デジタル・デバイドとは、インターネットやスマホ・パソコンなどを利用できる層と、利用できない層との間に生まれる格差のことです。
入手できる情報の量や質、利用できるサービスに差が生まれ、その差は、教育・健康・貧富の差にまで影響すると考えられます。
マイナンバーカードをはじめ、行政サービスも電子化が進むなかで、政府や自治体の取り組みとして、デジタル・デバイドの理解と対策は、不可欠です。
この記事では、デジタル・デバイドの基礎知識を確認したうえで、具体的な対策ポイントをご紹介します。
目次
- 1 1. デジタル・デバイドとは?基本の知識
- 2 2. デジタル・デバイドが生じる原因
- 3 3. デジタル・デバイドによって起きる問題
- 4 4. デジタル・デバイド解消のための重要な着眼点
- 5 5. 地域社会のデジタル・デバイド対策 参考事例
- 5.1 5-1. アプリを活用して高齢者のデジタルデバイド解消【東京都墨田区】
- 5.2 5-2. 高知県日高村まるごとデジタル化事業【高知県日高村】
- 5.3 5-3. マイナンバー普及率全国1位の加賀市、高齢者のデジタルデバイド解消へ【石川県加賀市】
- 5.4 5-4. スマホ貸出による高齢者デジタルデバイド解消に向けた実証事業【東京都渋谷区】
- 5.5 5-5. アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進【東京都府中市】
- 5.6 5-6. つながり創出による高齢者の健康増進事業~CDC(調布・デジタル・長寿)運動 【東京都調布市】
- 5.7 5-7. 千葉県松戸市×千葉大学:都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」【千葉県松戸市】
- 5.8 5-8. 復興事業のシンボルとしてスマートシティプロジェクトを開始【福島県会津若松市】
- 5.9 5-9. 国内外の企業による地域課題解決のプロジェクト誘致【福井県】
- 5.10 5-10.ふるさと納税も活用して、デジタルフレンドリー推進事業を推進【宮城県都農町】
- 5.11 5-11.LINE株式会社と高齢者等の地域住民向けの教材を共同開発【山口県山口市】
- 5.12 5-12. 村民に身近なあらゆる場所でスマートフォンの相談会を実施【茨城県東海村】
- 5.13 5-13. スマホの使い方を教えることを通じて移住者と地域住民が交流【長崎県五島市】
- 6 6. デジタル・デバイド対策を成功させる3つの重要ポイント
- 7 7.まとめ
1. デジタル・デバイドとは?基本の知識
まずは「デジタル・デバイド」とは何か、基本的な知識から見ていきましょう。
1-1. デジタル利用の有無が生み出す格差のこと
デジタル・デバイドとは、直訳すると「デジタル格差」となります。
IT(情報技術)をはじめとするデジタルを利用できる層と、できない層との間で生じる格差のことを、デジタル・デバイドといいます。
デバイド(divide)は、「分割する」「隔てる」といった意味です。
パソコン、スマホ、インターネット、デジタルテクノロジーを使いこなせる人は、情報の入手量や質、その他の恩恵を、多く受け取ります。
一方で、デジタルを使いこなせない人との間には、格差が生まれます。
それが、教育や就職などのさまざまなチャンス、待遇の差、最終的には貧富の格差にまでつながる、というのがデジタル・デバイドの考え方です。
1-2. 1990年代から現在まで変わらない社会の課題
デジタル・デバイドは、インターネットが本格的に普及し始めた1990年代から現在まで、社会の課題として、存在しています。
たとえば、以下は総務省「平成23年版 情報通信白書」からの引用です。
- 変わらない課題
インターネットが本格的に普及期を迎えた平成10年頃以降、白書では、ICTを取り巻く課題面も取り上げてきた。特に、個人情報保護、違法・有害情報や、不正アクセス、ウィルス、迷惑メール等のネットに潜む課題など、「安心・安全の確保」については、継続的に取り組んでいる内容であり、現在でも重要な課題である。また、情報リテラシー、世代間格差、地域間格差などの「デジタル・ディバイドの解消」についても、インフラ環境の進化等に伴い、内容は変遷しているものの、現在でも変わらない課題として取り上げてきている。
本記事執筆時点の最新である「令和4年版 情報通信白書」でも、デジタル・デバイドが取り上げられています(この後の「2. デジタル・デバイドが生じる原因」にて紹介します)。
1-3. デジタル・デバイドの分類
デジタル・デバイドは、まず大きく以下の2つに分けられます。
- 国際間デバイド:国家同士で生じる格差(例:先進国/発展途上国)
- 国内デバイド:国内で生じる格差
1つめの「国際間デバイド」は、国際社会の共通課題として、認識されています。
参考:先進国と途上国の間での格差
先進国を中心にインターネットの普及が進む中で、先進国と途上国の間でのICT利用環境の格差が世界的な課題として顕在化してきた。これを受け、1998年のITU「世界情報通信サミット」では先進国と途上国の情報の格差の拡大について課題が提起され、さらに、2000年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)では「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」が採択され、「デジタル・ディバイド」の解消が国際社会の共通課題である旨が明記された。
