「幸せになりたい」
と思っている方へ結論からお伝えすると、幸せになるためにすべきことはシンプルです。
幸せに近づく行動をし、幸せを遠ざける行動をやめればよいだけ。……とはいえ、口で言うのと行動するのは大違いですから、「それができないから困っている!」と感じるかもしれません。
そんな方もどうぞご安心ください。
本記事では「何を・どうやれば、幸せになれるのか」にフォーカスし、誰でも実践できる具体的な行動に落とし込んで解説します。
本記事のポイント
- 幸せになりたい心理から紐解いて解説
- 身につけたい習慣とNG行動が具体的にわかる
- 幸せを習慣化させるためのノウハウをお伝え
「自分が幸せだと思えない」
「幸せになるにはどうすればいいか、教えてほしい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、幸せになるための重要ポイントを把握できます。方法を具体的に解説しますので、実践すれば着々と幸せに近づけるはずです。
「幸せだなぁ」と心から感じられる毎日を送れるようになりましょう。
目次
1. 「幸せになりたい」と言う人の心に隠された3つの心理とは?
最初に「幸せになりたい」と言う人の心に隠された、3つの心理からご紹介します。
幸せになるためのメソッドはこの後でご紹介していきますが、
「そもそも、なぜ幸せになりたいと自分が思うのか?」
と向き合うことも、大切です。
人によっては、心理に気づくだけで幸せへの渇望感が消え、心が穏やかに変化します。自分の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
1-1. 幸福を強く求めすぎている
1つめの心理は「幸福を強く求めすぎている」です。
そもそも人間が、“何の不満もなく完全に幸せだと思える状態である”ことは、期待できません。
幸福学における研究では、“完全に幸せだと思えるほうが、むしろ異常な状態”と考えられています。誰しも多少の不満や心配事を抱えながら生きているのが、通常だからです。
にもかかわらず、「幸せになりたい」と強く求めすぎてしまう心理には「ハッピーコンデリ症」が隠れている可能性があります。
ストックホルム商科大学のミカエル・ダレーン教授は、以下のように述べています。
ハッピーコンデリ症とは、自分は実際よりも幸福でなければならない、または幸福の尺度で一番上にいなければならないと考えるせいで、実際よりも不幸だと思い込む症状だ。(中略)
自分が尺度の一番上にいないことを嘆くよりも、自分がどれほど幸福なのか、自分が幸福の尺度のどこにいるのかを見て、それを味わったほうがいい。そして、もう少し幸福になりたいと思おう。出典:ミカエル・ダレーン『幸福についての小さな書』
対策:10段階の尺度で考える
「幸せになりたい」と思うとき、幸せの尺度を「幸せか、不幸せか」の2択で考えてはいないでしょうか。
そんなときには“完全に幸せなのは異常事態”と思い出し、
「10段階(1〜10)の尺度で表現するなら、私はどの程度、幸せ?」
と自分に問いかけてみましょう。
そして、現状よりも少し上の尺度の幸せを実現することを目標にしてみてください。
例
- 10段階の尺度でいうと、今の幸せ度は「3」。
- まずは「4」の幸せを目指してみよう。
参考:ミカエル・ダレーン『幸福についての小さな書』
1-2. 幸せを感じにくくなっている
2つめは「幸せを感じにくくなっている」です。
まったく同じ事柄を経験していても、幸せを感じやすい人と感じにくい人がいます。
幸せを感じやすい人は、たとえば青い空を見上げただけで幸福感があふれてきたり、人からのちょっとした親切に「私はなんて幸せなんだろう」と感じ入ったりします。
よくいわれることではありますが、
「幸せは身近なところにある」
というのは本当で、身近な幸せを感じやすい人ほど幸せなのです。
漫画家であり詩人でもあるやなせたかし氏は、
「幸福は本当はすぐそばにあって、気づいてくれるのを待っているものなのだ」
という名言を残しています。
以下は引用です。
幸福とは何だろう。幸福の正体はよくわからない。
お腹をすかせて一杯のラーメンがとてもおいしければ、それは本物の幸福だ。十円には十円の幸福があり、一億円には一億円の幸福がある。
インスタントラーメンも、シューマイ弁当も、アンパンも、ときにはパリの高級レストランの食事よりおいしい。
健康でスタスタ歩いているときには気がつかないのに、病気になってみると、当たり前に歩けることが、どんなに幸福だったのかと気づく。
幸福は本当はすぐそばにあって、気づいてくれるのを待っているものなのだ。出典:やなせたかし『明日をひらく言葉』
対策:怒りや悲しみの存在を認める
「幸せはそばにあると、頭ではわかっているけれど……」
そんな方は、普段からさまざまな感情を抑圧していませんか。
とくに多いのが、
「怒りや悲しみ、つらい・淋しいといった感情を、押し殺しているケース」
です。
というのも、私たちの感情には喜怒哀楽があります。喜びや楽しさだけを強く感じたいと願っても、それは心のメカニズムとして難しいのです。
怒りや悲しみを感じないようにすると、連動して、喜びや楽しみも感じにくくなります。
