GTDとは、ストレスをなくして心にゆとりを持ちながら「最大限の効率」で仕事をこなせるタスク管理の手法です。
GTD(Getting Things Done:物事を成し遂げる)という名のとおり、超・集中状態を作り出し、並外れた行動力で、人生のあらゆるタスクを成し遂げられるようになります。
GTDの書籍は世界30カ国以上で出版されており、世界中の有能なビジネスパーソンが愛用しているメソッドです。
本記事では、タスク管理の方法を模索しているなら、ぜひ知っておきたいGTDについて解説します。
本記事のポイント
- GTDの基礎知識から解説
- 実践の具体的な流れが理解できる
- GTDを習得するコツまでお伝え
「GTDとは何か知りたい」
「自分の生産性を高める方法を探している」
…という方におすすめの内容となっています。
先にお伝えしておくと、GTDには少々難解な部分もあります。習得にある程度の努力が必要なことも事実で、誰でも簡単にできるインスタントなノウハウではありません。
しかし、だからこそ、GTDに出会いマスターした人は、他の人と圧倒的な差を付けて成功できるのです。ちょっとワクワクしませんか。さっそく見ていきましょう。
目次
1. GTDとは何か?基礎知識
まずはGTDの基礎知識からご紹介します。
1-1. GTDとは「Getting Things Done」という世界的に有名な仕事術
GTDとは「Getting Things Done」の頭文字を取った略語で、世界的に有名なタスク管理の仕事術です。
「Getting Things Done」とは「物事を成し遂げる」という意味で、その名のとおり物事(やるべきこと、タスク、仕事)を完了させる具体的な手法がGTDとなります。
GTDの提唱者は米国の経営コンサルタントであるデビッド・アレンです。GTDの著書は世界30カ国以上で翻訳され、まさに世界的に有名な仕事術がGTDであるといえます。
1-2. どんなときでも心にゆとりを持って最大限の効率で仕事をこなせる方法
GTDを「最強の仕事術」と呼ぶ人もいますし、「世界で最も有名なタスク管理法」という人もいます。
なぜそれほどまでに支持されるのか、その理由は、
「GTDとは、どんなときでも心にゆとりを持って、最大限の効率で仕事をこなせる方法」
だからです。
つまり、
- 仕事に追われてストレスを感じる毎日から解放されたい人
- 自分のパフォーマンスを最大化して仕事の成果をあげたい人
上記両方の人たちにとって最適な解決論が、GTDであるといえるのです。
1-3. 「やるべきこと」をクリアにし「とるべき行動」を選択するためのワークフロー
そんなにすごいGTDとは、具体的にどんな中身なのか気になるところでしょう。
詳しくは後ほど「GTDの基本的なやり方5ステップ」にて解説しますが、先に概要だけ触れておきます。
GTDの特徴は、頭の中にある「気になっていること」のすべてを頭の中から出したうえで、決められた手順に沿って分類・整理し、「とるべき最善の行動」が常に簡単に選択できる状態を作ることです。
簡単にいえば、「やるべきこと」をクリアにし、「とるべき行動」を選択するワークフローがGTDの中身となります。具体的な手順が次の5ステップです。
GTDの基本の5ステップ
- ステップ1:把握する…気になることのすべてを把握する
- ステップ2:見極める…それぞれの意味やすべき対応を検討する
- ステップ3:整理する…見極めた結果に沿って分類する
- ステップ4:更新する…週に1度以上の頻度で見直す
- ステップ5:選択する…最善の行動を選ぶ
2. GTDを実践すると得られる3つのメリット
具体的な5ステップを解説する前に、
「GTDの実践によって、何が得られるのか?」
について、もう少し詳しく見ておきましょう。
大きく分けて3つのメリットがあります。
- 心のストレスがなくなる
- 仕事からプライベートまで人生のあらゆるタスクを1つで管理できる
- 集中力だけでなく行動力も最大化される
2-1. 頭の中がクリアになってストレスがなくなり集中力が高まる
1つめのメリットは「頭の中がクリアになってストレスがなくなり集中力が高まる」です。
GTDが目指しているのは「あらゆるレベルですべてのことをコントロールできている完璧な状態」です。
アレンは、著書で以下のように述べています。
あらゆるレベルですべてのことをコントロールできている完壁な状態を想像してほしい。
頭の中がすっきりと整理されていて、まだ済んでいないことに対する不安が微塵もない状態とはどういうものだろう?