- ビジネス・デバイド:企業規模による格差
- ソシアル・デバイド:経済、地域、人種、教育などによる格差
国内デバイドの具体的な例については、次章で見ていきましょう。
2. デジタル・デバイドが生じる原因
国内でデジタル・デバイドが生じる原因として、代表的なものは以下の3つです。
- 年代
- 経済環境
- 地域
それぞれ解説します。
2-1. 年代
1つめは「年代」です。
「令和4年版 情報通信白書」で指摘されているのが、年齢によるデジタル・デバイドです。
年齢によるデジタルディバイド
総務省が実施する「利用動向調査」によると、個人の年齢階層別にインターネット利用率をみてみると、13歳から59歳までの各階層で9割を超えている一方、60歳以降年齢階層があがるにつれて利用率が低下する傾向にある(図表3-8-1-5)。
高齢者のICT利活用支援は、政府や行政によって多くの取り組みがなされてきました。
MMD研究所より2022年10月に発表された調査によると、は高齢者のスマホ所持率は94%となっており、ほとんどの人がスマホを利用していることがわかります。しかし、スマホを持つ高齢者は確実に増えているが、日常使いするきっかけがないというのが現実です。
内閣府の調査(※)によると、70歳以上の高齢 者がスマホやタブレットを利用しない理由として上げている上位3位は、以下の通りです。
・自分の生活には必要ないと思っている(52.3%)
・どのように使えばよいかわからない(42.4%)
・必要であれば家族に任せればよいと思っている(39.7%)
※内閣府『情報通信機器の利活用に関する世論調査(R2年度)』より
上記から、高齢者がスマホ等を利用しない理由はそのメリットや使い方をまだ知らないからだとわかります。また、同調査にて「どんなことがあればスマホやタブレットの利用につな がると思うか」に対する回答の上位3位は以下の通りです。
・操作や設定が簡単になる(46.4%)
・機器の値段や通信料金が下がる(42.5%)
・利用することで家族や友人とのコミュニケーションを取る機会が増える(38.3%)
以上のことから、高齢者がスマホを利用するには、コミュニケーション用途での活用方法について丁寧に伝えることが重要であり、高齢者はスマホの利便性や操作方法、楽しさを知ることでスマホを積極的に活用にする可能性は十分あるとわかります。
また高齢者にとっては、スマホを活用することは、デジタルデバイドの解消にもつながります。
しかしながら、依然としてデジタル・デバイドの状況が改善しないところに、問題の根の深さがあると考えられます。
ICTを活用したフレイル予防研究会 発行ニュースレター #1(設立・運営 エーテンラボ株式会社)
2-2. 経済環境
2つめは「経済環境」です。
〈インターネット利用格差の比較として、年齢の次に影響を及ぼしているのは、年収である〉
と示唆するデータがあります。
上記は平成23年の調査ですが、令和3年の調査においても、世帯年収とインターネットの利用状況には相関性が見られます。
世帯年収別インターネットの利用状況
令和3年の数値を比較すると、年収1,000万円以上の世帯のインターネット利用状況は〈93.4%〉であるのに対し、200万円未満の世帯は〈55.8%〉と、大きな差が出ています。
2-3. 地域
3つめは「地域」です。
地方では、都市部と比較して、インターネットの普及が後れを取る傾向にあります。
現在では、地方でもインターネット回線の普及率が高くなっていますが、光回線や5Gなどの高速インターネットの普及率で格差が起きています。
たとえば、以下はNTTドコモの5Gサービスエリアの画像です。
5G サービスエリアマップ
出典:NTTドコモ
赤色の部分が、5G普及エリアです。早期に普及するエリアは、都市部に集中していることがわかります。
3. デジタル・デバイドによって起きる問題
続いて、デジタル・デバイドの何が問題なのか、見ていきましょう。
デジタル・デバイドを放置した場合、以下の問題が生じます。
- 必要な情報を入手しにくい
- 必要なサービスを利用できない
- 教育格差が生まれる
- 仕事の機会を損失する
- サイバー犯罪の被害に遭いやすい
- 医療格差が生じる
- 社会参加の機会が損なわれ、孤立・孤独につながる
3-1. 必要な情報を入手しにくい
1つめの問題は「必要な情報を入手しにくい」です。
現代では、情報にアクセスするために、デジタルが重要な役割を担っていることは、いうまでもありません。
デジタル・デバイドは、「情報格差」と言い換えられることもありますが、“得られる情報量と質”に圧倒的な差が出てしまいます。
とくに、近年では、公共性・緊急性の高い情報の多くが、インターネットを活用して発信されています。
公共性・緊急性の高い情報の例
- 新型コロナウイルス感染症のような公衆衛生上の情報
- 地震・津波・その他災害に関する情報
- 防災・防犯に関する地域の情報
もちろん、テレビ・ラジオ・無線といった従来の伝達手段でも、情報発信は行われています。
しかしながら、
「インターネット上では、詳細で豊富な情報が、スピーディに発信されている」
という点で、格差を生み出してしまうのです。
3-2. 必要なサービスを利用できない
2つめの問題は「必要なサービスを利用できない」です。
近年、多くのサービスがデジタルで提供され、デジタル・デバイドが情報格差だけに留まらなくなりました。