たとえば、幼い頃の家庭環境から常に我慢する癖がついていたり、職場で怒りを感じないよう抑え込んだりしていませんか。
それが、あなたが幸せを感じられない原因かもしれません。
抑圧している感情がないか、本当は怒ったり悲しんだりしたい自分が心の奥に隠れていないか、向き合ってみてください。
自分の感情をありのまま感じることを自分に許可してあげると、徐々に幸せの感じやすさも上がってきます。
1-3. 他人と自分の幸せ度を比較している
3つめは「他人と自分の幸せ度を比較している」です。
幸せは、私たちの心のありようで、いかようにも変わるものです。そもそも、他人と比較できるものではありません。
幸福学の第一人者である慶応大学大学院の前野隆司教授によれば、
「他人と比較できるもの(お金、所有物、地位)から得られる幸せは、長続きしない」
という事実がわかっているといいます。
つまり、他人と自分を比較するのをやめない限り、幸せは長続きしないのです。
参考:前野隆司『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』
対策:他人の情報を遮断する
他人と自分を比較する癖のある人は、
「比較するのをやめよう」
と思うのに比べる気持ちを手放せなくて、苦しんでいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、「他人の情報を遮断すること」です。
情報が入ってこなければ、比較のしようがありません。
SNSは、他人の幸せそうな情報が無尽蔵に流入してくるので、潔く見るのをやめてしまいましょう。
最初は他の人の様子が気になるかもしれません。ですが、1週間、2週間と情報遮断を続けるうちに、気になるどころか、どうでもよくなってくるはずです。
これで自分自身に集中し、本当の幸せを築く土台が整います。
2. 本当に幸せになるための方法はシンプルに2つしかない
ここまで3つの心理についてお話してきました。ここからは「もっと幸せになりたい」という方のための情報をお届けします。
幸せになるための方法の全体像からお話しすると、シンプルに2つしかありません。
幸せな習慣を増やし、不幸せな習慣を減らすことです。
2-1. 幸せな人の習慣をまねする
幸せな人には共通する習慣があることがわかっています。
幸せになりたいなら“悩むより行動”で、同じ習慣を身につけることが早道です。
具体的に身につけたい習慣は、この後「3. 科学的にも根拠のある「幸せになれる習慣」ベスト10」にて紹介していますので、さっそく実践してみてください。
2-2. 不幸せな人の行動をやめる
いくら幸せになる習慣を実践しても、同時に不幸せになる行動を行っていると、幸せになれません。
これはダイエットと同じです。痩せている人の習慣をまねしても、同時並行で夜中にポテチ・カップ麺・チョコレートを爆食していたら、痩せません。
太っている人はかならず「太る行動」しているように、不幸せな人も「不幸せになる行動」をしています。
それらは無意識に行われていることも多いので、意識してやめることが重要です。詳しくは「4. 幸せになりたいならやめるべき行動」にて解説します。
3. 科学的にも根拠のある「幸せになれる習慣」ベスト10
では「幸せになれる習慣」をご紹介していきましょう。
- 笑顔
- 定期的な運動
- 十分な睡眠
- 自然との触れ合い
- 旅行
- 感謝
- 人助け
- 瞑想
- 深い呼吸
- 脳内ホルモンによい食事
それぞれ、科学的にも「幸せな人たちはこれらの習慣がある」と根拠ある10個です。
ひとつずつ見ていきましょう。
3-1. 笑顔
1つめの習慣は「笑顔」です。
といっても、「笑顔は他人に対してのマナー」「人間関係の潤滑油」といったお説教的な話ではありません。
自分の気分をよくして幸せを感じやすくするテクニックとして、「笑顔」が有効です。
2021年に行われた笑顔のストレス反応に及ぼす影響を調べた研究によると、
〈笑顔はエンドルフィンやセロトニンの放出を促す〉
と報告されています。
エンドルフィン、セロトニンは脳内の神経伝達物質で、幸せを感じるために欠かせません。
エンドルフィンは、脳内でモルヒネ受容体と結合して気分の高揚や幸福感が得られるため、「脳内麻薬」とも呼ばれます。
セロトニンは、精神の安定に関与しており、不足するとうつ病になることが知られ、「幸せホルモン」と呼ばれます。
普段から口角をあげて笑顔をつくることを心掛け、休暇の時間の使い方は「笑う」ことをテーマにしてみましょう。
たとえば、お笑いライブに行く・コメディ映画を鑑賞する・おもしろい友だちと過ごす、などです。
「笑顔を作るのが苦手」
「うまく笑えない」
という方は、こんな書籍も参考にしてみてください。「口元の鍛え方」が掲載されています。
春原弥生『口元を鍛えたら話していて“感じのいい人”になれました。』
参考:Smile (or grimace) through the pain? The effects of experimentally manipulated facial expressions on needle-injection responses.
