ソーシャル・キャピタル(Socoal Capital)とは、“ 社会関係資本”と訳され、
「社会を円滑に機能させるために有益な、人々の信頼関係や結びつきを表す概念」
を指します。
ソーシャル・キャピタルが蓄積された社会では、治安・健康・幸福感などによい影響があり、行政効率が高まると考えられています。
ソーシャル・キャピタルは、よりよい社会を構築していくために欠かせない、重要な考え方です。
この記事では、ソーシャル・キャピタルの意味や基礎知識を、わかりやすく解説します。
ソーシャル・キャピタルを高める取り組みについても、具体的にご紹介します。ソーシャル・キャピタル施策企画の参考情報としても、お役に立てるはずです。
では、さっそく見ていきましょう。
目次
1. ソーシャル・キャピタルとは?基本の知識
まず、ソーシャル・キャピタルとは何か、基本事項から確認していきましょう。
1-1. ソーシャル・キャピタルとはどういう意味?
冒頭でも触れたとおり、ソーシャル・キャピタルとは、「社会を円滑に機能させるために有益な、人々の信頼関係や結びつきを表す概念」です。
明確な唯一の定義はなく、文献や発信者により解釈の違いがある言葉ですが、アメリカの政治学者ロバート・パットナムによる定義が有名です。
ロバート・パットナムの定義
- 人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴
- 物的資本 (Physical Capital) や人的資本 (Human Capital) などと並ぶ新しい概念
1-2. フィジカル/ヒューマン/ソーシャル
ロバート・パットナムの定義を理解するためには、前提として、
- フィジカル・キャピタル(物的資本)
- ヒューマン・キャピタル(人的資本)
を知っておく必要があります。
(1)物的資本(フィジカル・キャピタル)
土地・建物・機械など物理的な有形資産
(2)人的資本(ヒューマン・キャピタル)
教育によってもたらされるスキル・資質・知識のストックを表す個人の属性
(3)社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)←NEW
信頼・規範・ネットワークといった社会組織の特徴
物的資本や人的資本だけでは表しきれない、人と人との間のつながりを指して、「ソーシャル・キャピタル」という概念が生まれています。
1-3. よりよい社会をつくるための「資本」
キャピタル(Capital)の日本語訳は、「資本」です。
資本とは、事業をするため・生活をするため・利益を得るためなどの「元手」となるものを指します。
ソーシャル・キャピタルは、何のための元手の話をしているかといえば「よりよい社会」です。
ソーシャルキャピタルが蓄積された社会では、相互の信頼や協力が得られるため、他人への警戒が少なく、治安・経済・教育・健康・幸福感などに良い影響があり、社会の効率性が高まるとされる。
出典:『デジタル大辞泉』,小学館
わかりやすくいえば、
「社会的なつながりに基づく、相互の信頼や協力のリソース(=よりよい社会の元手)」
が、ソーシャル・キャピタルです。
ソーシャル・キャピタルが豊かに蓄積されているほど、自発的な支え合いや、共同での問題解決が促されるために、社会の効率性が高くなると考えます。
ひいては、社会全体の繁栄や発展に、ソーシャル・キャピタルが重要な役割を果たしている、ということです。
2. ソーシャル・キャピタルの効用
次に、ソーシャル・キャピタルの効用を、より具体的に見ていきましょう。
2-1. 健康/健康以外の両面に証明された効用
以下は、厚生労働省の資料からの引用です。
ソーシャル・キャピタルの効用
ソーシャル・キャピタルの効用については、国内外の研究により、健康面の効用や健康以外の効用が多く証明されています。
健康面の効用として、死亡率の低減、自殺の減少、自覚的健康度の改善、喫煙率や運動習慣など健康行動に影響を及ぼすことが指摘されています。