たとえば、行政手続きのオンライン窓口である「マイナポータル」や、国税電子申告・納税システム「e-Tax」などが挙げられます。
民間に目を向けると、サービスのデジタル化は、さらに加速しています。
デジタルで提供されているサービスは、利便性が高いうえに、利用者向けの限定特典や値引きがあることも多く、格差が広がりかねない現状です。
3-3. 教育格差が生まれる
3つめの問題は「教育格差が生まれる」です。
コロナ禍を経て、教育の世界のデジタル化も、急速に進みました。
- リモート学習、オンライン授業
- オンラインの学習コース、セミナー
- オンライン講師による指導
- 電子書籍、デジタル教科書、eラーニング教材
こういったオンラインの学習リソースへアクセスしやすい人と、アクセスしにくい人との間では、受けられる教育の内容に、差が出やすくなっています。
3-4. 仕事の機会を損失する
4つめの問題は「仕事の機会を損失する」です。
以前は、求人情報にアクセスしづらいことによる機会損失が指摘されていました。
現在は、それに加えて、「デジタルのスキルや環境がなければ、関われない仕事」が増えている点に、注意が必要です。
コロナ禍におけるリモートワークの拡大により、インターネットとデジタルスキルさえあれば、世界中のどこにいても仕事をできるチャンスが生まれました。
しかし、裏を返すと、
「デジタル・デバイドの格差が、明確に顕在化する」
ことと同義です。
デジタルテクノロジーやインターネットにアクセスできない人は、労働市場における競争上の不利にさらされるリスクが高まっています。
3-5. サイバー犯罪の被害に遭いやすい
5つめの問題は「サイバー犯罪の被害に遭いやすい」です。
デジタルに疎い人は、近代社会のおける犯罪(とくにサイバー犯罪)のターゲットにされやすい傾向があります。
オンライン上での安全確保に必要なリテラシーやスキルを、習得できていないからです。
個人情報の漏えい、金融詐欺、その他、デジタルテクノロジーに関連する犯罪を防ぐための知識が不足しています。
たとえば、詐欺メールに返信して言われるままにお金を振り込んでしまう、安全性の低いネットワークを利用してフィッシング詐欺に遭う、といったリスクが考えられます。
3-6. 医療格差が生じる
6つめの問題は「医療格差が生じる」です。
今後を考えたとき、新たな問題として認識しておきたいのが「医療格差」です。
オンライン上の健康情報へのアクセスが制限される問題のほか、近年、導入が進んでいるオンライン診察や遠隔医療の面で、格差拡大のリスクがあります。
すべての人々が、公平に医療を受けられるようにするために、デジタル・デバイドの解消が求められます。
3-7. 孤立・孤独につながる
コロナ禍では、対面での人との接触が絶たれ、オンラインでのコミュニケーションが増加しました。
特に、高齢者にとっては、介護・フレイル予防の観点からも社会参加は重要な意味を持ちます。しかしデジタルリテラシーの低さゆえに、オンラインを活用した社会参加の機会を損ない、孤立・孤独に繋がってしまう可能性があるのです。
高齢化社会においては、高齢者によるICTの利活用をサポートする施策の実施が喫緊の課題です。高齢者を対象とするデジタル講習会などを増やしたり、高齢者でも使いやすい端末、アプリやSNSの開発を進めたりすることで、年齢による壁を取り払っていくことが、分断を解消する解決策のひとつになります。
東京都墨田区では、この高齢者のICT活用の課題解決のために「みんチャレ」を導入しています。自治体の取り組みについては、「O章」で詳しくご紹介します。
出典: ICTを活用したフレイル予防研究会発行ニュースレター #3(設立・運営 エーテンラボ株式会社)
4. デジタル・デバイド解消のための重要な着眼点
では、どのようにデジタル・デバイドを解消できるでしょうか。
取り組みの際には、重要となる着眼点があります。
4-1. デジタル・デバイド因子を変えるのは難しい
「なぜ、デジタル・デバイドが生じるのか?」
という問いに対する答えは、先にも述べたとおり、以下の原因があります。
- 年代:年齢が高いほど、デジタル利用度が下がる
- 経済環境:世帯年収が低いほど、デジタル利用度が下がる
- 地域:都市部から地方部へ行くほど、デジタル利用度が下がる
これらの因子は、デジタル・デバイドの犠牲になりやすい人を発見するために有益ですが、除去できるタイプのものではありません。
デジタル・デバイドを解消するためには、原因を除去する以外のアプローチを探す必要があります。
4-2. 「動機」に着目する
では、解決の糸口をどこに見つければよいかといえば、「動機」です。
外務省のサイトでは、
〈デジタル・ディバイド発生の主要因は、アクセス(インターネット接続料金、パソコン価格等)と知識(情報リテラシー等)と言われているが、動機も大きな要因であるとの分析もある〉
と指摘されています。
年齢、収入、居住地は変えられなくても、「動機」の部分は、外部からのアプローチで変えられる可能性があります。
4-3. 動機を置き去りにした施策は失敗する
デジタル・デバイドの解消には政府も注力しており、総務省は「デジタル活用支援推進事業」を打ち出しています。
令和3年度 デジタル活用支援推進事業の概要
■ 新型コロナウイルス感染症により、「人と接触を避ける」オンラインでのサービスの利用拡大が求められている。しかし、高齢者はデジタル活用に不安のある方が多く、また、「電子申請ができること自体を知らない」等の理由によりオンラインによる行政手続等の利用が進んでいない。