厚生労働省 e-ヘルスネット「エンドルフィン」
『情報・知識 imidas』
3-2. 定期的な運動
2つめの習慣は「定期的な運動」です。
近年、スポーツやエクササイズなど体を動かす運動が、幸せに好影響を与えることを示唆する研究者が増えています。
2009年にドイツで行われた調査では、
〈スポーツに参加している人のほうが、人生の幸福度が高い〉
というデータが出ています。
先ほど笑顔によって脳内麻薬「エンドルフィン」や幸せホルモン「セロトニン」が分泌されることをお伝えしましたが、これらの物質は運動によっても分泌されます。
たとえば以下は厚生労働省のWebサイトからの引用です。
エンドルフィンは、子牛や豚の脳から発見されたもので「体内で分泌されるモルヒネ」を意味しています。モルヒネの数倍の鎮痛効果があり、気分が高揚したり幸福感が得られるという作用があります。
(中略)
マラソンなどで苦しい状態が一定時間以上続くと、脳内でそのストレスを軽減するためにβ-エンドルフィンが分泌され、やがて快感や陶酔感を覚える「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる現象がよく知られています。
「具体的にどの程度の運動を習慣化すればよいのか?」が気になるところかと思います。
ASICSの研究によれば、
〈15分9秒の運動で心を高揚させることができる〉
と報告されています。
「15分以上の運動を毎日(難しければ週に3日以上)」
を目安として習慣化に取り組んでみてください。
同じASICSの研究では「7日間、運動をしないでください」と被験者に告げ、どう精神状態が変化するかも調査されました。
結果、
〈1週間、運動しないでいると、ポジティブな精神状態を維持できない〉
ということもわかっています。
どんなに忙しい時期でも、運動しない期間が1週間以上は続かないようにしましょう。
参考:Sport participation and subjective well-being: instrumental variable results from German survey data
ASICS「MIND RACE 研究結果」
3-3. 十分な睡眠
3つめの習慣は「十分な睡眠」です。
「何日も眠れない日が続いている」というとき、心から幸福感に包まれるという人はいないでしょう。
些細なことにイライラしたり、体調不良でぐったりしたり、意識がもうろうとしたりするはずです。
実際にニュージーランドで行われた睡眠時間と心理的幸福との関係を調べた研究では、
〈7時間未満の短い睡眠時間の人たちは、心理的幸福に対し一貫してマイナスの関係を示した〉
と報告されています。
逆に最適な睡眠時間(7〜9時間)の人たちは、心理的幸福の度合いが高いことがわかりました。
幸せになるためには短時間睡眠をやめ、7〜9時間の睡眠時間をきちんと確保してください。
具体的な対策としては以下があります。
- 光との接し方を変える
起床してすぐ強い光を浴びる/就寝前2時間から光を避ける/就寝中は部屋を完全に暗くする - 睡眠サイクルを守る
毎日同じ時間に起床し、同じ時間に寝る/休日だからと寝坊しない - 食べ物・飲み物の工夫
精製された糖質(白い砂糖、白米、精製小麦など)、寝る前のカフェイン・アルコールを避ける - 睡眠環境を整える
ノイズを抑える/快適な寝具/少し涼しいと感じる程度の室温(20〜23℃)
詳しくは以下の記事ををご覧ください。
参考:Sleep duration and psychological well-being among New Zealanders
3-4. 自然との触れ合い
4つめの習慣は「自然との触れ合い」です。
近年、スクリーンタイムが増えてグリーンタイムが減っています。
スクリーンタイムとはスマートフォンやパソコンなどの画面を見るのに費やしている時間、グリーンタイムとは自然のなかで過ごす時間です。
