フレイルとは、「健康」と「要介護」の間の状態のことで、加齢に伴い心身が虚弱になり、健康障害を起こすリスクが高くなってしまう状態のことです。
フレイルが進行すると介護が必要な状態になるため、高齢者自身のQOL(生活の質)が下がるだけでなく、社会にかかる負担も大きくなってしまいます。
2020年代には、団塊世代が後期高齢者となり、地方財政における医療・介護費用は増大します。健康寿命を伸ばすのに欠かせない介護予防・フレイル予防を強化することはすべての自治体にとっても喫緊の課題なのです。
しかし、フレイル予防を効果的に進めるためには、高齢者自身の行動を変容させる必要があるため、単純な情報提供や一方的なセミナー開催では思うような成果はあらわれないでしょう。
対面形式のセミナーやイベントは、企画・集客を含め運営側の作業負担がある上に、その後の変化や習慣化を追えない、人数の制限やデータ化等の困難さが伴います。
さらに、コロナ禍ではリアルでのイベントが開催できず、高齢者のフレイル悪化の状態が報告されました。このような背景から、ICTを活用したフレイル予防の推進の動きも加速しています。
そこでこの記事では、「フレイル予防を推進したい」と考えている方に向けて、フレイル予防の具体例や、以下の内容を解説していきます。
この記事でわかること
- フレイル予防の進め方
- 「フレイル予防の3つの柱」別 有効な施策
- フレイル予防の成功事例
- ICTを活用したフレイル予防
- フレイル予防を自治体が推進する際の注意点
- フレイル予防の習慣化に役立つアプリ
最後までお読みいただくと、フレイル予防の進め方ややるべきことが具体的にわかり、効果的な施策が推進できるようになるでしょう。
目次
- 1 1. フレイル予防とは
- 2 2. 「フレイル予防の3つの柱」別 有効な施策
- 3 3. ICTを活用したフレイル予防は、喫緊の課題
- 4 4. フレイル予防の導入事例10
- 4.1 4-1. 千葉県松戸市:都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」
- 4.2 4-2. 東京都西東京市:全国に広がる「フレイルチェック」を普及
- 4.3 4-3. 東京都府中市:アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進
- 4.4 4-4. 東京都八王子市:介護予防ポイント制度「てくポ」を導入
- 4.5 4-5. 大阪府堺市:介護予防「あ・し・た」プロジェクト
- 4.6 4-6. 愛知県豊田市:介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」
- 4.7 4-7. 兵庫県淡路市 :⾼齢者スマホ普及率4割でもできる オンラインフレイル予防
- 4.8 4-8. 秋田県南外村:食事と運動に関する複合的なプログラムの定期的な提供
- 4.9 4-9. 千葉県柏市:「柏スタディ」に代表される独自のデータベースの活用
- 4.10 4-10. 東京都墨田区:対象者のレベルに応じた柔軟な継続支援
- 5 5. フレイル予防を推進する際の3つの注意点
- 6 6. フレイル予防の習慣化に役立つアプリ3選
- 7 7. まとめ
1. フレイル予防とは
フレイル予防を推進するためには、まずは「フレイル予防とは何なのか」について正しく理解しておく必要があります。
理解が曖昧なままでは、途中で目的を見失ってしまったり、どのような対策を講じるべきなのかわからなくなったりしてしまうからです。
そこでこの章では、フレイル予防について改めて理解を深めるために、以下の3点について解説します。
- フレイル予防の目的
- フレイル予防のための3つのポイント
- フレイルの種類別対策
詳しくは以下の通りです。
1-1. フレイル予防の目的
フレイル予防には、以下の2つの目的があります。
フレイル予防 2つの目的
- フレイルになるのを予防すること
- フレイルの悪化を予防すること
フレイルとは、「健康」と「要介護」の間の状態のこと。
そのため、「①健康な人がフレイルになること」と「②既にフレイルの人の状態が悪化して要介護に進むこと」の2つを防ぐ必要があります。
フレイルには「可逆性」という特性があり、 予防に取り組むことでその進行が緩やかになるだけでなく、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。
このように「フレイルによって必要な介護の量が増えるのを予防し、高齢者の健康寿命を伸ばすこと」が、フレイル予防の目的です。
また個々人の課題というだけでなく、我が国が直面する高齢化社会において、コロナ禍をきっかけとして高齢者のフレイル対策、とりわけ非接触型などICTの必要性が高まり、フレイル予防の導入方法についても、オンライン・オフラインのハイブリッド型などさまざまな事業が推進されています。
1-2. フレイル予防は費用対効果が高い
フレイル予防は、個人の健康長寿を目指すだけでなく、社会全体で見ると介護や医療の費用においても費用対効果が高いのが特徴です。
介護が必要になった主な原因のうち、フレイル に関連する「認知症」「フレイル」「骨折・転倒」が占める割合は男性で33%、女性で50%です (*2)。
経済産業省資料(*3)より、フレイル・認知症の予防を行った場合に将来の2034年の医療費は320億円削減、介護費は3.2兆円削減できると試算されています(表1)。生活習慣病予防の費用対効果と比較しても、フレイル・認知症予防の費用対効果が大きいことがわかります。
表1. 予防を行った場合の2034年の60歳以上の医療費・介護費の影響
試算結果 | |
フレイル・認知症 (一次予防) | 320億円↓ (医療費) +3.2兆円↓(介護費) |
生活習慣病 (一次予防) | 130億円↓ (医療費) |
生活習慣病 (二次・三次予防) | 620億円↓ (医療費) |
がん(一次予防) | 360億円↑ (医療費) |
*2: 厚生労働省 「平成28年国民生活基礎調査」
*3: 経済産業省「予防投資の効果について」(平成30年4月11日
なかでも、ICTを活用したフレイル予防は、コロナ禍のような社会情勢や熱中症等の環境要因等に左右されず、対象人数を制限することなく安価に支援できる手段として有効です。
出典: ICTを活用したフレイル予防研究会 発行ニュースレター #1(設立・運営 エーテンラボ株式会社)
1-3. フレイル予防の3つのポイント
フレイル予防をスムーズに進めるためには、以下のようなポイントを意識しておく必要があるでしょう。
フレイル予防を進める際に
意識したい3つのポイント
- POINT 1:フレイルの未然防止
健康な高齢者を対象に、フレイルに陥らないよう働きかけをする
- POINT 2:フレイルの早期発見と対策
フレイルになってしまった高齢者を早期発見し、迅速に悪化予防の働きかけをする
- POINT 3:フレイルの改善
要介護状態になる前に、状態の改善を目指す
対象者の状態によって、必要な予防策は異なります。
そのため、上記のように「①未然防止②早期発見と対策③状態の改善」の3つのポイントに応じて、支援内容を考えなければなりません。
それぞれの段階で必要な支援内容の例は以下の通りです。
必要な支援内容の例
- POINT 1:フレイルの未然防止
活動量の維持、栄養バランスの良い食事、体重減少の防止