■ このため、民間企業や地方公共団体などと連携し、高齢者等のデジタル活用に関する不安の解消に向け、全国の携帯ショップ等で、オンラインによる行政手続等のスマートフォンの利用方法に関する「講習会」を実施する。
■ 令和2年度は全国11箇所で実証、令和3年度以降は本格的に事業を展開。
また、内閣官房は、地理的な制約、年齢、性別、障害の有無等にかかわらず、誰もがデジタル化の恩恵を享受することで、豊かさを実感できる「誰一人取り残されない」社会の実現を目指すとして「デジタル田園都市国家構想」を掲げています。
次章では、「デジタル田園都市国家構想」の一環で表彰された自治体の取り組みをご紹介します。
5. 地域社会のデジタル・デバイド対策 参考事例
総務省による「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」には、200の参考事例が掲載されています。
出典:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】
自治体のデジタルデバイド解消のための施策においては、地域だけではなく企業や研究きかんなどが官民一体となって取り組んでいる事例も多くあります。
ここでは自治体のデジタル・デバイド解消のための取り組みを11事例ご紹介します。
5-1. アプリを活用して高齢者のデジタルデバイド解消【東京都墨田区】
墨田区は、iU情報経営イノベーション専門職大学との連携による習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した高齢者デジタルデバイド解消事業を実行しています。
【事業の概要】
○都内最大の組織率(※)を誇る墨田区の老人クラブ向けに、スマホの基本的な操作方法を学べる講座を実施。
○習慣化アプリ「みんチャレ」を使うことで、継続的なスマホ利用を促進。
○墨田区の「墨田区老人クラブでみんチャレ!高齢者のデジタルデバイド対策」が内閣官房「冬のDigi田(デジデン)甲子園(※)」でインターネット投票7位となった。
高齢者がスマホ操作を習得するには、基礎的な講座に加え、「スマホを日常使いする機会」を提供することが必要とわかり、日々の暮らしのなかで使える「みんチャレ」の導入にいたりました。
※墨田区の高齢者(65歳以上)の約20%が老人クラブに加入。(参考)老人クラブ加入率:江東区10%、足立区6%。
墨田区の導入事例について、詳しくは以下をご覧ください。
この墨田区とiU 情報経営イノベーション専門職大学との連携による習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した高齢者デジタルデバイド解消事業の取組は、「冬のDigi田(デジデン)甲子園(※)」のインターネット投票で7位でした。
(※)Digi田(デジデン)甲子園とは:デジタルの力を地域の課題解決や住民の利便性等につなげる「デジタル田園都市国家構想」の一環として、特に優れた取組やアイデアを表彰する内閣官房の取組。
内閣官房HP】冬のDigi田(デジデン)甲子園の結果発表ページ (外部サイト)
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
5-2. 高知県日高村まるごとデジタル化事業【高知県日高村】
高知県日高村では、日本で初めてのスマートフォン普及率100%を目指す取組である「村まるごとデジタル化事業」を実施しています。この事業は、社会のDX化の前提条件として、常時オンライン化を選択できる状態になることが前提条件であると考えて、住民のエンパワメントを目的に実施し、令和3年11月末時点で約76%の普及率を誇るまでになっています。
【事業の概要】
○日本で初めてのスマートフォン普及率100%を目指す取組である「村まるごとデジタル化事業」を実施し、普及率76%まで伸ばしている。
○デジタルインフラを活用した実証事業展開母体「まるごとデジタル」を開設。
○スマートフォン(以下「スマホ」)に関する地域住民の課題調査、解決策の導出を行い、得られた知見を日高村のまちづくりに還元することを目的とした、産官学連携による共同研究を推進している。
高知県日高村では、スマートフォンを活用した情報格差のない安心できるまちづくりを目指して、普及率の向上を目指しています。また、高知県公立大学法人高知県立大学、株式会社KDDI総合研究所と、2021年6月30日に締結した産官学連携による3者共同研究契約に基づき、デジタル化の研究も推進しています。
日高村住民を対象とし、スマホに関する行動変容ステージ、困りごと、自助・共助の状況、医療や健康管理アプリの利用状況、セキュリティに関する意識や行動に関する実態を調査。これらの結果をもとに、スマホ非所持者やスマホの操作が慣れない方が情報弱者とならないような体制づくりや、少子高齢化が進むコミュニティにおいてよりデジタルの力が発揮され有効活用されるような施策やサービスについて、住民参加型のワークショップ開催を通して検討していく予定です。
出典:高知県日高村 高知県日高村まるごとデジタル化事業 > 産官学連携共同研究事業 > 産官学連携による共同研究
5-3. マイナンバー普及率全国1位の加賀市、高齢者のデジタルデバイド解消へ【石川県加賀市】
石川県加賀市では、マイナンバーカードを普及し、行政サービスのデジタル化及びスマートシティ推進の動きを加速させています。マイナンバーカードの普及率は、2021年5月時点で65.1パーセントと全国1位になりました(2022年6月1日時点では74% 全国3位)。