健康以外の効用としてパットナムも指摘したように行政の効率が良くなること、防災対策や治安・防犯に有効であること、子育てや教育面でもプラスの効用が指摘されています。
続いて、もう少し細かく見てみましょう。
2-2. ソーシャル・キャピタルと寿命
まず、大きいのが「健康面」へのはたらきです。
人々の健康に対して好影響を与えるため、最終的には「死亡率の低減」という効用をもたらします。
ソーシャル・キャピタルと
寿命の関係
これは、ソーシャル・キャピタルの要素の一つである「他者への信頼」が平均寿命に及ぼす影響を示したものです。
「他者への信頼」を横軸にとり、平均寿命を縦軸にとると、寿命の最も短いトルコから最も長い日本まで、直線的に分布しています。
日本の長寿は周知の事実ですが、その背景に、「他者への信頼」が先進国の中で、最も高いことが指摘されているのです。
ソーシャル・キャピタルは、寿命に影響を与えるほど重要な概念であり、取り組む意義が明確であることがわかります。
2-3. 行政効率からビジネス分野まで注目
さらに、ソーシャル・キャピタルは健康以外にも効用があります。
行政効率や防災・治安、子育て、教育など、人々の暮らしに広く影響を与えるからです。
同資料では、近年、
〈企業や職場におけるソーシャル・キャピタルが生産性を高め、技術革新や経済成長にもつながる〉
と、ソーシャル・キャピタルが広く注目されている点にも言及されています。
「自社のソーシャル・キャピタルを高めることが、業績向上や競争力強化のために重要である」
と認識する経営者が、増えているのです。
従業員同士の信頼関係や結びつきは、ビジネス資本となります。
3. ソーシャル・キャピタルの3つの要素
ここで知りたいのが、
「ソーシャル・キャピタルとは、具体的に何を指しているのか?」
についてです。
パットナムは、ソーシャル・キャピタルを「信頼・規範・ネットワーク」の3要素で構成されていると述べました。
ソーシャル・キャピタルの3要素
人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
3-1. 信頼
「信頼」は、社会の効率性と大いに関係する概念です。ポイントは3つあります。
3-1-1. 信頼は取引コストを下げる
信頼は、あらゆる取引において重要な要素です。信頼は、取引コストを下げます。
信頼が取引コストを下げる理由
- 信頼があれば「納期に間に合うか?」「品質は大丈夫か?」など、事前に情報を集めるコストをかける必要がない
- 何らかの不都合があっても、十分な補償がなされるとの期待がある
信頼のレベルが高いほど、経済競争力や民主主義の度合いが高まります。
そのメカニズムは、「信頼があると、取引コストが下がるから」と説明できます。
ここでいうコストとは、金銭的な意味だけでなく、時間や労力も含みます。
3-1-2. 厚い信頼 < 薄い信頼
パットナムは、信頼を次の2つに区別しています。
- 知っている人に対する厚い信頼:親密な社会的ネットワークの資産
- 知らない人に対する薄い信頼:地域における他のメンバーに対する一般的な信頼
ソーシャル・キャピタルの形成に役立つのは、後者の「薄い信頼」のほうです。
なぜなら、薄い信頼のほうが、より協調行動を促進することにつながるためです。
3-1-3. 信頼と自発的な協力の循環
パットナムは、
「信頼があると、自発的な協力が生み出され、自発的な協力がまた、信頼を育てる」
とも考えていました。
信頼は、ソーシャル・キャピタルの構成要素のひとつであると同時に、ソーシャル・キャピタルが信頼を生み出す循環も起きる、といえます。
3-2. 規範
2つめの要素は「規範」です。これは、社会の行動規範やルールを指します。
規範にはさまざまな種類がありますが、パットナムがとくに重視しているのは、「互酬性(ごしゅうせい)の規範」です。
互酬性とは?