〈スクリーンタイムが長くなりグリーンタイムが短くなると、メンタルヘルスと幸福度に悪影響を与えるリスクがある〉
という研究結果が報告されていますので、注意が必要です。
自然と触れ合うグリーンタイムの時間を増やしましょう。
山・海といった大自然で過ごすことはもちろん有益ですが、近所の公園を散歩するだけでも、効果は期待できます。
仕事などの事情でスクリーンタイムが長い人ほど、意識してグリーンタイムを確保してください。
「長時間のスクリーンタイムによる悪影響を、グリーンタイムが緩和する」という可能性が示されているためです。
参考:Psychological impacts of “screen time” and “green time” for children and adolescents: A systematic scoping review
3-5. 旅行
5つめの習慣は「旅行」です。
とくに「リトリート」と呼ばれる、日常から離れて心と体を休める癒しの旅は、幸せ度を向上させる効果があります。
1週間のリトリート体験が及ぼす影響を調べた研究では、
〈リトリートは、少なくとも6週間以上維持される心身の健康および幸福度の改善につながる〉
という可能性が示唆されています。
たとえば1シーズンに1回(およそ3ヶ月ごと)に旅行する習慣がある人は、旅行が幸福感の維持に貢献しているとも考えられます。
前述の「自然との触れ合い」と組み合わせて、自然を満喫できる旅行を計画するのも、よい方法です。
参考:Do Wellness Tourists Get Well? An Observational Study of Multiple Dimensions of Health and Well-Being After a Week-Long Retreat
3-6. 感謝
6つめの習慣は「感謝」です。
誰か(あるいは人ではない存在や境遇・環境、信仰でも)に感謝することは、幸せになるための重要なカギといえます。
感謝の気持ちが幸福を及ぼすことを示す研究は多くあります。
2003年に行われた実験では、
〈感謝の気持ちを持つグループは、ほかのグループに比較して、高い幸福度を示した〉
と報告されています。
まずは、毎日寝る前に、今日も無事に一日を過ごせたことに対して感謝することを習慣にしてみましょう。
さらに、家族や職場のメンバー、友人など、お世話になっている人へ「ありがとう」と感謝を伝えると、感謝の気持ちを強めることができます。
感謝の手紙を書くのは、とくに推奨される方法です。
〈『過去に親切にしてもらったが、きちんとお礼を言ったことのない相手に感謝の手紙を書き、届ける』というワークを行った参加者は、1ヶ月間、大きなポジティブな変化が起きた〉
という研究結果があります。
相手の誕生日や父の日・母の日・敬老の日などのきっかけごとに、手紙を書いてみてはいかがでしょうか。
参考:Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life
Positive Psychology Progress: Empirical Validation of Interventions.
3-7. 人助け
7つめの習慣は「人助け」です。
前述の感謝とは逆に、自分が誰かの役に立つこと(感謝される側になること)も、幸せに深く関連しています。
たとえば、ボランティア活動と心理的幸福との関係に関する研究では、
〈ボランティア活動をしている人のほうが幸福のレベルが高く、ボランティアに費やす時間が長いほどその傾向は強くなる〉
と報告されています。
小さなことでもよいので、自分以外の誰かのために行動しましょう。それが、あなた自身の幸せを増やします。
参考:Volunteering and psychological well-being among young-old adults: how much is too much?