誰一人取り残すことなく高齢者を含む全ての市民がそうした取り組みの恩恵を受けられる基盤を築くため、同市は高齢者を対象としたデジタルデバイド解消施策を積極的に展開しています。
【事業の概要】
○行政サービスの電子化が推進される中で、全市民が便利に使えるように高齢者のデジタルデバイド解消に注力している。
○総務省が公募していた「デジタル活用推進支援員推進事業 地域実証事業」の一環として、「スマホの使い方教室」を開催。
○2021年6月から、高齢者にマイナンバーカード対応スマートフォンの所持を促すための取り組みとして「スマートフォン購入助成制度」を開始。
○2022年3月に、デジタル田園健康特区(仮称)に認定
石川県加賀市のマイナンバーカードの普及率は全国市区中トップクラスとなっており、マイナンバーカードと連携したデジタルIDアプリ「xID」を活用し、161の行政手続きを電子化することにも成功しています。これらの電子行政サービスを市民全員に受けられるようにするためにも、デジタルデバイド解消は重要な課題となっています。
「スマートフォン購入助成制度」や「スマホよろず相談所」など、高齢者のスマホに対するハードルを下げる取り組みを実施しています。
また、先端技術を活用して便利で快適にすごせるまちを目指す「スマートシティ加賀」を進めており、国が進めるスーパーシティ型国家戦略特別区域に提案。この医療・健康分野や交通分野の取り組みが評価され、第53回国家戦略特別区域諮問会議において、「デジタル田園都市国家構想」を先導する国家戦略特区として、スーパーシティと両輪をなす「デジタル田園健康特区(仮称)」(※)に認定されました。
※デジタル田園健康特区(仮称)とは
デジタル技術の活用によって、地域における健康、医療に関する課題の解決に重点的に取り組む複数の自治体をまとめて指定し、地域のデジタル化と規制改革を強力に推進することを目的に創設される国家戦略特区です。
出典:4人に3人が「マイナンバーカード」持っている石川・加賀市 普及のカギを市長に聞く
5-4. スマホ貸出による高齢者デジタルデバイド解消に向けた実証事業【東京都渋谷区】
東京都渋谷区では、スマートフォンを保有していない人に、区がスマートフォンを2年間無料で貸し出し、機器やアプリの活用を支援することで、高齢者の生活の質(QOL)の向上を図ることを目的とする事業(令和3年9月~令和5年8月(2年間)を行っています。
【事業の概要】
○65歳以上の高齢者を対象に、区がスマートフォンを2年間無料貸与。
○スマートフォンの利用ログ(定量データ)や、講習会のアンケート(定性データ)などを収集・分析。
○渋谷区及び本事業の委託事業者であるKDDI株式会社、また、区とS-SAP協定を締結している津田塾大学と連携協力。
東京都渋谷区では、高齢者にスマホを無料貸与し、活用支援を実施してきました。デジタルデバイド解消のため、渋谷区防災アプリや、LINEによるコミュニケーション、社会参加のためのフレイル予防の促進、デジタル地域通貨(ハチペイ)と連携した地域振興など分野横断的な内容で取り組みをしています。渋谷区及び本事業の委託事業者であるKDDI株式会社、また、区とS-SAP協定を締結している津田塾大学と連携協力し、2年の検証期間を実証予定です。中間報告では、参加者の8割以上が、スマートフォンを利用することで生活に良い影響があったと回答しています。
出典:東京都渋谷区 高齢者デジタルデバイド解消に向けた実証事業(スマートフォン貸与)
東京都渋谷区 高齢者デジタルデバイド解消に向けた実証事業(中間レポート)
5-5. アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進【東京都府中市】
府中市は、高齢者のICTの利用、フレイル予防の推進をしています。コロナ禍における介護予防の在り方を検討する中で、経済産業省関東経済産業局が開催した「ガバメントピッチ」を通じて、習慣化アプリ「みんチャレ」の開発・運営を手がけるエーテンラボ株式会社と協働することになりました。
【事業の概要】
○厚生労働省スマート・ライフ・プロジェクト 健康寿命をのばそう!アワード受賞
○高齢者のICT活用・フレイル予防に、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用
○アプリ経由で高齢者の日常データ(歩数、投稿数、継続率)を収取し、分析することで効果が定量的に分かる
○多人数に展開できる
○アプリに不慣れな高齢者の支援のため、「スマホでみんなとフレイル予防講座」を実施
出典:東京都府中市 スマートフォンを活用した高齢者支援事業成功の秘訣
「みんチャレ」は、散歩や体操など健康や生活習慣の改善のために習慣化したいことを、5人1組のチームで励まし合いながら続けるアプリです。アプリを通じて同じ目標を持つ仲間とコミュニケーションをとるため、楽しく健康づくりができるうえに、毎日の生活のなかで「写真を撮る」「メッセージを送る」「テキストで会話をする」等スマホを使う習慣が身につきます。これにより、高齢者のオンライン上での社会参加に加え、デジタルリテラシーの向上にもつながっています。
府中市のみんチャレフレイル予防事業は、令和3年度の実績として開始から1年で参加者数は219名、アプリの60日間継続率は71%、歩数はアプリ利用によりコロナ禍においても1,600歩/日増加しました。どのようにして新規事業を成功させることができたのか、以下のインタビューでご紹介しています。