- POINT 2:フレイルの早期発見と対策
活動量の減少の防止、食事量の減少の防止、咀嚼回数減少の防止、社会参加の促進
- POINT 3:フレイルの改善
リハビリ運動の推進、こまめな口腔ケア、栄養不足の防止
このように、3つの段階に応じた支援の仕組みを構築することができれば、フレイルの状態が悪化して要介護になってしまう高齢者を、自然と減らすことができるようになります。
1-4. フレイルの種類別対策
効果的なフレイル予防を実践するためには、フレイルの種類に応じた対策を講じることが重要です。
フレイルには、以下のように3つの種類があります。
フレイルの種類
- 身体的フレイル
- 精神・心理的フレイル
- 社会的フレイル
まず「身体的フレイル」とは、筋肉量(筋力)が低下して衰えてしまう「サルコペニア」や、運動器機能が低下する「ロコモティブシンドローム」などが代表的な状態です。
年齢を重ねていくと、筋力は自然と衰えていきます。
そのため、適切な栄養摂取と運動によって、筋肉量や身体機能の低下を食い止めていく必要があります。
2つ目の「精神・心理的フレイル」とは、うつ状態や意欲の低下、軽度の認知症になることなどを指します。
特に高齢期には、定年退職や大切な人との死別など、強いストレスを受ける機会があります。
そんなときに必要なのは、共感・理解してくれる人との交流です。
自治体や町内会、地域のグループなど、様々なコミュニティに参加できる環境を提供することが重要となるでしょう。
最後の「社会的フレイル」とは、外出頻度の低下、独居などにより社会から孤立したり、経済的困窮したりしてしまう状態のことを指します。
先ほどお伝えしたように高齢期には定年やパートナーとの死別などにより、社会とのつながりが希薄になってしまうことがあります。
そのため、この状態になるのを防ぐためには、積極的に就労やボランティアなどに取り組める機会を提供し、孤独・孤立状態に陥るリスクを減らしていくことが大切です。
2. 「フレイル予防の3つの柱」別 有効な施策
フレイル予防の概要についてはご理解いただけたと思いますので、次は「実際にどのような施策を行うべきなのか」について解説していきます。
フレイル予防のためには、以下の3つの柱が大切だと提唱されています。
フレイル予防の3つの柱とは
- 栄養(食・口腔機能)
- 運動
- 社会参加
この3つの要素は、どれか一つでも欠けるとフレイルのリスクが高まります。それぞれが互いに影響し合っているため、全てについてきちんと対策をすることが重要です。
そこで、この章ではフレイル予防の3つの柱である「栄養(食・口腔機能)・運動・社会参加」の基本的な項目に分けて、実践すべき施策を解説していきます。
2-1. 栄養(食・口腔機能)
フレイル予防のためにまず重要になるのが、筋力や体力の低下を防ぐために、食事からしっかりと栄養を摂ることです。
そこで最初に取り組むべきことは、高齢者が持っている「食事や栄養に対する意識」の更新です。
というのは、中年期には生活習慣病対策として「肥満」に注意しようといわれてきたため、高齢期になってもその意識を持ったままになってしまうことがあるからです。
そうすると、食欲が落ちたり体重が減ったりしても「ダイエットになるからいいや」と軽く考え、気づかぬ間に栄養状態が悪くなり、フレイルの状態に陥ってしまいます。
実際に以下のグラフを見ていただくと、65歳以上の人のうち、男性で12%以上、女性では20%以上の人が低栄養傾向にあるということがお分かりいただけると思います。
そのため、まずは以下のように意識改革に役立つ施策をとり入れると良いでしょう。
食事や栄養に対する意識を
変えるための方法の例
- 高齢期にはメタボ対策よりもフレイル対策が重要であることを伝えるセミナーの開催
- 高齢期に必要な栄養をクイズ形式で学べるリーフレットの配布
例えば兵庫県では「シニアはメタボよりフレイル対策」をキャッチコピーとした以下のようなポスターや冊子、動画など作成して意識改革に取り組んでいます。
出典:兵庫県/シニアはメタボよりフレイル対策
このような施策で意識を更新できた人に向けてさらに実施したいのは、バランスの良い食生活を送るために役立つ支援です。
例えば、若い時はバランスよく食事を摂っていた人でも、加齢や独居に伴い料理をするのがおっくうになり、手軽に食べられる菓子パンばかりを食べるような生活になってしまうと、必要な栄養が不足してしまいます。
そこで、以下のような施策で栄養状態の悪化が進行してしまうのを防止しましょう。
バランスの良い食生活を
送るための支援の例
- フード模型や写真を用いてバランスの良い食事を説明する会の実施
- たんぱく質不足のリスクと、たんぱく質の摂り方がわかるポスターの掲示
- 手軽に栄養バランスを整えられるレシピの配布
- 自分の栄養摂取状態について栄養士へ相談できる場の提供
- 配食サービス業者と連携して、自宅や地域の通いの場などへバランスの良い食事を届けてもらえる環境を提供
実際に長野県の栄養士会では、地域のスーパーや温泉施設などで「まちかど栄養相談室」を実施し、地域住民の方が栄養バランスの整え方を気軽に学べる場を設けています。
出典:長野県栄養士会 佐久支部 まちかど栄養相談室
ただし、食事面だけではなく「口腔機能の衰えを防止すること」も非常に重要です。
年をとると「噛む・飲み込む・話す」といった口の機能が低下します。
実際に国民健康・栄養調査からも、以下のグラフのように、高齢になるほど保有している歯の数が減り、咀嚼機能も右肩下がりになることがわかっています。
それによって食べるのが面倒になったり、必要な食材を飲み込めなくなったりすると、栄養不足に陥るリスクが高くなります。これをオーラルフレイルといいます。
そこで、以下のような施策でオーラルフレイルについても対策を講じる必要があります。
オーラルフレイル予防
のための方法の例
- 自分の口腔機能の状態を客観的に知ることができる「セルフチェックリスト」の配布
- オーラルフレイル検査を体験できるイベントの開催
- 医師や歯科衛生士に相談できる食事会の実施
オーラルフレイルのセルフチェック表とは、以下のようなものです。
出典:公益社団法人日本歯科医師会リーフレット「オーラルフレイル」
上記のように、簡単な質問に回答して計算をするだけで、高齢者自身が「オーラルフレイルの危険性が高いかどうか」を把握することができます。
またセルフチェックだけでは、気づきを与えることができても、行動変容までは結びつきにくいため、実際に医師や歯科衛生士と会話できる場を設けることも大切です。
例えば香川県まんのう町の琴南地区では、高齢者と一緒に行うコミュニティーセンターでの食事会の際に、歯科医師や歯科衛生士も同席することで、口腔内のケアの重要性を自然と伝えるという取り組みを実施しています。
出典:NHK 口のフレイルを防いで健康長寿に!地域ぐるみの取り組みと口腔トレーニング
また、大阪府ではイベントの中でオーラルフレイルの検査を体験できるコーナーを設けたり、歯周病検診の受診勧奨と併せてオーラルケアに関する情報提供を行ったりしています。
出典:大阪府「2022福島区健康展」
このように「口腔機能の低下を防ぐことから、実際に栄養不足を防止するまで」が、3つの柱のうちの1つ目となります。
2-2. 運動
3つの柱のうちの2つ目は、「運動」です。
高齢になると以下のグラフのように、それまでよりも平均歩数が1日当たり2,000歩も減少してしまいます。