文化人類学の用語で、受けた贈り物などに対して、義務として非等価の贈与を行うこと。日本の「お返し」は、その例。
出典:『デジタル大辞泉』,小学館
簡単にいえば、
「相手にやさしくしてもらったり助けてもらったりしたら、自分もお返しに、同等のやさしさや助けを返さなければならない」
という規範が、ソーシャル・キャピタルの形成に役立つ、ということです。
互酬性のメカニズム
- 短期的:相手の利益になるようにという愛他主義に基づく
- 長期的:当事者全員の効用を高めるだろうという利己心に基づく
→ 互酬性は利己心と連帯の調和に役立つ
3-3. ネットワーク
最後に、3つめの要素は「ネットワーク」です。
ネットワークは、社会的なつながりや関係性のことですが、パットナムはネットワークを次の2つに分けました。
- 垂直的なネットワーク:上司と部下のように上下関係のあるネットワーク。職場、親族、政治的組織など階層的な構造を持った組織で多く見られる。
- 水平的なネットワーク:上下関係がなくフラットなネットワーク。合唱団、協同組合、趣味のサークル、地域のグループ、スポーツクラブなど。
パットナムが重視したのは、後者の「水平的なネットワーク」です。
水平的なネットワークは、対等な立場でつながることができるため、社会的信頼や協力を維持しやすいと考えられます。
3-4. 補足:ソーシャル・キャピタルの定義は複数ある
以上、3要素の解説は、内閣府の資料「「ソーシャル・キャピタル」という新しい概念」を参考文献としています。
同資料に、「ソーシャル・キャピタルの定義は、ほかにもさまざまなものが提案されている」ことが注意書きとして書かれていますので、補足として引用します。
なお、ソーシャル・キャピタルの定義については、このほか様々なものが提案されており、例えば、OECDでは、ソーシャル・キャピタルを「グループ内部またはグループ間での協力を容易にする共通の規範や価値観、理解を伴ったネットワーク」と定義している。
これに対して、発展途上国の社会開発においてソーシャル・キャピタルの活用に関心を持つ世界銀行では、パットナムの定義を狭義とし、ソーシャル・キャピタルに対して、「社会構造全般と対人関係にかかわる個人の行為を規定する規範全体」という非常に幅広い意味に解釈できる定義を与えている。
すなわち、信頼感やネットワークとともに、制度、社会の仕組みの役割が強調されたものとなっている。
パットナムの定義を狭義として、より広い解釈を与えているケースもあることを、念頭においておきましょう。
4. ソーシャル・キャピタル醸成における行政の役割と事例
4-1. ソーシャル・キャピタル醸成における行政の役割
ソーシャル・キャピタルは、行政においては以下のような地域包括ケアの役割を期待できます。
・地域社会の安定(安心して生活できる環境)
・ 教育の向上(地域の教育への関わり)
・経済活動の改善(企業間の信頼関係とコスト)
・自治体の効率化・活性化(新しいまちづくり、村おこし)
・ 国民の福祉・健康の向上(医療へのアクセス、主観的健康)
出典:大阪府大阪市 令和4年度大阪市「在宅医療・介護連携相談支援室 」 活動報告会 令和5年2月4日 【掲載版】
ここでは、ソーシャル・キャピタルを活用した自治体の事例をご紹介します。
4-2. 東京都墨田区
墨田区では、高齢者のつながりに着目したソーシャル・キャピタルの取り組みを行っています。
高齢者にとって、人と人とのつながりはフレイル予防の観点でも重要とされています。
高齢者が習慣化アプリ「みんチャレ」の使い方を学び、高齢者同士のオンラインコミュニティに参加することでリアルとデジタルのハイブリッドなつながりを創出するとともに、日常的なスマートフォンの利用を促す高齢者デジタルデバイド解消の取り組みとなっています。
都内最大の組織率(※)を誇る墨田区の老人クラブ向けに、スマホの基本的な操作方法を学べる講座を実施。高齢者がスマホ操作を習得するには、基礎的な講座に加え、「スマホを日常使いする機会」を提供することが必要とわかり、日々の暮らしのなかで使える「みんチャレ」の導入にいたりました。
※墨田区の高齢者(65歳以上)の約20%が老人クラブに加入。(参考)老人クラブ加入率:江東区10%、足立区6%。
この墨田区とiU 情報経営イノベーション専門職大学との連携による習慣化アプリ「みんチャレ」を活用した高齢者デジタルデバイド解消事業の取組は、「冬のDigi田(デジデン)甲子園(※)」のインターネット投票にノミネートされました。
(※)Digi田(デジデン)甲子園とは:デジタルの力を地域の課題解決や住民の利便性等につなげる「デジタル田園都市国家構想」の一環として、特に優れた取組やアイデアを表彰する内閣官房の取組。
内閣官房 冬のDigi田(デジデン)甲子園の結果発表ページ (外部サイト)
「みんチャレ」を活用したフレイル予防の詳細はこちらからご覧ください。
https://a10lab.com/service/healthcare/frail/
4-2. 東京都府中市
府中市でも、高齢者の健康促進のため、地域住民同士のソーシャルキャピタルを推進しています。
令和3年4月から、Withコロナ時代にスマートフォンを活用して高齢者同士がつながる、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業を導入し、市内での積極展開を推進しています。
出典:東京都府中市 習慣化アプリ「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業
府中市のみんチャレフレイル予防事業は、令和3年度の実績として開始から1年で参加者数は219名、アプリの60日間継続率は71%、歩数はアプリ利用によりコロナ禍においても1,600歩/日増加しました。どのようにして新規事業を成功させることができたのか、詳細は以下のインタビューをご覧ください。
4-3. 神奈川県横浜市
横浜市では、とくに「世代間交流」に着目したソーシャル・キャピタルの取り組みを行っています。
なぜ世代間交流がいいの?
