • マインドフルネスを実践する
      数分間の瞑想など簡単なエクササイズでも、痛みを抱えている自分自身を大切にし、受け入れてあげるために役立ちます。

    出典:4 ways to boost your self-compassion – Harvard Health

    セルフコンパッションについて、さらに本格的に取り組みたい方は、書籍も参考にしてみてください。


    石上友梨『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方セルフ・コンパッション42のワーク』

    4-2. 認知のゆがみを直す

    2つめの方法は「認知のゆがみを直す」です。
     
    客観的に見ると、
    「そこまで自己嫌悪に陥るのはおかしい」
    という状況であっても自己嫌悪の気持ちが止められないのは、子ども時代の心の傷や過去の体験によって認知がゆがんでいるからです。
     
    認知のゆがみとは、過去の体験から作られた観念(スキーマといいます)が、何かのきっかけがあるたびに繰り返し喚起され、自分では気づかないうちに自動思考となっている状態です。
     
     
    認知のゆがみを治すための方法として「認知行動療法」があります。
     
    認知行動療法は、医療機関などで医師やカウンセラーのもとで行うほか、自分で実践できる書籍も多く出版されています。

     
    『図解 認知のゆがみを直せば心がラクになる』
     
    たとえば上記の書籍では、認知行動療法でよく使われるワークを中心に、以下14のレッスンを自分で実践できるように構成されています。

    思考を変える

    • レッスン1:自分を客観的に捉える
    • レッスン2:気分に直結する自動思考に気づく
    • レッスン3:自動思考のゆがみに気づく
    • レッスン4:ゆがんだ思考を変える「トリプル・カラム」
    • レッスン5:思考を打ち消す逆説的トレーニング
    • レッスン6:イメージを修正するビジュアルワーク

      行動を変える

      • レッスン7:Wanana Doリストを作成する
      • レッスン8:がんばればできそうな行動を決める
      • レッスン9:実行のアイデアを出す「ブレインストーミング」
      • レッスン10:「アクションプラン」を立てる
      • レッスン11:実際に行動した結果を振り返る

        スキーマを変える

        • レッスン12:スキーマを探す「下向き矢印法」
        • レッスン13:スキーマのメリット・デメリットを検証
        • レッスン14:生きやすいスキーマを手に入れる

        なお、5人1組のチームを組んで習慣化を目指すアプリ『みんチャレ』でも、認知行動療法に取り組んでいるチームがあります。ぜひ覗いてみてください。

        参考:井上和臣『認知療法の世界へようこそ』

        4-3. 自己肯定感を高める

        3つめの方法は「自己肯定感を高める」です。
         
        育った環境や過去の経験など、何らかの事情があっていま自己肯定感が低い状況にある人は、
        「自己肯定感は、大人になってから自分で育むことができる」
        と知ってください。
         
        自己肯定感と自己嫌悪は、シーソーのような関係性です。自己肯定感を高めることで、自己嫌悪を少なくできます。


        自己肯定感を高める練習として、以下の5つのステップに取り組んでみましょう。

        • ステップ1:自分で自分に肯定的な言葉がけをする
        • ステップ2:自分に否定的な言葉がけをする人と距離を置く
        • ステップ3:小さな成功体験を積み重ねる
        • ステップ4:自分の本当の気持ちを言葉に出す
        • ステップ5:自分の本当の気持ちにOKを出す

        詳しくは以下の記事にて解説しています。

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        4-4. ネガティブ思考を変える

        4つめの方法は「ネガティブ思考を変える」です。
         
        自己嫌悪とは、一種のネガティブ思考ですから、ネガティブ思考を改善するアプローチが効果的にはたらきます。
         
        ネガティブ思考には「栄養・生活習慣・思考パターン」の3つの問題が隠れていることが多く、これらの問題へ対処すると、スムーズにネガティブ思考から抜け出すことができます。

        • 栄養の問題
          ビタミン・ミネラル類やタンパク質の不足、糖質のとりすぎ
        • 生活習慣の問題
          睡眠や運動の不足
        • 思考パターンの問題
          ネガティブなセルフトーク、反すう思考、自己関連づけ

        詳しくは以下の記事にて解説していますので、参考にしてみてください。

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        5. まとめ

        本記事では「自己嫌悪」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
         
        自己嫌悪とは自分で自分自身が嫌になることで、自己嫌悪の対義語は「自愛」です。強すぎる自己嫌悪は自己破壊衝動へとつながります。そのまま放置しないことが大切です。
         
        自己嫌悪が止まらない原因として、以下が挙げられます。

        • 子ども時代の心の傷
        • 自分への高すぎる期待・完璧主義
        • 自尊感情や自己肯定感の低さ
        • メンタルヘルス不調

        苦しい自己嫌悪から抜け出す方法として、次の4つをご紹介しました。

        • セルフコンパッションを実践する
        • 認知のゆがみを直す
        • 自己肯定感を高める
        • ネガティブ思考を変える

        最初はなかなか難しく感じるかもしれません。ですが、一歩ずつ取り組んでいけば大丈夫です。
         
        今までがんばってきた自分を、少しずつでも大切にしてあげてください。
         

         

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