このように運動不足でいると筋力の低下を招いてしまいます。将来的に要介護の状態にならないためにも、適度な運動による筋力、体力の維持が大切です。
しかし、筋力はある日突然ガクンと落ちるのではなく、毎日徐々に落ちていくため自分自身では気が付きにくいという側面もあります。
そのため、まずは高齢者自身が自分の筋力や筋肉が減っていることに気づきを得られるような支援をしましょう。
具体的には以下のような方法があります。
自分の筋力低下について気づきを得てもらうための支援の例
- 筋肉量のセルフチェック「指輪っかテスト」のやり方を案内するリーフレットの配布
- 自身の筋力低下を客観的に知るための「握力測定イベント」の実施
- 地域のセンターへ筋肉量を測定できる体組成計を設置
指輪っかテストとは、以下のように自分の指でふくらはぎの筋肉量を確認できるもので、特別な設備がなくても実践できるため取り入れやすい方法です。
出典:東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島研究室「フレイルを知ろう」
また、大手薬局チェーンの「日本調剤」では、握力測定とフレイル予防のアドバイスを行う「フレイルチェックイベント」を実施し、筋力の低下に気づくことができる場を提供しています。
出典:日本調剤 運動習慣を見直してフレイルを予防!フレイルチェックイベントin佐古薬局
このような方法で運動の必要性を認識してもらうことができたら、次は実際にどのような運動をすればいいのか伝えたり、体を動かせる場を設けたりするという具体的な支援に進みます。
例えば以下のような施策が有効です。
フレイル予防のための運動支援方法の例
- 地域のセンターにおける運動プログラムの提供
- オンラインで参加できる体操教室の開催
- 自主グループが活動できる施設の提供
特に近年は、感染症の拡大を防ぐために外出を控える人も増えたため、オンラインで参加できるプログラムの提供も求められるようになっています。
実際に東京都羽村市では、年間を通して定期的にオンラインによるフレイル予防教室を開催し、外出しなくてもフレイル予防の体操を行える場を提供しています。
出典:羽村市 フレイル予防・オンライン体操教室
このように、高齢者が運動できる場を整えることでフレイル予防を進めていきましょう。
2-3. 社会参加
3つ目の柱は「社会参加」です。
趣味の集いや就労、ボランティア活動などの社会参加の機会が減ると、フレイルのリスクは上昇します。
実際に以下のように、社会参加していない人は、している人に比べて14.5%もフレイルの割合が高くなっているという調査結果もあります。
出典:神戸市 コロナ禍で外出機会が減った影響に関するアンケート調査結果
JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)が10年間追跡した研究によると、人との交流が月1回未満では、1.3倍早期死亡に至りやすいという結果もあります。
このような結果になるのはなぜかというと、社会とのつながりを持つことには、以下のようなメリットがあるからだと考えられます。
社会参加がフレイル予防
につながる理由
- フレイル予防に役立つ情報を得られる
- 一緒に運動を頑張ろうと励ましてもらえる
- 他者とのつながりを通して刺激を受けられる
- 気持ちのハリを持つことができる
そのため、以下のように高齢者が社会参加できるように支援をすることが有効です。
フレイル予防のための
社会参加支援方法の例
- 高齢者向け就労支援イベントの開催
- ボランティア体験講座の実施
- 参加できるボランティア団体や自主グループに関する情報提供
- シニア向けスマホ講座などのイベント企画
- シニアサロン向け若者訪問イベントの企画
例えば千葉県ジョブサポートセンターでは、就労を望む高齢者のために「個別相談会」や「企業見学会」、「シニアのためのキャリアデザインセミナー」など、手厚いサポートを行っています。
出典:千葉県ジョブサポートセンター シニア向けイベント・セミナー
また東京都葛飾区では、リーフレットに地区ごとの活動団体を掲載して配布し、高齢者が自分の参加しやすい団体を手軽に見つけられるようにしています。
出典:葛飾区 地域を楽しむ!葛飾区シニア活動マップを配布しています
さらに、効果的にフレイル予防を進めるためには、高齢者同士のつながりを促すだけでなく、若い世代との交流も大切です。
自分と異なる背景を持つ人との付き合いが多いほど、抑うつになりにくく、認知機能低下が起こりにくいという研究結果もあるためです。
そのため、シニアサロンを学生や子供が訪問するイベントなどを企画するのも良いでしょう。
例として、島根県の浜田市では、子育て世代の親子サークルと、高齢者サークルが共同で楽しめるイベントを支援し、幅広い世代の住民が交流を持てるようにしています。
その結果、「地域のつながりが強まった」「子供を介して関わる大人が交流の楽しさを実感し、次回への参加意欲が向上した」などの成果が得られたそうです。
出典:島根県浜田市 世代を超えて!わいわい交流教室
このように、高齢者の社会参加を支援することは、体と心が健康な状態を作ることができるため、フレイル予防に役立つのです。
3. ICTを活用したフレイル予防は、喫緊の課題
これまで多くの自治体では、フレイル予防の3つの柱「運動」や「社会参加」を対面式のセミナーやイベントを通じて実施してきました。
しかし、昨今のコロナ禍では高齢者のフレイル対策は待ったなしの喫緊の課題となりました。増加する高齢者への対応や、ウィズコロナ時代に直接接触をできる限り回避する必要性があるとして、介護・フレイル予防事業においても、オンラインやアプリの利用などICT活用を導入する自治体が増加しています。
3-1. ICTを活用したフレイル予防が必要な背景
非接触型の社会参加を促すという点に加え、データに基づいた介護予防事業の効果検証を行いフレイル予防を効果的に実施する手段として、ICTを活用することは不可欠です。
厚生労働省資料「介護予防マニュアル第4版」においても、認知機能低下予防対策として「主体的で継続的な行動変容を促すための方法の一つとして、ICTを活用する」と記載されています。
しかし、フレイル予防へのICT活用はコロナ禍を背景として昨年から開始されて間もない取り組みであり、地方自治体や各団体が介護・フレイル予防事業でICTを効果的に活用するには、好事例や実施のポイントに関する情報が不足しており、ノウハウ蓄積が課題となっています。
この課題を打破するために、今全国の自治体でフレイル予防へのICT活用に関してどのようなことが行われているのか、本記事でもお伝えしていきます。
出典: ICTを活用したフレイル予防研究会 発行ニュースレター #1(設立・運営 エーテンラボ株式会社)
3-2. フレイル予防にICTを活用する3つの理由
フレイル予防を拡大したいと考えている場合、ICTを活用することで効率的に促進することができます。
以下に3つの理由をご紹介します。
“フレイル予防にICTを活用する3つの理由”
・安価に大人数を対象とできる
高齢者人口が増加する中、行政職員や専門職は人手不足であり、従来の労働集約型の 介護予防事業では全住民に支援を届けるには限界があります。加えてコロナ禍でさらに 介護予防事業の参加人数に制限がかかっています。ICTを活用することで、コロナ禍でも 対象人数を制限することなく安価に支援を行うことができます。