ほかのことにいっさいわずらわされず、やるべき作業に100%集中できているとしたら、どんな素晴らしい気分になるだろうか。■出典:デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』
アレンは、複雑な現代社会においても、武道で言うところの「水のような心」、すなわち「ゾーン」もしくは「フロー」を実現することは可能だといいます。
その具体的なノウハウが、GTDなのです。GTDを実践すると頭の中がすっきりとクリアになり、ストレスから解放されます。
結果として、“やるべき作業に100%集中できている状態”を作れるのです。
2-2. 仕事からプライベートまで人生のあらゆるタスクをGTDだけで管理できる
2つめのメリットは「仕事からプライベートまで人生のあらゆるタスクをGTDだけで管理できる」です。
ビジネス上の仕事の管理術には取り組んでいても、同レベルでプライベートのタスクまで管理しているビジネスパーソンは少ないでしょう。
「仕事のタスクは完璧に管理していても、プライベートの問題が気がかりで集中できていない」
といったケースは多発しています。GTDなら、ありとあらゆるタスクの一元管理が可能です。
というよりも、意識している・していないにかかわらず“すべて”の「やるべきこと」を把握し、一カ所に取り組んでいくことが、GTDの重要なメソッドとなります。
例えば、以下の問題・気がかり・やるべきことを、すべてGTDで管理していくのです。
- 顧客の問題を解決する
- 玄関の電球を取り替える
- 新しい部下を採用する
- 息子の受験対策をする
- 今年の家族旅行を計画する
- 新商品のコンセプトを考える
仕事からプライベートまで、あらゆるタスクを含有して頭と心をクリアにしていく。これはGTDならではの醍醐味といえるでしょう。
2-3. 集中力だけでなく行動力も最大化される
3つめのメリットは「集中力だけでなく行動力も最大化される」です。
前述のとおり、GTDを実践すると頭の中がクリアになって集中力が最大化されますが、GTDのすごいところは同時に、最も難しい「行動の管理」を実現するところです。
頭の中からすべての「気になること」を追い出す習慣を作ったうえで、その時々でとるべき最善の行動を選択できるようになります。
アレンは以下のように述べています。
あなたは、やるべきことの優先度と、時間や情報、集中力をどのように関連付けているだろうか。実はここにこそ、限られた時間と労力を存分に注ぐべきなのである。
本当に重要なのは、そのときどきで自信をもってとるべき行動を選択していくにはどうすればよいかということだ。
(中略)
私が何千人ものプロフェッショナルを指導してきて気づいたことがある。それは、彼らにとって最大の問題は、多くの人が思い込んでいるような「時間不足」ではないということだ。
本当の問題は、やるべきことの真の意味を理解していないため、次にとるべき行動がわかっていないことにある。■出典:デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』
GTDは、行動管理(最善の行動の選択)まで落とし込んでタスクを管理できることが、非常に大きなメリットといえます。
最初に「どんなときでも心にゆとりを持って最大限の効率で仕事をこなせる方法」と表現しましたが、GTDで最大限の効率が叶うカラクリは、「集中力 × 行動力=生産性の最大化」の方程式にあるのです。
3. GTDの基本的なやり方 5ステップ
GTDの特徴やメリットが理解できたところで、実際のフローを解説していきましょう。
- ステップ1:把握する
- ステップ2:見極める
- ステップ3:整理する
- ステップ4:更新する
- ステップ5:選択する
3-1. ステップ1:把握する
1つめのステップは「把握する」です。
このステップでは、頭の中にあるタスクをすべて書き出します。
日々の細々とした気になること、やらなければならないこと、判断しなければならないことの「すべて」を完全に把握するために、プライベートでも仕事でも、緊急性のあることでもないことでも、気になることのすべてを集めることが重要です。
ツールは何を使ってもOK
具体的にどんなツールを使って把握するかは決まっておらず、自分に合う方法で行います。アナログでもデジタルでもOKです。
例えば、以下のどれでも構いません。
- 書類受け(トレー)
- 紙の手帳やノート
- デジタルのメモ帳・音声記録ツール
- メール、テキスト
これらの「すべてを頭の外に追い出す先」のツールをGTDでは「インボックス」と呼んでいます。
インボックスの数は増やしすぎない
インボックスは何を選択してもOKですし、複数使うこともできますが、インボックスの数は増やしすぎないようにします。
例えば「書類トレーと紙のノートとメモアプリ」といった具合に3つのインボックスを使うと、その分、自分の管理能力が必要になるためです。
自分の管理能力を超えないように、インボックスの数は必要最小限にすることです。
3-2. ステップ2:見極める
2つめのステップは「見極める」です。タスクに対して「これは何か?」を精査します。