3-8. 瞑想
8つめの習慣は「瞑想」です。
瞑想が宗教っぽいと敬遠されたのは過去の話で、現代では世界中のビジネスエリートが瞑想を習慣にしています。
仕事の生産性やパフォーマンスを瞑想が上げてくれるからですが、それだけではなく、幸せにも瞑想が貢献することが研究で示唆されています。
2019年に行われた調査では、
〈1日1回(10〜20分)のマインドフル瞑想が、心理的幸福を上昇させ、仕事のストレスを軽減させる〉
という研究結果が報告されています。
1日1回、10分間の瞑想を習慣にしましょう。
しかし、
「瞑想といわれても、よくわからない」
「やってみたけど、これで合っているの?」
という声もよく聞かれます。
そんな方には、ビル・ゲイツが「マインドフルネスを試してみたい人にはパーフェクトな入門書」と推奨する本をご紹介しましょう。
アンディ・プディコム『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』
上記の書籍画像の帯に「サラタメさんも絶賛!」と書かれていますが、サラタメさんのYouTube動画も以下にリンクしておきます。
参考:Mindfulness on-the-go: Effects of a mindfulness meditation app on work stress and well-being
3-9. 深い呼吸
9つめの習慣は「深い呼吸」です。
深呼吸が心を落ち着かせてくれることは、多くの人が経験則的に知っているかと思います。
深呼吸は、幸せを増やすためにも役立ちますので、意識して呼吸しましょう。
2017年の研究では、
〈深い呼吸を実践したグループは、ネガティブな感情の減少と、幸福度の上昇が見られた〉
と報告されています。
深呼吸として有名なのは「腹式呼吸」です。腹式呼吸がうまくできる方は、腹式呼吸を続けてください。
腹式呼吸のやり方
背筋を伸ばして、鼻からゆっくり息を吸い込みます。このとき、丹田(おへその下)に空気を貯めていくイメージでおなかをふくらませます。
つぎに、口からゆっくり息を吐き出します。お腹をへこましながら、体の中の悪いものをすべて出しきるように、そして、吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐くのがポイントです。
回数は1日5回くらいから始め、慣れたら10~20回が基本ですが、その日の体調に合わせて、無理なく楽しみながらやりましょう。
出典:日本医師会
「腹式呼吸をやったことはあるが、あまり効果を感じない」
という方は、視点を変えて「背中に向かって息を深く吸う」というメソッドを試してみましょう。
私たちは人体図を正面から見慣れていますが、じつは肺は背中のほうまであります。背中まである肺いっぱいに空気を吸い込むイメージで息を吸うと、深く吸いこむことができます。
このような呼吸のメソッドは「ヨガ」に豊富にあります。興味のある方はヨガを学んでみるのもおすすめです。
参考:Psychological effects of deep-breathing: the impact of expectancy-priming
3-10. 脳内ホルモンによい食事
10個めの習慣は「脳内ホルモンによい食事」です。
私たちの脳内には、脳内ホルモン(神経伝達物質)が多数存在しています。
幸福を感じさせるホルモンや、苦痛を感じにくくするホルモンがうまくはたらかなければ、私たちの心は幸せを感じられない、ということです。
「笑顔や運動で脳内麻薬のエンドルフィンや幸せホルモンのセロトニンを増やす」
という方法をお伝えしましたが、脳内ホルモンが分泌されるためには、必要な栄養素を食事からきちんととれていることが前提となります。
とくに重要な栄養素として、以下の5つが挙げられます。
栄養素 | 幸せとの関係性 |
ビタミンB群 | 脳内の神経伝達物質の合成にかかわる |
鉄 | 脳内の神経伝達物質の合成にかかわる 脳や全身に酸素を運搬する |
亜鉛 | 意欲にかかわるホルモン(テストステロン)の合成にかかわる |
ビタミンC | ストレスへ対応するために必要となる |
タンパク質 | 脳の神経伝達物質の主原料となる 臓器・筋肉・骨など体を構成する |
詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
4. 幸せになりたいならやめるべき行動
次に、幸せな習慣をつくっても打ち消してしまうNG行動を見ていきましょう。
- 食べすぎる
- 他人へ期待する
- SNSに依存する
4-1. 食べすぎる
1つめの行動は「食べすぎる」です。
何事もやりすぎはよくありませんが、とくに食事には注意してください。なぜなら、私たちの毎日の生活から欠かせないため、毎日かならず繰り返される行動だからです。
毎日繰り返される行動をセルフコントロールできないことからくる、自己嫌悪などのネガティブな気持ちの蓄積は、けして軽視できません。
体重が増えて自分の理想とは異なる容姿になる、生活習慣病などで健康を損ねる、といったデメリットも幸せの邪魔をします。
セルフコントロールが上手にできない人は、以下の記事も参考にしてみてください。