・日常的に介入ができ、高齢者の主体的な健康行動の継続を促進できる
厚生労働省「介護予防マニュアル」には、「運動プログラムの効果をあげるためには可能な限り毎日自宅でも運動を実施することが望ましい」と記載されています。スマートフォンアプリ等を使った自己管理下での活動促進を、運動プログラムと併用、もしくはプログラム終了時に活用することで日常的に介入でき、高齢者の活動性を維持・向上することができます。
・ 日常データから介護予防事業の評価ができる
ICTを活用することで歩数などの高齢者の日常データが得られると、介護予防事業を 行ったあとに高齢者の身体活動量がどのように変わったかを把握することができ、参加 者数やアンケートだけではない介護予防事業の評価ができるようになります。
出典:ICTを活用したフレイル予防研究会(設立・主催 エーテンラボ株式会社)
4. フレイル予防の導入事例10
フレイル予防のための施策の例についてお伝えしてきたので、具体的にどのようなことをすればいいのか理解できたのではないでしょうか。
都道府県の自治体では、高齢化対策や健康・福祉の一環として、フレイル(虚弱)予防や健康づくりの取り組みをしています。セミナーやイベントなど対面式に加えて、アプリなどのICT活用した施策までさまざまです。
自治体において、地域包括ケアシステムの一端として、フレイル予防は欠かせません。地域包括ケアシステムとは、「住まい」「予防」「生活支援」「介護」「医療」等に関する行政サービスを包括的に提供することで、高齢になってもいつまでも元気に暮らし続けられるような地域をつくる取り組みです。
そこで次は、市町村が具体的に取り入れている事例を具体的に紹介することで、よりはっきりとイメージできるようにしていきます。
全国的に注目を集める事例など、10自治体の事例をご紹介します。
フレイル予防の成功事例10
- 千葉県松戸市:専門家と連携し、都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」を推進
- 東京都西東京市 :全国に広がる「フレイルチェック」を普及
- 東京都府中市 :アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進
- 東京都八王子市 :介護予防ポイント制度「てくポ」を導入
- 大阪府堺市 :介護予防「あ・し・た」プロジェクト
- 愛知県豊田市 :SIBを活用し、介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」を促進
- 兵庫県淡路市 :高齢化率38%からの挑戦 オンラインフレイル予防事業
- 秋田県南外村:食事と運動に関する複合的なプログラムの定期的な提供
- 千葉県柏市:企業との連携による効果的なフレイル予防の啓発活動
- 東京都墨田区:対象者のレベルに応じた柔軟な継続支援
ひとつずつ見ていきましょう。
4-1. 千葉県松戸市:都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」
千葉県松戸市では、千葉大学と連携し、「松戸プロジェクト」をはじめ、様々なフレイル対策を実行しています。
千葉県松戸市のフレイル予防対策
専門家と連携し、都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」を促進
千葉大学予防医学センターと、千葉県松戸市との地域包括ケアシステムの開発のための共同研究事業
一般高齢者向けの調査を他都市と比較・分析できるJAGES(日本老年学的評価研究)の「健康とくらしの調査」を導入
地域活動への参加で健康寿命を延ばす取り組み
- ボランティアやプロボノも参加した地域活動を実施
松戸市内で、80を超える「元気応援くらぶ」が活動中
出典:松戸プロジェクト
松戸プロジェクトとは、地域活動への参加で健康寿命を延ばす全国に先駆けた科学的研究プロジェクトです。
2017年より千葉大学予防医学センターと松戸市が連携し、「地域活動への参加で健康寿命を延ばす全国に先駆けた科学的研究プロジェクト」が始まりました。首都近郊都市部ならではの内容で市民の健康づくりを目指しています。
プロジェクトの提案者は、「社会疫学」のアプローチから日本の健康格差問題を論じてきた近藤克則教授です。高齢者がさまざまな形で社会参加することで、その健康寿命を伸ばす取り組みを推進しています。
中核となる試みの「元気応援くらぶ」は、松戸市内に80を超える「くらぶ」活動となっており、高齢者の社会参加のモデル化につながっています。
このように千葉県松戸市では、予防医学の専門家と連携し、都市型介護予防の構築を目指した、フレイル予防活動を成功させています。
出典:千葉県松戸市「松戸プロジェクト」
4-2. 東京都西東京市:全国に広がる「フレイルチェック」を普及
東京都西東京市では、全国80自治体以上に普及した「フレイルチェック」など、以下のように様々なフレイル対策を実行しています。
東京都西東京市のフレイル予防対策
東京都内初! フレイル予防事業実施のため東京大学と連携協定を締結
東京大学高齢社会総合研究機構が独自の研究をもとに開発したプログラムを実施
「フレイルチェック」は全国80自治体以上に普及
フレイルサポーターを養成し、市民による市民のためのフレイル予防を実現
- 「指輪っかテスト」など独自のフレイルチェックで、自分自身の状態を知ってもらう場を提供
元気高齢者を運営者として養成することによる活躍の場の提供
西東京市は、東京都内で初めて、フレイル予防事業実施のため東京大学と連携協定を締結しました。これにより東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授らのもと「フレイル(いわゆる虚弱状態のこと)」をチェックできるプログラムを実施しています。この「フレイルチェック」は、市区町村で、講習を受けて認定された「フレイルサポーター」により取り組みが進められています。
ポイントなのは、サポーターもチェックを受ける住民と同じ65歳以上ということ。シニアの活躍の場を提供することで、彼らのフレイル予防にも役立っています。
この西東京市 高齢者支援課のフレイル予防の取り組みである「フレイルチェック・フレイルサポーター」は、80を超える自治体に広がっています。
出典:サポーターと一緒にフレイル予防 全国に広がる健康長寿をめざす取り組み
4-3. 東京都府中市:アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進
東京都府中市では、アプリ「みんチャレ」を導入し、フレイル対策に成功しています。
東京都府中市のフレイル予防対策
府中市は高齢者のICTの利用、フレイル予防の推進をしている
厚生労働省スマート・ライフ・プロジェクト 健康寿命をのばそう!アワード受賞
高齢者のICT活用・フレイル予防に、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用
アプリ経由で高齢者の日常データ(歩数、投稿数、継続率)を収取し、分析することで効果が定量的に分かる
多人数に展開できる
アプリに不慣れな高齢者の支援のため、「スマホでみんなとフレイル予防講座」を実施