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
5-6. つながり創出による高齢者の健康増進事業~CDC(調布・デジタル・長寿)運動 【東京都調布市】
東京都調布市では、調布スマートシティ協議会メンバーである、調布市、国立大学法人電気通信大学、アフラック生命保険株式会社による「つながり創出による高齢者の健康増進事業~CDC(調布・デジタル・長寿)運動 」(以下、「CDC運動」)を推進しています。
【事業の概要】
○つながり創出による高齢者の健康増進事業~CDC(調布・デジタル・長寿)運動を推進
○調布市、国立大学法人電気通信大学、アフラック生命保険株式会社で官民一体となり取り組んでいる
○高齢者のデジタルデバイド解消に取り組むとともに、リアルとオンラインを組み合わせた健康増進プログラムを通じて、健康寿命の延伸にもつなげ、主観的幸福度の向上を目指している
CDC運動は、高齢者のデジタルデバイド解消に取り組むとともに、リアルとオンラインを組み合わせた健康増進プログラム(運動、食事、認知に関する健康教室など)を通じて強いつながりを創ることにより、健康寿命の延伸につなげるとともに、主観的幸福度の向上を目指しています。
CDC運動の取り組みは、2022年8月10日に開催された東京都が都内自治体の優れたデジタル活用の取り組みを表彰する「Tokyo区市町村DX賞」表彰式において、「実装部門 市の部」で3位入賞しています。
出典:東京都調布市 CDC運動
5-7. 千葉県松戸市×千葉大学:都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」【千葉県松戸市】
千葉県松戸市では、千葉大学と連携し、都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」を促進しています。このなかで、オンラインでの「通いの場」事業の試行を経て導入し、ICTを活用した健康なまちづくりを進めています。
【事業の概要】
○専門家と連携し、都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」を促進
○高齢者にオンライン「通いの場」を提供している
○高齢者のフレイル予防と、デジタルデバイドの両軸で評価されている
松戸プロジェクトとは、地域活動への参加で健康寿命を延ばす全国に先駆けた科学的研究プロジェクトです。
高齢者のインターネットを利用した社会参加を促すべく、デジタルデバイドオンラインで様々な活動(体操など)やイベント(オンライン旅行など)を無料で体験しながら、タブレットやアプリ(Zoom、Facebook Messengerなど)の使い方を学べるようにしました。オンライン「通いの場」は、松戸市以外の市町村にも規模を拡大し、オンラインによる社会参加がうつ病予防や孤独感の軽減につながるかの効果検証が行われています。
出典:松戸プロジェクト
5-8. 復興事業のシンボルとしてスマートシティプロジェクトを開始【福島県会津若松市】
福島県会津若松市では、2011年より復興事業のシンボルとして、スマートシティプロジェクトを推進しています。10年目の節目を機に、それまでの取り組みをさらに加速するべく、2021年に一般社団法人AiCTコンソーシアムを立ち上げ、官民一体となり地域DXの実現に向けて取り組んでいます。
【事業の概要】
○「ビッグデータ・アナリティクス産業を創出することによる地方創生」を特徴としたスマートシティプロジェクトを推進
○Data For Citizen」というデータ基盤で行政データを管理し、市民への行政サービスにも活用
○市内の携帯ショップをICT総合窓口の役割とし、スマートフォンをスーパーシティのタッチポイントとしている
市役所内の各部・課にICT人材を配置し、庁内の横連携・情報共有を図るための組織づくりをしている会津若松市。市民に対しては、スモールスタートで、とにかく使用・体験してもらうことを重視し、展開してきました。
身近なところでは、携帯ショップをICT総合窓口と位置付け、スマートフォンの活用を支援することで、デジタル・デバイドの解消を試み、スーパーシティのタッチポイントとしています。
会津若松市では、この10年のスマートシティの取り組みを経て、スーパーシティ構想(※)に挑戦しています。
※スーパーシティ構想とは
スーパーシティ構想とは、大胆な規制緩和を行うとともに、複数分野のデータ連携と先端的なサービスの提供により未来の生活を先行して実現する「まるごと未来都市」を目指すものです。
令和3年4月時点で、31の地方公共団体からスーパーシティの提案しており、茨城県つくば市、大阪府大阪市などがスーパーシティ型国家戦略特区に選出されています。
5-9. 国内外の企業による地域課題解決のプロジェクト誘致【福井県】
福井県では、生活、産業、行政の各分野でのDXを推進しています。この一環で、国内外の企業が持つ技術・サービスを用いた実証プロジェクトを誘致する「CO-FUKUI未来技術活用プロジェクト」が実施されています。その一つとして、エーテンラボ(株)と連携し、コロナ禍で高齢者の外出自粛の影響による身体的・心理的フレイルの加速が課題となっていることから、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した親子でのフレイル予防プログラムに関する実証実験も実施しました。
