健康診断で、運動不足を指摘されたものの、続けられないまま挫折してしまったという人はいませんか? ダイエット目的や、健診結果を受けて、運動習慣を続けなくてはと分かってはいても、いざ行動に移そうとするとなかなか続けられないという人も多いのです。
しかし、医療記者の朽木誠一郎さんは「『運動しよう』と思えた時点で、実はあなたは科学的に、すでに大きな一歩を踏み出している」といいます。どうすれば運動を続けて、習慣化することができるのかーここで科学の力が役に立ちます。
朽木誠一郎さん著『健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本 1日3秒から始める、挫折しない20日間プログラム』(KADOKAWA)と、著者取材から、最新研究で裏付けられた方法をご紹介します。
ご自身も-40kgの減量を達成した朽木誠一郎さん。「キツくない短時間の運動だからこそ続けられる」というその極意をうかがいます。
今日で37歳になるのですが、本日発売の拙著で「いつだって20歳の体に戻せる」とうたってしまった以上やらなきゃと、仕事や子育ての合間を縫ってゆるっと自分自身のアドバイスを実践したところ、20代後半(左)との比較(115kg→75kg)が面白いことになったのでご報告しますね。https://t.co/BC8SDYLSPN pic.twitter.com/uU9UFlQg7Y
— 朽木誠一郎 Seiichiro Kuchiki (@amanojerk) May 31, 2023
それでは、今日から実践できる運動方法をご紹介します。キツくない、挫折しにくい内容なので、運動不足が気になる人は参考にしてみてください。
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目次
1. 今日から実践できる習慣化方法①LISTトレーニングをする
「健康にいいこと」をするには、コストがかかります。運動について言えば、体力という面での肉体的なコストだったり、面倒だと思う気持ちを乗り越えるための精神的コストだったり、ウエアやシューズなどを揃えたりジムに通ったりするための金銭的なコストだったり。このコストを賢く見積もり、コントロールする、つまり「コスパよく」運動することが、続ける、習慣化するためのカギになります。
その一つが『健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本』で提唱している「LIST」つまり低強度=LI(Low Intensity)・短時間=ST(Short Time)トレーニングです。
実は、ステイホームが推奨されていたコロナ禍を経て、「運動」についての医学的な研究が進みました。その中でわかったことに、例えば「筋トレは1日1回3秒からでも効果がある」「有酸素運動は1回10分から分割可能である」といった事実があります。
こうした最新の知見に照らせば、実は運動には「キツいこと」も「時間」も必要ありません。例えば「通勤のために最寄り駅まで10分(1km)歩く」こと、これはLISTトレーニングです。帰りも同じだけ歩くなら、それで有酸素運動は2セット。
ここに、例えば「姿勢を意識しながらイスからゆっくり立ち上がり、またゆっくり座る」「500mlのペットボトルを肘を曲げてゆっくり持ち上げ、またゆっくり下げる」ことをすれば、これもLISTの筋トレがプラスされ、有酸素運動と筋トレ、両方の恩恵も受けられます。これで十分な運動なのです。
LISTトレーニングをだいたい10セットすれば、よく目安とされる「1日1万歩」と同じくらいの身体活動量になります。「大変そう」と感じた方がいたら、安心してください。人間は普通に生活しているだけでもこれくらいの身体活動をしています。大事なのはこれを積み重ねること、というより、これが「運動である」と気がつくことなのです。
2. 今日から実践できる習慣化方法②無料アプリを使う
何かを習慣化するための期間の目安は、だいたい3週間であると言われます。これはある社会心理学の有名な実験を一つの根拠にしており、その結果、習慣が身につくまでの平均時間は66日、18日から254日までと幅がありました。3週間と言われるときは、この最短の方の日数を採用しているのでしょう。
特に「果物を食べる」「水を飲む」など、コストの低い行動は、短い期間で習慣化されました。一方、運動などコストの高い習慣は、身につくまでに長く(約1.5倍)かかったということです。逆に言えば、3週間は運動を続けないと、習慣化の道筋が開けないとみることもできます。