具体的には、ステップ1で洗い出したすべてのタスクに対して、
「求めている結果は何か?」
「行動を起こす必要があるか?」
「具体的にどんな行動をすべきか?」
を、ひとつずつ検討していきます。
例えば「ダイエットする」というタスクがあったとしましょう。
ダイエットする
- 求めている結果は何か?→ 体重を50kgにする
- 行動を起こす必要があるか?→YES
- 具体的にどんな行動をすべきか?→スポーツジムの申込みをする
このように具体的な「行動」に落とし込んでいきます。
「とるべき行動」がわかったら、その行動は次の3つのどれかに該当するか判断し、見極めるステップは終了です。
- 今すぐやる:2分以内でできること
- 誰かに任せる:2分以上かかることで自分がやらなくて良いこと
- あとでやる:2分以上かかり自分がやるべきこと
なお、ここで「今すぐやる」と判断した行動はただちに実行して完了し、誰かに任せると判断した行動は任せる手続きを取りましょう。
3-3. ステップ3:整理する
3つめのステップは「整理する」です。
ステップ2で見極めた結果を踏まえて、タスクを分類するのがこのステップです。
「見極める」のステップを踏んだうえで、最終的に「気になること」を8種類のカテゴリーに分解して振り分けていきます。
行動を起こす必要のないもの
- 【ゴミ箱】現時点では無価値で必要のないもの
- 【いつかやる/多分やる】いつか行動する必要が出てくるかもしれないもの
- 【資料】あとで必要になるかもしれない情報
行動を起こす必要があるもの
- 【プロジェクトリスト】求めている結果
- 【プロジェクトの参考情報】プロジェクトの関連情報
- 【カレンダー】特定の時間にする行動/特定の日にする行動/特定の日に使える情報
- 【次にとるべき行動リスト】上記以外の行動で「あとでやる(2分以上かかり自分がやるべきこと)」と判断した行動
- 【連絡待ちリスト】誰かに任せて完了の報告があるのを待っている行動
上記の中で理解しにくい「プロジェクト」と「カレンダー」については、補足説明をしておきましょう。
「プロジェクト」とは?
GTDでは、複数の行動ステップが必要な「求めている結果」を「プロジェクト」と呼びます。
プロジェクトは、達成したり意図的に外したりしない限りはリストに残り続け、「解決していないことは何か」を常に思い出させてくれる役割をします。
プロジェクトは
「1年以内に達成可能で、複数の行動ステップが必要な望んでいる結果」
と定義されています。
例えば、以下がプロジェクトの例です。
- 体重を50kgにする
- 新たなスタッフの採用
- 社員旅行の計画
- 庭に植物を植える
- 娘の中学受験
- 仕事管理術について勉強する
「カレンダー」とは?
カレンダーのカテゴリーは、スケジュール帳へのスケジュールの書き込みとイメージしてください。
GTDで重要なのは、カレンダー(スケジュール)にToDoリストを記さないことです。GTDでは、従来の時間管理手法と違って、ToDoリストは好ましくないという考え方があります。
カレンダーには、以下の3つ以外の内容は一切記入すべきではないとされています。
- 特定の時間にする行動…会議のアポなど時間が決まっている行動
- 特定の日にする行動…特定の日にやらなければならないが時間は特定されない行動
- 特定の日に使える情報…約束の場所への行き方などある特定の日に知りたい情報
GTDでToDoリストを使わない理由は2つあり、1つめは日々の仕事の優先順位が頻繁に変わる現代では、ToDoの項目をあらかじめきっちり押さえておくのは不可能だからです。
2つめは、1日のToDoリストにその日でなくてもいい行動が書かれていると、その日でなくてはならない行動に集中できなくなるからです。
以上の理由から、GTDではToDoリストは使わずに、前述の3種類の内容のみをカレンダーに記します。
3-4. ステップ4:更新する
4つめのステップは「更新する」です。
GTDでは、週に1回は全体の見直しを行って、最新状態にアップデートすることが成功の重要ポイントとされています。
その理由は、
「やると決めたあらゆる行動の選択肢を定期的に見直すことによって、いざ行動するときに自信をもって正しい選択ができるようになる」
からです。
週に1回、「週次レビュー」として、次のことを行います。
- やらなければならないことを把握し、どうすべきかを見極める。
- システム全体を見渡す。
- リストを更新する。
- すべてのものについて、済んだものを処分し、情報を更新する。
つまり【ステップ1:把握する→ステップ2:見極める→ステップ3:整理する】のプロセスを、週に1回ペースで繰り返していくのです。
3-5. ステップ5:選択する
5つめのステップは「選択する」です。
ステップ1〜4のワークフローはすべて、行動を「選択する」ためにあります。ステップ1〜4をきちんと実践すると、目の前にある選択肢から今やるべき最善の行動を簡単に選べるようになるのです。
「どうやって選べば良いのか?」といえば、「把握する」「見極める」「整理する」「更新する」のプロセスが終わっている前提条件であれば、「直感を信じることだ」とアレンはいいます。