CO-FUKUI 未来技術活用プロジェクト事業 エーテンラボ株式会社 取組概要
【事業の概要】
○ 福井県は、デジタル技術を活用した地域課題 の解決を目指して、国内外の企業等による革新的な技術やサービスの実証プロジェクトを誘致しており、実証に係る経費の一部を支援している。
〇 昨年度は6つのプロジェクトを採択し、いずれも地域課題の解決に向けて一定の成果を出すことができた。中には、関係機関の賛同を得て、実装に結びついたプロジェクトもあった。
〇 今年度も新たなプロジェクトの募集を行うととも に、昨年度採択事業の実装や他地域 への横展開の支援を並行して実施す る。
県内全域を対象としたデジタル地域通貨を発行し、各市町からの給付金やボランティア活動に伴うポイントを受給、県内のサービス加盟店で商品購入に使うことができるようにインフラを整備しています。
これらの利用には、スマートフォンの専用アプリが必要ということもあり、デジタルデバイド解消も課題となっています。
5-10.ふるさと納税も活用して、デジタルフレンドリー推進事業を推進【宮城県都農町】
宮城県都農町は、国の令和4年度第2次補正予算「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)」の「マイナンバーカード横展開事例創出型(通称:TYPE-X)」に応募した事業が採択されました。国から総額2億439万円の支援の受け(補助率10/10)、町民のヘルスケアに活かせる複数のサービスと都農町内で利用できる地域ポイントサービス(いわゆる地域通貨)を令和5年度中に実装します。
【事業の概要】
○ 全国でも稀有なふるさと納税を100%原資とした財団法人「つの未来財団」でデジタルデバイド対策に主眼を置いた「デジタルフレンドリー推進事業」を推進している。
〇 町内全域に光回線通信網敷設(令和2年度中に完了)や、希望する全ての世帯へのタブレット端末無償貸与(配布率73%)などデジタル・デバイド解消のためのインフラ整備をしている。
〇特に、高齢化や過疎を課題とし、デジタルを活用したヘルスケア領域のDXを進めており、「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)」に採択された。
従来よりデジタルデバイド対策に主眼を置いた「デジタルフレンドリー推進事業」を進めており、さらに高齢化や過疎などの課題を受け、デジタルを活用しヘルスケア領域(医療・介護・保険・福祉)を充実させるための取り組みを進めるべくサービスの実装に取り組んでいます。
本事業では、脳の健康アプリ「脳にいいアプリ」(株式会社ベスプラ提供)や医療情報アプリ「ヘルスケアパスポート」(TIS株式会社)を導入しています。
出典:財団法人「つの未来財団」
5-11.LINE株式会社と高齢者等の地域住民向けの教材を共同開発【山口県山口市】
山口県山口市では、LINE株式会社と、デジタルデバイド解消に向けた「地域で考えるスマートフォン・SNS活用講座」を山口市と共同で開発しました。
【事業の概要】
○ 地域住民がスマートフォンやSNSを有効活用できるよう促し、誰一人取り残さない行政DX推進をサポートすることを目的とし、LINE株式会社と共同開発。
○ 住民のデジタルデバイド解消のため、プログラムは無償で提供。
○LINEは「LINEスマートシティ推進パートナープログラム」などを通じて、本講座を他自治体においても展開予定。
地域におけるデジタルデバイド(情報格差)を解消し、広く住民が自治体のSNS等を有効活用できるよう促すことで、自治体の行政DX推進をサポートするため、山口県山口市とLINE株式会社は共同で地域住民向けの講座「地域で考えるスマートフォン・SNS活用講座」を開発し、その教材を無償で公開しています。
出典:デジタルデバイド解消に向けた「地域で考えるスマートフォン・SNS活用講座」を山口市と共同で開発
5-12. 村民に身近なあらゆる場所でスマートフォンの相談会を実施【茨城県東海村】
出典:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】
茨城県東海村では下記のような取り組みをしています。
【事業の概要】
○ 東海村では、デジタルデバイド対策として、ターゲットを性質によって分け、様々な場所で重層的なスマホ講座を実施するとともに、スマホの購入を支援する取組を実施している。
○ スマホを持っていない人に対しては、役場、自治会において「体験会」としてスマホに触れてもらい、ガラケーを利用している人に対しては、購入と講座をセットで支援する。既にスマホを持っている人に対しては、自治会、薬局、公民館においてスマホ講座を開催するとともに、国のデジタル活用支援推進事業(地方連携型)を活用して講座を提供している。
○ 特に、ガラケーからスマホに買い替える人に対しては、購入店舗で6回のスマホ講座を受けると最終的に購入費用の補助申請を住民自らスマホで行うことができる仕組みになっている。
動機に着目してみると、
〈購入店舗で6回のスマホ講座を受けると、最終的に購入費用の補助申請を、住民自らスマホで行うことができる〉
という点が、有効に働いていることがうかがえます。
5-13. スマホの使い方を教えることを通じて移住者と地域住民が交流【長崎県五島市】
出典:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】