府中市は、高齢者のICTの利用、フレイル予防の推進をしています。コロナ禍における介護予防の在り方を検討する中で、経済産業省関東経済産業局が開催した「ガバメントピッチ」を通じて、習慣化アプリ「みんチャレ」の開発・運営を手がけるエーテンラボ株式会社と協働することになりました。
「みんチャレ」は、散歩や体操など健康や生活習慣の改善のために習慣化したいことを、5人1組のチームで励まし合いながら続けるアプリです。アプリを通じて同じ目標を持つ仲間とコミュニケーションをとるため、コロナ禍でも身体的接触なく、楽しく健康づくりが行えます。
これにより、高齢者のオンライン上での社会参加に加え、デジタルリテラシーの向上にもつながっています。
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
4-4. 東京都八王子市:介護予防ポイント制度「てくポ」を導入
東京都八王子市では、健康の行動をポイント化し、地域経済循環につながる制度を導入し、フレイル対策を実行しています。
東京都八王子市のフレイル予防対策
健康にいいことをしてポイントが貯まる「てくポ」を導入
スマートフォンアプリを通して健康習慣を定着させる仕組み
貯めたポイントは市内の店舗で利用可能で地域循環にもなる
東京都初の中核市となった八王子市。都市として発展を続ける一方、高齢者の占める割合が人口の約27%(令和3年10月時点)に達するなど、少子高齢化が進んでいます。ボランティア活動に参加した人にポイントを付与する「高齢者ボランティア・ポイント制度」を起点に、デジタル化推進。市独自の介護予防ポイント制度「てくポ」を導入。ポイントは、スマートフォンの脳と体の健康維持アプリ「脳にいいアプリ」を活用し、アプリで健康習慣を続けることで貯まっていきます。
4-5. 大阪府堺市:介護予防「あ・し・た」プロジェクト
大阪府堺市では、成果連動型委託(Pay for success、PFS)で、以下のようなフレイル対策を実行しています。
大阪府堺市のフレイル予防対策
堺市介護予防事業「あ・し・た」プロジェクトを推進
自分の学び・活躍の姿が、だれかの気づきとなり、 次の参加へつながるようにイベントを設計
従来の介護予防教室と比較し、男性の参加者の割合が15%から67%に増加
学んで終わりではなく、活躍し、次につながる活動を支援
事業者を公募する成果連動型委託(Pay for Success、PFS)で事業設計している
堺市の要支援・要介護認定率は、全国、大阪府よりも高く、特に要支援の認定率において差が大きくなっています(要支援認定率 国:5.3%、大阪府:7.5%、堺市:9.1%)。要支援予備軍へアプローチする効果的な取組が必要と捉え、2019年から成果連動型委託(Pay for Success、PFS)にて介護予防「あ・し・た」プロジェクトを推進しています。
『あ|あるく「身体活動」 し|しゃべる「社会参加」 た|たべる「食生活」』から成っており、多種多様な体験イベントや学びの講座を展開しています。また参加して終わりでなく、自分の学び・活躍の姿が、だれかの気づきとなり、 次の社会参加へつながるような内容となっています。
2022年には、リアルだけではなく、オンラインを活用したフレイル予防教室「パソコン・スマホでフレイル予防教室」も本格導入しています。
※成果連動型委託(Pay for success、PFS)とは
成果連動型民間委託契約方式とは、国または地方公共団体が、社会課題の解決に対応した成果指標を設定し、成果指標値の改善状況に連動して委託費等を支払うことにより、より高い成果の創出に向けて事業を推進することができる新たな官民連携の手法のこと。
4-6. 愛知県豊田市:介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」
愛知県豊田市では、SBIを活用し、事業費最大5億円規模のフレイル対策を実行しています。
愛知県豊田市のフレイル予防対策
2021年に介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」を開始
ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)を活用した官民連携による介護予防事業
介護予防の取組として、億単位の事業費でSIBを活用することは全国初
事業費として5年間で最大5億円かけ、年間5,000人の参加を図る事業
出典:愛知県豊田市 コロナフレイル予防の推進に向けた大規模SIB事業を実施 「ずっと元気!プロジェクト」の開始について
愛知県豊田市は、ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)を活用した官民連携による介護予防事業として「ずっと元気!プロジェクト」を開始しました。
事業費として5年間で最大5億円かけ、年間5,000人の参加を図る事業として実施し、高齢者の方に社会参加の機会として様々なプログラムを提供するものです。介護予防の取組として、億単位の事業費でSIBを活用することは全国初となります。
※ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)とは
ソーシャルインパクトボンド(SIB)は、民間企業のノウハウと民間資金を活用した新しいソリューションを成果連動型で実施することで、国や自治体が抱える社会課題の解決を図る、新たな官民連携の仕組みです。DIは、ビジネスプロデュース活動の一環として、医療・健康、インフラ維持修繕、防災、リサイクル、こどもの教育、まちづくり等の幅広い分野でのSIB活用を推進していきます。
4-7. 兵庫県淡路市 :⾼齢者スマホ普及率4割でもできる オンラインフレイル予防
兵庫県淡路市では、高齢者に向け、オンライン、スマホ、ウェアラブルを活用したオンラインでのフレイル予防の対策をしています。
兵庫県淡路市のフレイル予防対策
コロナ禍で、オンラインフレイル予防に着手
身体に装着、運動による身体の動きをリアルタイムに取得し可視化するMoff Band(3Dモーションキャプチャが 可能なウェアラブル・センサー)を活用
高齢者のフレイル予防の運動動作をデータ化
オンラインフィットネス教室により運動促進
高齢化率38%の兵庫県淡路市では、これまでも「いきいき100歳体操」や体力測定会などを実施してきました。コロナ禍を経て、⾃分でできるフレイル予防と、新しい⾼齢者世代に適応するフレイル予防が必要と捉え、オンラインフレイル予防に着手しています。
またウェアラブル端末を装着することで、運動内容、体力測定を可視化し、フレイル予防を促進しています。
4-8. 秋田県南外村:食事と運動に関する複合的なプログラムの定期的な提供
秋田県の南外村では、食事と運動に関する複合的なプログラムを住民に提供することで、以下のような効果があらわれたそうです。
秋田県南外村における
プログラム提供の結果
- 運動・スポーツの実施頻度が有意に増加した
- プログラム後1年間、歩行速度の低下が抑えられた
- 肉や魚、牛乳を食べる頻度の減少が抑えられた
ここで取り入れられたのは、ILSI Japan(イルシー・ジャパン) が開発した「テイクテン!」という以下のような内容のプログラムです。
具体的には、10日間で100点満点となるオリジナルの食生活チェック表を用いて、毎日食生活の状況を確認したり、気軽にできる体操を実施したりすることで、フレイル予防を推進することができます。