子どもから高齢者まで様々な世代が交流を深めながら活動することは、世代を超えて人とつながる楽しさを感じたり、見守りあえる関係づくりや地域が活性化するきっかけになります。
また、世代間交流によって、活動内容の幅が広がったり、これまで知り合ったことのなかった人や団体と知り合い、共に活動する機会ができるなど、活動の発展や継続にもつながります。
実際に行われている事例では、花壇活動を通したシニアと児童との交流があります。
小学生と学区内に住む高齢者が、一緒に校庭の花壇での植栽活動をしています。世代間交流により、高齢者にとっては子どもの成長を見守る喜びを感じることができ、子どもにとっては高齢者との信頼関係づくりを通して社会性を学ぶ機会となるなど、高齢者と子どもの両者への効果がありました。
【成功の秘けつ】
- 近隣の日頃からの関心事をヒントにしました
- 高齢者の方々と小学校双方のメリットを大事にしました
- 花壇活動以外にもシニアと子どもが交流を深めるための時間や場をつくりました
- 総合学習(学びの時間)にシニアが関わり、子どもの成長を見守ることがやりがいとなりました
横浜市では、以下のようなリーフレットを制作して、丁寧な啓蒙活動を行っていることも、特徴です。
出典:横浜市「ソーシャルキャピタル推進リーフ」
詳しくは、横浜市のWebサイト「ソーシャル・キャピタル推進」にて、確認できます。
4-4. 千葉県松戸市
東京都に隣接する人口約50万人の千葉県松戸市では、産官学民が協働して高齢者の社会参加を促すまちづくりとその介護予防の効果評価を行ってきました。
人づきあいが少ないとされる都市部でも、健康なまちづくりは可能なのか。それを検証するために、「都市型介護予防モデル『松戸プロジェクト』」を推進しています。
松戸プロジェクトの特徴は、都市部ならではの豊富な資源を生かして企業、行政、大学、NPO、住民ボランティアなど、多岐に渡る人々が連携し、地域活動の直接的な担い手をしていることです。また、企業退職者や医療専門職などの職業スキルや専門知識を持つボランティアである「プロボノ」に着目し、その支援を受けられる枠組みを構築した。「通いの場」の運営支援や代表者向け交流会の開催、ニュースレターや特設ウェブサイトによる広報など、プロボノのスキルを生かした多くの活動支援が行われ、ソーシャルキャピタル醸成に活用されています。
出典:松戸プロジェクト
4-5. 埼玉県さいたま市
「健幸で元気に暮らそう!」というコンセプトのスマートウエルネスさいたま施策で、ソーシャル・キャピタルに取り組んでいます。
基本的な考え方
(1)「歩く」を基本に、「体を動かす、体を動かしてしまう」まちづくり
(2)「ヘルスリテラシー」に配慮した健康づくり
(3)「ソーシャルキャピタル」の醸成とその活用による健康づくり
(4)「科学的根拠」に基づいた健康づくり
・ 「健幸」とは、一人ひとりが健康で生きがいを持ち、安心安全で豊かな生活を営むことができることをいいます。
・ 「ヘルスリテラシー」とは、個人が健康課題に対して適切に判断を行うために必要となる基本的な健康情報やサービスを獲得、処理、理解する能力をいいます。
・ 「ソーシャルキャピタル」とは、社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念をいいます。
スマートウエルネスさいたま施策の具体的な取り組みは、以下のとおりです。
ソーシャル・キャピタル単体の施策が難しい場合でも、さいたま市のように、ほかの施策と組み合わせることで、長期的な取り組みを実現できます。
5. ソーシャル・キャピタルを高める取り組みの新しいアイデア
国内ではまだ、ソーシャル・キャピタルに対する取り組みが活発に行われているとはいえない現状があります。