4-2. 他人へ期待する
2つめの行動は「他人へ期待する」です。
自分の幸せは、自分の自己責任でつくると決めてください。他人への期待は捨て去りましょう。
少し冷たいように感じるかもしれませんが、幸福度の強い人は他人への期待がありません。もっといえば、信用しすぎることもありません。
美輪明宏さんの名言をご紹介しましょう。
「信用したり期待したりしなければ裏切られることもないのです。
それを頭に入れておくと、意外と対人関係が楽になります」出典:美輪明宏『ああ正負の法則』
あっさりと割り切れば腹も立ちませんし、裏切られたと悲しむこともありません。自分にとってよくないことがあっても冷静に対処して、離れるだけです。
4-3. SNSに依存する
3つめの行動は「SNSに依存する」です。
「1-3. 他人と自分の幸せ度を比較している」の項目でも触れたのですが、大切なことなのでここでもお伝えさせてください。
〈SNSは、メンタルヘルスに影響を与える可能性がある〉
と研究で示唆されています。
影響の内容は研究によって結果がまちまちで、「孤独感が減る」といった報告もあれば、うつ病や不安障害などにネガティブな影響がある、という研究者もいます。
重要なのは、SNSは使い方次第では幸せに対して有害となる可能性があると知り、節度ある利用をすることです。
具体的には、依存的な使い方は避けましょう。
依存傾向をチェックするうえでは、以下の「ネット依存チェック項目」が役立ちます。8項目のうち、5項目以上該当すると、依存傾向です。
▼ ネット依存チェック項目
項目 | |
1 | ネットを利用していない時も、ネットのことを考えている |
2 | より多くの時間、ネットをしないと満足できない |
3 | ネットの利用時間をコントロールしようとしても、うまくいかない |
4 | ネット利用を控えようとすると、落ち着かなくなっ たり、いらいらしたりする |
5 | もともと予定していたよりも長時間ネットを利用し てしまう |
6 | ネットのせいで、家族・友人との関係が損なわれたり、仕事や勉強などがおろそかになりそうになっている |
7 | ネットを利用している時間や熱中している度合いに ついて、家族や友人に嘘をついたことがある |
8 | 現実から逃避したり、落ち込んだ気分を盛り上げたりするためにネットを利用している |
出典:ネット依存の現状と課題―SNS 依存を中心として
5項目以上に該当した方は、まずは自分が依存傾向にあると自覚し、SNSの利用時間を減らすことからチャレンジしてみましょう。
参考:Social Networking Sites, Depression, and Anxiety: A Systematic Review
5. 幸せになりたいあなたに伝えたいメッセージ
最後に、幸せになりたいあなたへのメッセージをお伝えします。
5-1. 幸せを習慣にしよう
ここまでお読みいただいた方ならおわかりのとおり、「幸せ」とは環境や所有物から得られるものでは有りません。
自分で、幸せな習慣から創り上げるものです。
つまり、誰でも幸せになれます。幸せな習慣は、誰にでもできることばかりです。
よい行動の習慣化を5人1組のチームで目指すアプリ『みんチャレ』にも、幸せを目指すチームが多くあります。
詳しくは、以下のリンクからご確認ください。
5-2. いろいろ試すこと自体が幸せに影響を与える
本記事では、たくさんの行動や習慣をご提案しました。
上から順に、すべて試してみてください。なぜなら、
〈活動の多様性が、より高い心理的幸福をつくる〉
という研究データがあるからです。
“うまくいくか、いかないか”は関係ありません。
「幸せになりたい」という思いをきっかけとして、いろいろ試すその行動が、もう幸せへ歩く道となります。
さっそくあなたも、歩き出しましょう。
参考:Activity Diversity and Its Associations With Psychological Well-Being Across Adulthood
6. まとめ
本記事では「幸せになりたい」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
「幸せになりたい」と言う人の心に隠された3つの心理と対策は、以下のとおりです。
- 幸福を強く求めすぎている
対策:10段階の尺度で考える - 幸せを感じにくくなっている
対策:怒りや悲しみの存在を認める - 他人と自分の幸せ度を比較している
対策:他人の情報を遮断する
科学的にも根拠のある「幸せになれる習慣」ベスト10として、以下をご紹介しました。
- 笑顔
- 定期的な運動
- 十分な睡眠
- 自然との触れ合い
- 旅行
- 感謝
- 人助け
- 瞑想
- 深い呼吸
- 脳内ホルモンによい食事
幸せになりたいならやめるべき行動はこちらです。
- 食べすぎる
- 他人へ期待する
- SNSに依存する
ここまでお読みいただき、読む前に比べると、すでに幸せ度が増しているのではないでしょうか。
本文中でも述べたとおり、いきなり100%の幸福を得るのは非現実的ですが、少しずつ少しずつ、幸せの階段を大切にのぼっていきましょう。