またこのプログラムの特徴は、単に行動改善のための情報提供を行うだけでなく、各地でリーダーやサポーターを養成し、それぞれの地域で継続実施できる点にあります。
まずはこうしたプログラムを導入することでフレイルの悪化を防ぎ、次のステップとして地域で継続できる環境づくりの支援を行うと良いでしょう。
4-9. 千葉県柏市:「柏スタディ」に代表される独自のデータベースの活用
千葉県柏市では、フレイル対策を講じるなかで、「柏スタディ」という独自のデータベースを構築しています。
千葉県柏市のフレイル予防対策
「柏スタディ」に代表される独自のデータベース蓄積
フレイルチェックの対象者情報と介護保険者番号の紐づけによる追跡調査体制を構築
東京大学、UR都市機構、柏市が連携し、柏フレイル予防プロジェクト 2025 推進委員会が発足
民生委員と地域包括支援センターが連携し、細やかな個別対応を推進
国民健康保険と後期高齢者医療制度の保健事業を接続
出典:千葉県柏市 フレイル予防
千葉県柏市では、平成22年に東京大学+UR都市機構+柏市にて3者協定を締結。平成24年に、65歳以 上を対象とした健康調査を経年(3か年)で実施する「柏スタディ(大規模高齢者長期縦断追跡コホート研究)」を開始しました。 独自のデータベースの活用と自治体・民間・医療専門職が一体となってのフレイル予防促進をおこなっています。
ロコモフィットかしわ事業(ロコモティブシンドローム予防を主眼とする事業)を通じて、国民健康保険加入者を介護予防へ誘導するなど、国民健康保険と後期高齢者医療制度の保健事業を接続する取り組みも実施しています。
柏市役所内にて、フレイルチェックの全ての対象者の情報と介護保険の被保険者番号を紐づけしてお り、要介護認定の状況も後から追跡できるようにしています。 これにより、フレイルチェック受講者の要介護認定の有無や要介護度の推移を確認することが可能な体制になっているのです。
また、医療専門職の通いの場への無料派遣を推進したり、企業や大学と連携し、フレイル予防啓発活動実施しています。
例えば令和4年10月に行われたイベントでは、以下のような企業や大学がショッピングモールにブースを構えて様々な企画を提供しました。
参加ブースと主な企画の例
- 株式会社NTTデータ:顔認証体調測定など
- 株式会社スポーツセンシング:センサーによる上肢下肢の柔軟性の測定など
- イオン新体操クラブ:測定結果からの運動アドバイス
- キリンビバレッジ株式会社:チェックシートによる免疫力チェックなど
- 森永乳業株式会社:腸内環境を整えるための食のアドバイスなど
- 医療創生大学:看護学生による血圧測定、子ども向け紙芝居
柏市も、かしわフレイル予防サポーターによるミニフレイルチェックを行いました。
実際に、東京大学 高齢社会総合研究機構長 未来ビジョン研究センター教授である飯島勝矢氏によると、ショッピングモールを活用することは以下のように高い効果が期待できるのだそうです。
ショッピングモールを活用したフレイル予防のメリット
- モールウォーキングのほうが、地味な公民館での運動よりも出会いが広がる
- 店内をくまなく見物しながらウォーキングすることで、楽しく運動ができる
- 産地の食材を試食して旅行に思いを馳せることができる
- フードコートで誰かと一緒に食事することができる
- ドラッグストアでバイタルデータの計測も可能
- 総合的に社会との触れ合いに役立つ
民間企業との連携によって、高齢者が参加しやすい場所でフレイル予防対策を実践している例でした。
4-10. 東京都墨田区:対象者のレベルに応じた柔軟な継続支援
東京都墨田区では、対象者の特性に応じて、オンライン・オフラインで様々なプログラムを提供しています。
例えば運動プログラムは、以下のように強度別に区分されているため、対象者は「参加したがついていけなかった」「簡単すぎて意味がなかった」という不満を持たずに継続することができます。
<墨田区の提供する運動プログラムの例>
運動強度 | 内容 |
弱め |
→ 屋外でのポールウォーキングや軽運動(月に2回、約1年)
→ 栄養のバランスに関する講義や食生活チェック、やさしい体操(月に2回、3か月程度) |
ふつう |
→ 柔道整復師による筋力低下を予防するための体操と骨折や腰痛予防の講義(週に1回、2か月程度)
→ 介護予防サポーターによる転倒予防や認知症予防のための手軽に取り組める体操(月に2回、約1年) |
ふつう~強め |
→ 健康体操や脳トレーニングなどの介護予防プログラム(週に1回、3か月程度) |
強め |
→ 「スクワット」、「腕立て伏せ」、「腹筋運動」、「背筋運動」などの筋力アップトレーニング(週に1回、2か月程度) |
さらに、男性向けに「男性のための1から始める栄養教室」、オンラインで参加したい人向けに「自宅で始める介護予防体操」なども実施しており、対象者のニーズに応じて必要な支援体制を整えているという点が大きな特徴です。
出典:墨田区 介護予防をはじめましょう
実際に参加者のデータを調査したところ、以下の点について改善が見られたという発表もされています。
すみだテイクテンの効果
- 食品群別の摂取頻度の上昇
- 体力の改善
- 運動習慣の増加
- 食欲の改善
- 主観的健康感の改善
- 外出回数の増加
- 近隣者との会話頻度の増加
- グループ活動やボランティアへの参加頻度の増加
上記の発表の中では、教室開催の頻度は「2週間に1回程度」で体力の改善が認められたことから、「習慣化さえされれば、2週間に1回などでも改善の可能性がある」としています。
また習慣化を促すこと、さらに高齢者のデジタルデバイド解消を目的に、習慣化アプリ「みんチャレ」を導入しています。
都内最大の組織率(※)を誇る墨田区の老人クラブ向けに、スマホの基本的な操作方法を学べる講座を実施。高齢者がスマホ操作を習得するには、基礎的な講座に加え、「スマホを日常使いする機会」を提供することが必要とわかり、日々の暮らしのなかで使える「みんチャレ」の導入にいたりました。
※墨田区の高齢者(65歳以上)の約20%が老人クラブに加入。(参考)老人クラブ加入率:江東区10%、足立区6%。
この墨田区とiU 情報経営イノベーション専門職大学との連携による習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した高齢者デジタルデバイド解消事業の取組は、「冬のDigi田(デジデン)甲子園(※)」のインターネット投票にノミネートされました。
(※)Digi田(デジデン)甲子園とは:デジタルの力を地域の課題解決や住民の利便性等につなげる「デジタル田園都市国家構想」の一環として、特に優れた取組やアイデアを表彰する内閣官房の取組。
内閣官房 冬のDigi田(デジデン)甲子園の結果発表ページ (外部サイト)
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
5. フレイル予防を推進する際の3つの注意点
フレイル予防のためにやるべきことや、実際の事例については詳しくご理解いただけたと思います。
しかしここで、いきなりフレイル予防の施策作りに着手してはいけません。やみくもに始めてしまうと、失敗するリスクが高くなってしまいます。
そこでこの章では、実際にフレイル予防を推進する際に知っておくべき注意点として、以下の3点を解説していきます。
フレイル予防を推進する際の注意点
- 個人の特性に応じた柔軟な支援を提供する
- 高齢者自身が主役となれるようにする