これからソーシャル・キャピタルへの取り組みを活性化させていくヒントとなる、新しいアイデアをご紹介します。
- デジタルの活用
- シェアリングエコノミー
- コミュニティガーデン
5-1. デジタルの活用
1つめは「デジタルの活用」です。
パットナムは、「直接顔を合わせるネットワーク」が重要と考えましたが、彼がソーシャル・キャピタルの概念を提唱したのは、1990年代のことです。
現代では、ネットワークのあり方が変わっています。
オフラインであることにこだわるのはナンセンスで、むしろ、デジタルの力を有効活用した、新しいソーシャル・キャピタルのあり方を模索したいフェーズといえます。
たとえば、5人でチームを組んで習慣化を目指すアプリ『みんチャレ』は、近年、フレイル防止やデジタルデバイド対策への効用が注目され、自治体への導入が進んでいます。
自治体への導入例
「みんチャレ」を活用したデジタル・デバイド、フレイル予防解消の資料は以下からご覧いただけます。
5-2. シェアリングエコノミー
2つめは「シェアリングエコノミー」です。
シェアリングエコノミーとは?
「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。
貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。
シェアリング・エコノミーはシリコンバレーを起点にグローバルに成長してきた。(略)
とくに米国では、シェアリング・エコノミーが活発です。
実際のビジネスモデルとしてプラットフォームを構築するのは難易度が高いですが、シェアリング・エコノミーにヒントを得た施策なら、実現性があります。
たとえば、「スマホの使い方、絵の描き方、楽器演奏など、所有するスキルを教え合う」といった施策が考えられます。
5-3. コミュニティガーデン
3つめは「コミュニティガーデン」です。
コミュニティガーデンとは、人々が集まって、野菜や果物などを栽培する共同ガーデンのことです。
地域住民が協力して、共同作業を行うことから、ソーシャル・キャピタルに好影響が期待されます。
米国では、コミュニティガーデンの設置がさかんに行われていて、地域住民が栽培した野菜を販売するマーケットもあります。
参考:ニューヨーク市のコミュニティガーデンプログラム
先にご紹介した横浜市の事例では、花壇活動を通じた取り組みが実践されていました。
「何を栽培するか?」は、地域性や有効利用できる土地に合わせて、柔軟に検討するとよいでしょう。
6. まとめ
本記事では「ソーシャル・キャピタル」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
- ソーシャル・キャピタル=社会関係資本
- フィジカル・キャピタル、ヒューマン・キャピタルに次ぐ新しい概念
- よりよい社会をつくるためのリソースとなる
ソーシャル・キャピタルの効用として、以下が挙げられます。
- 健康/健康以外の両面に効用が証明されている
- ソーシャル・キャピタルが蓄積された社会は寿命が長い
- 行政効率からビジネス分野まで幅広い効用に注目が集まっている
ソーシャル・キャピタルの3要素は、次のとおりです。
- 信頼
- 規範
- ネットワーク
ソーシャル・キャピタルを高める取り組みの事例として、以下をご紹介しました。
- 東京都墨田区
- 東京都府中市
- 神奈川県横浜市
- 千葉県松戸市
- 埼玉県さいたま市
ソーシャル・キャピタルを高める取り組みの新しいアイデアはこちらです。
- デジタルの活用
- シェアリングエコノミー
- コミュニティガーデン
ソーシャル・キャピタルは、社会をよくしていくためのカギを握る重要な概念です。
新たな社会のあり方にも目を向けながら、有効な施策を推進していただければと思います。