長崎県五島市では、デジタルデバイドの解消とリアルのコミュニケーションの融合した取り組みをしています。
【事業の概要】
○ 五島市では、コロナ禍で地域のお祭りなどのイベントが開催できず、移住者が地域住民とふれあうきっかけが失われているという課題があった。
○ そのため、移住支援員を含む20代~40代の移住者が、地域の高齢者にスマホの使い方を教えるスマホサロンを令和3年7月に開催した。
○ 移住者からは、「スマホの使い方を教える中で、地域の人と顔見知りになれた」、「一緒に参加した子どもを地域の人に可愛がってもらえた」という声があり、地域の高齢者からは、「スマホの操作が分からず、誰に聞けばいいか分からなかったが、今後も相談できる人ができた」などの声があった。
五島市では、
〈移住者と地域住民の交流と、デジタル・デバイドの解消を掛け合わせたアイデア〉
が秀逸です。
教える移住者と、教えてもらう地域の高齢者がWin-Winの関係となっており、両者の動機づけがうまくかみ合った結果といえます。
出典:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】
6. デジタル・デバイド対策を成功させる3つの重要ポイント
最後に、デジタル・デバイド対策を成功させるために重要な3つのポイントについて、お伝えします。
- スマホ
- コミュニケーション
- 習慣化
6-1. スマホ
1つめの重要ポイントは「スマホ」です。
数年前であれば「パソコン教室」のアプローチも多く見られました。
しかし、現代ではスマホを使いこなせたほうが、デジタル・デバイドの解消にダイレクトな好影響を期待できます。
防災情報や、地域通貨など、生活の基盤となる行政サービスも電子化が進んでおり、これらを行き渡らせるためには、スマホの活用が欠かせません。
先ほど紹介した自治体の事例の多くも、デジタル・デバイド解消には、スマホの活用が必要不可欠と位置づけ、特に高齢者に対してスマホが活用できる状態にすることを目指しています。
デジタル・デバイド対策の企画を立てる際には、デジタルスキルとして「スマホ」のマスターを第一優先とするとよいでしょう。
6-2. コミュニケーション
2つめの重要ポイントは「コミュニケーション」です。
デジタル・デバイドを解消するうえでは「動機」が重要となるとお伝えしました。
ほかの世代・ほかの地域住民とのコミュニケーションは、それ自体が大きなモチベーションとなります。
職員や企業担当者による講座だけでなく、「地域の人々がスマホの使い方を教え合う」といった施策なら、そこへ参加する動機が生まれやすくなります。
あるいは、スマホ自体を使って、コミュニケーションを生み出すのも、良策です。
たとえば、東京都墨田区のデジタルデバイド解消事業にて活用されている『みんチャレ』があります。
地域の仲間同士5人組のチームに参加し、毎日写真とコメントを投稿して仲間と交流することで、楽しみながら文字入力とカメラ機能が自然と身につき、日常的にスマホを活用することが習慣になります。
詳しくは「習慣化アプリ「みんチャレ」を墨田区の高齢者向けデジタルデバイド解消事業に提供開始」をご覧ください。
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
6-3. 習慣化
3つめの重要ポイントは、「習慣化」です。
デジタル・デバイド対策は、一度きりのアクションで完了する類いのものではありません。継続的なプロセスが不可欠です。
スマホの習得であれば、1回の講座で一定レベルまで到達するのではなく、「毎日、スマホを触り続ける」ことをゴールとして設定しましょう。
前項の「コミュニケーション」とも深く関わることですが、ひとりではなく「仲間」を作ることで、継続しやすくなります。
行政や社会のデジタル化が急速に進み、置いてけぼりになる不安を抱えている人たちへ、デジタル・デバイド対策を通じて、継続的な関わりを提供していきましょう。
7.まとめ
本記事では「デジタル・デバイド」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
- デジタル・デバイドとは、デジタル利用の有無が生み出す格差のこと
- 1990年代から現在まで変わらない社会の課題として存在する
デジタル・デバイドが生じる原因としては、以下が挙げられます。
- 年代
- 経済環境
- 地域
デジタル・デバイドによって起きる問題は、次のとおりです。
- 必要な情報を入手しにくい
- 必要なサービスを利用できない
- 教育格差が生まれる
- 仕事の機会を損失する
- サイバー犯罪の被害に遭いやすい
- 医療格差が生じる
- 孤立・孤独につながる
デジタル・デバイド解消は「動機づけ」に着目したうえで、次の3つがポイントとなります。
- スマホ
- コミュニケーション
- 習慣化
『みんチャレ』を活用した自治体の取り組みにご興味をお持ちの方は、続けて以下のページもご覧ください。
行政DX、行政サービスの電子化が進むなかで、すべての住民が漏れなくサービスを享受できるできる状態になるためには、デジタル・デバイドの解消が欠かせません。特にマイナンバーカードの普及により、医療、介護分野においてスマートフォンアプリの活用が増えています。
高齢者のデジタル・デバイド解消には、スマートフォンを日常的に使えるようなアプリ等を用いた施策が有効です。
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。