GTDのプロセスをきちんと実行できていれば、直感力が冴えてきて、知的かつ合理的に判断を下せるようになるのです。
選択する4つの基準
とはいえ、GTDを始めたばかりで直感では判断が難しいときには、次の4つの基準について順番に考えます。
- そのときの状況
- 使える時間
- 使えるエネルギー
- 優先度
「そのときの状況」とは、例えば今いる場所(会社、自宅など)や使えるツール(電話、パソコンなど)の条件や制約です。状況から、そのときに何ができるかを振り分けます。
「使える時間」は、例えば“あと5分ある”なら5分でできるタスクを選択する、という考え方です。使える時間によって選択肢はおのずと絞り込まれます。
「使えるエネルギー」は、自分の気力と体力を指します。例えば、頭が冴えているときに選択すべきタスクと、脳は疲れているけれど体力はあるときに選択するタスクは異なってくるでしょう。
「優先度」は、そのときの状況・使える時間・使えるエネルギーによって絞り込まれた行動のうち、どれをするのか一番有益か?という基準になります。
以上の4つの基準を念頭に置きながら、日々の行動を選択していきましょう。
4. 「GTDが続かない」と悩む前に知っておきたいこと
ここまでお読みいただき、「GTDは何だか難しそう」と感じた方もいるかもしれません。
あるいは、すでに取り組んだことがあるものの、「GTDが続かない」という声も聞きます。
GTDは、一見ハードル高く見えることは否めません。が、GTDの習得を諦めるのは非常に惜しいといえるほど、マスターできれば余りあるメリットをあなたに与えてくれます。
そこで最後に、GTDが続かないと悩む前に知っておいてほしいことをお伝えしましょう。
4-1. GTDをマスターするのに2年はかかる
まず、誰でもGTDは難しそうと感じるのが通常の感覚ですから、心配しないでください。
というのは、デビッド・アレン自身が著書のなかで「GTDをマスターするのに2年はかかる」と述べているからです。
逆にこう考えてください。
「誰でもマスターできるような簡単な方法ではないからこそ、身につけることができれば、他の人と差が付けられる」と。
今すぐ理解できなくても、ときにつまずくことがあっても、諦めずGTDに取り組み続けてください。
GTDをマスターできれば、
「あらゆるレベルですべてのことをコントロールできている完璧な状態」
「ほかのことにいっさいわずらわされず、やるべき作業に100%集中できている状態」
が手に入ることを、思い出しましょう。
4-2. まずはデビッド・アレンの本をきちんと読むのが近道
本記事では、GTDの本来のステップを勝手に簡略化することはせず、本家に沿ってご紹介することにこだわりました。
しかし、GTDの理論やエッセンス、テクニックは、膨大に用意されています。本記事を通してGTDに興味を持ったなら、次のステップではぜひ本家の書籍をきちんと読みましょう。
ネットサーフィンで断片的に情報収集するよりも、一度はきちんと本で学ぶのが確実に近道です。
最初の一冊としては、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』がおすすめです。
デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』
約400ページある本ですが、本記事を通して概要を理解したあとなら、すいすいとラクに読み進められるはずです。
4-3. GTDを実践している人との交流が継続を支えてくれる
最強の仕事術といわれながらマスターが難しいGTDですが、実践している人との交流が継続を支えてくれます。
実際に、デビッド・アレンもGTD実践のためのコツとして、
「GTDを実践している人との交流をもちつづけよう」
と述べています。
GTDを一緒に習慣化する仲間を見つけるためには、5人1組で続ける習慣化アプリ「みんチャレ」をおすすめします。
みんチャレのアプリをダウンロードして「GTD」と検索すると、GTDに取り組み中のチームが見つかります。さっそく試してみましょう。
5. まとめ
GTDは「Getting Things Done」の略語で、世界的に有名な仕事術の名称です。
どんなときでも心にゆとりを持って最大限の効率で仕事をこなせる方法として、世界中の有能なビジネスパーソンが愛用しています。
GTDを実践すると得られる3つのメリットは次のとおりです。
- 頭の中がクリアになってストレスがなくなり集中力が高まる
- 仕事からプライベートまで人生のあらゆるタスクをGTDだけで管理できる
- 集中力だけでなく行動力も最大化される
GTDは5ステップで実践します。
- ステップ1:把握する
- ステップ2:見極める
- ステップ3:整理する
- ステップ4:更新する
- ステップ5:選択する
「GTDが続かない」と悩む前に、以下のことを知っておきましょう。
- GTDをマスターするのに2年はかかる
- まずはデビッド・アレンの本をきちんと読むのが近道
- GTDを実践している人との交流が継続を支えてくれる
GTDに出会い、習得したことで人生を好転させた人たちがたくさんいます。さっそくチャレンジしてみましょう。