そこで役に立つのが無料のアプリです。ここで、運動を継続するには、医学的にも、トレーニングコーチや一緒に運動する仲間によるサポートが必要だとわかっています。でも、リアルの世界に必ずしも同じ目標の仲間がいるとは限りません。
現代社会で重要になるのが「デジタルピアサポート」。今では「仲間が相互に助け合い課題解決をする活動「ピア(仲間)サポート(支援)」を、無料アプリなどデジタルの力を借りて実践することができます。
デジタルピアサポートによる習慣化の成功率は高くなっています。2020年の日本公衆衛生学会で発表された、習慣化アプリの一つである『みんチャレ』を利用した実証実験では、「1人で挑戦する場合の2倍」になることがわかりました。
■発表概要 学会名 :第79回日本公衆衛生学会総会
学会テーマ:「健康・医療・介護の未来づくり:Social Joint Venture (社会的協働)」
HP:http://jsph2020.umin.jp/
こうした効果は、専用アプリほど特化してはいないものの、SNSを使用して得ることもできます。おすすめなのが、自分のアカウントで「これから定期的に運動をする」と宣言してしまうこと。
後に引けなくなり、「いいね」もモチベーションになります。成功してフォロワー数などの影響力が増したら、運動を続けるインセンティブ(動機)にもなります。
冒頭の実験では「挫折」について心強いこともわかっています。この実験では、期間中に新しい習慣を1日、実践しなかった場合でも、長期的には習慣化への影響がなかったこと。「挫折OK」であることを知ると、安心してチャレンジできますよね。
3. 今日から実践できる習慣化方法③アクティビティ・トラッカーをつける
より手軽に、「つけるだけ」で運動の習慣化につながるのが、アクティビティ・トラッカー(身体活動量計)。腕などに装着して、各種センサーにより運動など身体活動量や睡眠など体の状態を測定し、アプリなどに記録するデジタルデバイスのことです。
各メーカーから、安いモデルでは1万円前後から販売されています。また、普及するApple Watchにも同様の機能が搭載されています。
こうしたアクティビティ・トラッカーは、最近の研究で、なんと「つけているだけ」で健康になる効果があることが明らかになりました。装着することにより、歩数が約1800歩増加し、歩行時間は40分増加、そして体重は1kg減少したというのです。
歩数の増加を分析すると、効果は4〜6カ月後まで多い状態が続き、効果は徐々に小さくなったものの、最大で4年後まで増加していました。まさに運動の習慣化です。
なぜ、トラッカーを「つけるだけ」で効果があるのでしょうか。それを考える上でヒントになるのが、「レコーディングダイエット」です。
これは「食事の内容をノートに記録していく」というシンプルな方法。日本でも著名人が取り組んだことで、2000年代から特に注目されています。そして、このレコーディングダイエット法に効果があることは、医学的にも検証済みです。
例えばアメリカの肥満学会は「自分の食べ物を少なくとも1日2回記録した人は、1回しか記録しなかった人よりも、より多くの体重を減らすことに成功」し、さらに「1日に3回記録した人は、最も成功率が高かった」としています。
レコーディングダイエットのポイントは、まず記録することで、客観的に自分の生活習慣を確認できること、そして「なぜ食べたのか」「食べて満足か/後悔していないか」など、自分自身に向き合うことができること。
これは運動についても同様であるとみられ、トラッカーでも自分の運動の状況を客観的に確認でき、自分自身に向き合える、そのためトラッカーに健康への効果があると考えることができます。
4.今日から実践できる習慣化方法④推しを作る
「楽しみ」は何かを続けるための大きな原動力です。一方、何かを始めたばかりの頃は、そのコストが上回ってしまい、楽しみを感じにくいという構造的な問題があります。ここで、運動自体が楽しくないのであれば、運動に他の楽しみを加えればいい、と考えることもできます。
ここで参考になるのがアイドル=推しという概念です。2022年5月、世界的人気を誇る韓国発の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)が公開した、いわゆる筋トレ動画は大きなニュースになりました。
これは所属レーベルが公開した新しいYouTubeの動画で、メンバーからのメッセージやトレーナーたちによる指導を交え、BTSらが健康的なライフスタイルを維持するための運動の重要性を強調したもの。そして、この動画をきっかけに、筋トレを始める人が続出したのです。