- 単発参加で終わらせず習慣化を促す
フレイル予防を成功させるため、事前に注意点についてきちんと学んでいきましょう。
5-1. 個人の特性に応じた柔軟な支援を提供する
フレイル予防の対象は主に高齢の方になりますが、全ての方が同じ状態ではありません。
それぞれの特性によって適切な支援を行わなければ、フレイル予防は失敗してしまいます。
例えば以下のような特性・ニーズに応じた対応が必要だと考えられます。
考慮すべき特性やニーズの例
- 運動習慣があるかどうか
- 単独世帯かどうか
- 調理習慣があるかどうか
- 既に社会活動への参加に積極的かどうか
まず運動習慣についてですが、高齢者は「毎日運動をしている人」と「全く運動していない人」で二極化しています。
よって、「運動初心者向けの講座」と「日頃から運動している人向けの講座」は区別して提供する必要があるでしょう。
また、日頃運動をしていない高齢者は一人でできる運動を望んでおり、月に1~2回運動をしている高齢者は集団運動を望むようになるという報告もあります。
そのため、現状全く運動をしていない高齢者の場合、突然地域のグループや教室へ参加するように促しても抵抗を感じてしまうかもしれません。
そんなときは、自宅でできる簡単な体操を個別で伝えるなどの工夫をすると良いでしょう。
逆に、運動習慣がある人の場合は一人ではなく他の人と楽しみながらやりたいというニーズを持っていると考えられます。
そのため、他者との交流ができるような内容のプログラムにすると、参加率が向上するでしょう。
さらに、独居の人はフレイルのリスクが高くなるため、特に重点的にアプローチをし、継続参加を促す必要があります。
令和2年の国勢調査によると、65歳以上の人の中で、男性は7人に1人が、女性は5人に1人が一人暮らしだということがわかっています。
そのため「一人暮らしの女性向け」「家族と参加したい人向け」のようにテーマを区切ることで、より自分向けのプログラムに参加できるようにするのも有効でしょう。
このように、支援したい対象者の特性を捉え、その人たちが楽しく参加して継続できるような内容にすることで、フレイル予防をスムーズに進められるようになります。
5-2. 高齢者自身が主役になれるようにする
次に重要となるのが、「高齢者自身が主役になれるようにする」というものです。
イベントや教室を開催すると、どうしても「主催者」と「来訪者」という図式になるため、高齢者はお客さんのようになりがちです。
しかし、お客さん扱いするのではなく、むしろ運営側に巻き込むことで、高齢者自身の当事者意識が高まります。そうすることでやりがいが生まれ、参加率や継続率の向上が期待できるようになります。
そのため日々の運用は高齢者自身に任せ、支援をする側はあくまでも以下のような関与にとどめるのが良いでしょう。
支援側に望まれる関与度
- 自主グループの立ち上げ支援
- 集うための場所の提供
- リーダー養成講座の開催
- 必要な専門家や事業者の紹介
そうすることで、自発的にフレイル予防に取り組む高齢者を増やすことができるのです。
5-3. 単発・単独参加で終わらせず習慣化を促す
最後にお伝えするのは「単発・単独参加で終わらせず習慣化を促す」という点です。
フレイル予防は、一度だけ実施すれば効果が表れるという性質のものではありません。
予防行動として重要な「バランス良く食べること」や「定期的な運動」、「社会活動への参加」などは、日々の習慣として実施し続けてもらう必要があります。
そのため、単発で講座やイベントを開催したり、WEBサイトで情報提供したりするだけでは不十分なのです。
また、高齢者単独ではなく、前述のフレイルサポーターをはじめとした、シニア同士のコミュニケーション、幅広い年代との関わりのある場の創出など、複数人での活動を意識することが大切です。
しかし、だからといって毎週、毎月などの頻度で教室を開いたり、個別にアプローチしたりするのは予算や人手不足で難しい、という場合も多いと思います。
JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)が4年間追跡した研究によると、高齢者のスポーツはグループに参加した方が良い可能性が指摘されています。
スポーツのグループに参加して運動を週1回以上行っている人と比べて、グループに参加せずに運動もしていない人は1.65倍、要介護に至りやすかったそうです。注目すべき点として、「週1回以上・組織非参加」の人は、1.29倍要介護認定へ至りやすかったのに対し、「週1回未満・組織参加」の人は、要介護認定へ至りにくかったという点です。
出典:JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)
フレイル予防の継続には、社会参加、予防行動の習慣化が不可欠です。この実現のために、同じ目標を持つもの同士がグループとなって活動することが重要なのです。
そのため、例えば以下のような工夫で高齢者自信が習慣化できるように促すようにすると良いでしょう。
フレイル予防行動の習慣化を促すための方法の例
- 自宅で使える食事チェックリストを配布し、自分で簡単に栄養バランスを確認できるようにする
- オンラインで視聴できる運動の動画を提供し、自宅で実施できるようにする
- ご家族向けのリーフレットを作成し、家でも声掛けをしてもらうようにする
- 自主グループで毎週食事会を実施できるよう配食業者と協力する
- 新しい行動の習慣化を支援するスマホアプリを活用する
習慣化に役立つスマホアプリについては、次の章で詳しく解説します。
6. フレイル予防の習慣化に役立つアプリ3選
フレイル予防を推進する際の注意点についてお伝えしてきましたが、その中でも最も重要なのが「高齢者に習慣化を促す」というポイントでした。さらに、個人での活動ではなく、社会参加やコミュニケーションの創出も大切なポイントです。
しかし、新しい行動を習慣にしてもらいたいと思っても、「つい忘れてしまう」「面倒になった」「1人ではつまらない」などの理由で、続かなくなってしまう人も多いものです。
また、対面形式のセミナーやイベントは、運営側の作業負担がある上に、人数の制限やデータ化の困難さが伴います。
そんな状況に陥るのを防ぐためにおすすめなのが、日常的に手元にあるスマホを活用することです。
MMD研究所より2022年10月に発表された調査によると、は高齢者のスマホ所持率は94%となっており、ほとんどの人がスマホを利用していることがわかります。しかし、スマホを持つ高齢者は確実に増えているが、日常使いするきっかけがないというのが現実です。
内閣府の調査(※)によると、70歳以上の高齢 者がスマホやタブレットを利用しない理由として上げている上位3位は、以下の通りです。
・自分の生活には必要ないと思っている(52.3%)
・どのように使えばよいかわからない(42.4%)
・必要であれば家族に任せればよいと思っている(39.7%)
※内閣府『情報通信機器の利活用に関する世論調査(R2年度)』より
上記から、高齢者がスマホ等を利用しない理由はそのメリットや使い方をまだ知らないからだとわかります。また、同調査にて「どんなことがあればスマホやタブレットの利用につな がると思うか」に対する回答の上位3位は以下の通りです。
・操作や設定が簡単になる(46.4%)
・機器の値段や通信料金が下がる(42.5%)
・利用することで家族や友人とのコミュニケーションを取る機会が増える(38.3%)