かつてはアイドルファンなどの間で使われることが多かった「推し」という言葉ですが、現在は流行語にもなっています。ここで、ポイントは「好き」が高じれば、肉体的、精神的、金銭的なあらゆるコストの問題を超え「推す」ようになる、ということ。
今やYouTubeやInstagramにはたくさんの「筋肉系」「フィットネス系」のインフルエンサーがいて、まさしく「推されて」います。
また、こうしたインフルエンサーが台頭する以前から、いわゆるスポーツジムの中にも「推し」の概念を取り入れ、基盤を確立しているところがあります。それが、いわゆる「暗闇系フィットネス」と呼ばれる業態。
スポットライトを浴びるアイドルでもあり、同時にスタジオスタッフでもあるインストラクターは利用者の情報、例えばダイエット目的、音楽が好き、スポーツ経験に乏しいなどを把握し、接客する。
利用者にとって、インストラクターは「会えるアイドル」に近い存在で、まさに「推し」です。この業態にハマりさえすれば、積極的にジムに通うようになり、放っておいても運動するようになる仕組みです。
このように、流行りの推し活には、人を精神的にだけでなく、肉体的に健康にする効果すらあるのです。
5.今日から実践できる習慣化方法⑤ゲーム化する
医学的には、運動習慣をつけようとするとき、人の意思の影響は3割に止まることがわかっています。運動不足の人がいくら「もっと運動しよう」と思っても、運動習慣はつかないのです。残りの7割は環境など、その他の要素。つまり、「運動しよう」と肩肘を張らず、自然と運動するような仕組みが重要になります。
そこで近年、注目されているのが「ナッジ理論」。ナッジとは提唱者であるリチャード・セイラーさんがノーベル経済学賞をとったことで有名になった「そっと後押しする」ことを意味する行動経済学の言葉です。
例えば、2016年頃から流行している『Pokemon GO』は、ゲームのプレイ要素の中に「歩行」「移動」を盛り込んでいます。『ドラクエウォーク』も同様。これらはナッジの例です。ゲームが楽しくて好きになればなるほど、人は自然と歩くようになり、健康にもいい影響があるということになります。
特にゲームは、「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」という言葉があるように、それ自体が楽しく、習慣化に果たす役割が大きいものです。「夜中までゲームをしてしまった」があり得るように「昨日はポケゴーのために20kmも歩いた」があり得るのです。
運動そのものがゲームのメイン要素になっているものもあります。例えば「リングフィットアドベンチャー(RFA)」。2019年10月に任天堂から発売されたNintendo Switch専用のソフトです。輪っか型の「リングコン」を両手で持ち、太ももに「レッグバンド」を巻いた状態でプレイします。
プレイヤーの動作がゲーム中の主人公と連動し、アクションゲームやRPGのように冒険を進めていくシステム。主人公の移動はジョギング(足踏み)やスクワットで、敵の攻撃のガードは腹筋で、こちらの攻撃はボクササイズのように、リズムゲームモードではエアロビクスのように、と運動が必須になっています。
開発者によれば、ゲームを設計する上では「プレイヤーに『きつい運動をしてもよい』と思わせる」「きつい運動だけでも楽しめるようにする」ことが前提になっているそうです。実際に、RFAは世界的に人気のゲームになりました。
世の中にはこうしたナッジの性質を持つレクリエーションが無数にあり、それが「趣味」と呼ばれてきました。趣味であれば、環境が変わっても、自発的に続けたいと思えるはず。習慣化の極意は、つまり、趣味化だったのです。
6. まとめ
健康診断では、日々の運動量が確認されます。毎日の活動量を増やすと、体重の増減に関わるだけでなく、血圧や血糖値の改善や、生活習慣病、関節障害など将来的な予防にもつながるのです。
キツくない、短時間で習慣化できる運動方法として、以下をご紹介しました。
・ LISTトレーニングをする
・ 無料アプリを使う
・アクティビティ・トラッカーをつける
・推しを作る
・ゲーム化する
「運動をした方がいいかな」と感じている人は、過度な運動でなくて良いので、「運動の習慣化」を意識して、続けられる内容・量に取り組んでみましょう。
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