以上のことから、高齢者がスマホを利用するには、コミュニケーション用途での活用方法に ついて丁寧にお伝えすることが重要であり、高齢者はスマホの利便性や操作方法、楽しさを 知ることでスマホを積極的に活用にする可能性は十分あるとわかります。
また高齢者にとっては、スマホを活用することは、デジタルデバイドの解消にもつながります。
そこでこの章では、高齢者のスマホ利用も促進でき、かつフレイル予防の習慣化に役立つアプリとして以下の3つを紹介していきます。
フレイル予防の習慣化に役立つアプリ
- オンライン通いの場アプリ
- イマカラ
- みんチャレ
6-1. 総合的な情報提供に!オンライン通いの場アプリ
1つ目に紹介するのは、厚生労働省と国立長寿医療研究センターが開発した「オンライン通いの場アプリ」です。
このアプリではウォーキングや体操、脳トレゲームなどを実施することで、「まごっち」というオリジナルキャラクターを成長させることができます。
このアプリでできること
- 運動や脳トレなどを行うことでポイントがたまり、キャラクターが成長するため、楽しみながら日常生活における3つの活動(身体・知的・社会活動)を継続することができる
- お友達や仲間とチャットなどで交流もできる
- 食事の写真をとるだけで栄養摂取状況を登録できるため、簡単に食事管理ができる
ただし、機能が6つと多めである分、慣れるまでは使い方を覚えにくい可能性があります。アプリの説明書を使い方に関する問い合わせがあったときは対応できる体制を整えておくのが良いでしょう。
「オンライン通いの場アプリ」の詳細については以下のページをご覧ください。
オンライン通いの場アプリ
6-2. 同じ目標をもつ仲間と、確実な習慣化を支援できる!「みんチャレ」
自治体の事例でもご紹介した「みんチャレ」は、地域の高齢者同士がアプリ上でつながり、 フレイル予防行動やコミュニケーションを継続する仕組みを提供しています。
このアプリでは、高齢者同士がアプリ内で5人1組のチームを組み、楽しく交流しながら運動を継続することができます。
前述したように、フレイル予防は栄養(食・口腔機能)・運動・社会参加の3つの軸が重要です。みんチャレではコミュニケーション(社会参加)をしながら、運動や栄養を習慣化することができるのです。またアプリを使い慣れていくことで、シニアのデジタルリテラシーの向上にも繋がります。
また、習慣化することで貯めたコインを植樹や食料支援などの社会貢献活動に寄付することができます。
自分のがんばりが、自分やチームのためだけでなく地域貢献や誰かの助けにもつながります。これによりモチベーションの向上にもつながっています。
このアプリでできること
- みんチャレのウォーキングチームに参加し、毎日仲間と会話しながら歩数や写真を共有することで、楽しくフレイル予防行動が継続できる
- 文字入力・写真投稿を行う習慣ができ、デジタルデバイド解消につながる
- 習慣化することで貯めたコインを植樹や食料支援などの社会貢献活動に寄付することができる
実際に、みんチャレのアプリは東京都墨田区、府中市や神奈川県藤沢市、横須賀市、綾瀬市、大阪府堺市など様々な自治体でフレイル予防に活用されており、以下のような効果もあらわれています。
みんチャレの効果
- アプリ利用開始から6ヶ月後に、高齢者の60%の方が毎日ウォーキングを継続し、平均歩数が1,000歩増加
- アプリ利用開始から10ヶ月後に、高齢者のアプリへの1日あたり投稿数が1回から3回に増加
- 特に独居高齢者の孤立防止や外出意欲向上に効果的で「初めてスマホを楽しいと思えた」と好評
また、高齢者向けにアプリの利用を始める際に気になる点として「使い方がわからないのではないか」「問い合わせが増えてしまうのではないか」という懸念があると思います。
しかしみんチャレでは、利用開始時に対面でみんチャレの使い方講座を実施しているため、高齢者の方でもきちんと利用方法を理解した上で始めることができます。
さらに、お電話でのお問い合わせ窓口も設置しているため、職員の方が対応に追われることもありません。
より詳しい内容を知りたい方は、以下のページをご覧ください。
みんチャレ Healthcare フレイル予防
6-3. 世界初の認知症予防総合サービスアプリ「脳にいいアプリ」
埼玉県越谷市、東京都八王子市等で導入されている脳科学に基づく世界初の認知症予防総合サービスアプリ「脳にいいアプリ」は、近年の脳科学において認知症予防に効果的と言われている5要素(運動・食事・脳刺激・ストレス緩和・社会参加)を組み込んで設計されています。
このアプリでできること
- 脳科学に基づく、認知症予防プログラムを体験できる
- 『人工知能』を搭載しており、活動内容を学習してその人に最適な活動を提案してくれる
- 無理なく簡単に楽しめて、使い続けることができる
「脳にいいアプリ」には、『通知』『歩数』『食事』『脳トレ』『評価』の機能があります。また、『人工知能』を搭載しており、活動内容を学習してその人に最適な活動を提案します。簡単に楽しんで使えるため、無理なく使い続けることができます。
7. まとめ
この記事では「フレイル予防」をテーマとして、以下の内容を解説してきました。
フレイル予防について改めて理解を深めるために知っておくべきこと
- フレイル予防の目的
- フレイル予防のための3つのポイント
- フレイルの種類別対策
また、「フレイル予防の3つの柱」に応じた有効な施策の例も具体的にお伝えしました。
さらに、フレイル予防の成功事例として、以下の10自治体の事例もご紹介しました。
フレイル予防の成功事例10
- 千葉県松戸市:専門家と連携し、都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」を推進
- 東京都西東京市 :全国に広がる「フレイルチェック」を普及
- 東京都府中市 :アプリ「みんチャレ」で、ICT利用・フレイル予防を推進
- 東京都八王子市 :介護予防ポイント制度「てくポ」を導入
- 大阪府堺市 :介護予防「あ・し・た」プロジェクト
- 愛知県豊田市 :SIBを活用し、介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」を促進
- 兵庫県淡路市 :高齢化率38%からの挑戦
- 秋田県南外村:食事と運動に関する複合的なプログラムの定期的な提供
- 千葉県柏市:企業との連携による効果的なフレイル予防の啓発活動
- 東京都墨田区:対象者のレベルに応じた柔軟な継続支援
そしてフレイル予防を推進する際に知っておくべき注意点として、以下についても解説しました。
フレイル予防を推進する際
の注意点
- 個人の特性に応じた柔軟な支援を提供する
- 高齢者自身が主役となれるようにする
- 単発参加で終わらせず習慣化を促す
最後には、フレイル予防の習慣化に役立つアプリとして以下の3つを紹介しました。
フレイル予防の習慣化に
役立つアプリ
- オンライン通いの場アプリ
- みんチャレ
- 脳にいいアプリ
ここまでお読みいただいたことで、フレイル予防とは何か、どんなことを具体的にすべきなのか、について理解を深めることができたのではないでしょうか。
成功事例を参考にしたり、便利なサービスを導入したりして、有効なフレイル予防を実現していきましょう。
フレイル予防の最新事例や実施のポイントを知りたい方はこちら
↓
みんチャレ Healthcare フレイル予防