愛知県 豊橋市

豊橋市が進める新たなフレイル対策!スマホで人との繋がりを支援

人口
36.7万人(令和6年7月1日時点)
事業目的
フレイル予防
導入サービス
みんチャレフレイル予防
SDGsの目標

愛知県豊橋市では、高齢者のフレイル予防に向けた様々な取り組みを実施しています。コロナ禍のため既存事業を実施できないこともあり、これを機により多様な価値観・ニーズに対応できる事業はないだろうか?と考えていました。「みんチャレ」を導入したところ、フレイル予防を推進することができ、参加者同士の絆も生まれ、さらに高齢者が楽しんでスマホを使う様子まで見られ、一石三鳥のメリットがありました。
今回インタビューに応じていただいたのは、豊橋市長寿介護課の神谷 琴美さん、東田 周也さんです。

導入のきっかけ

神谷:「みんチャレ」を知ったのは、令和4年に行った、豊橋市とカゴメ株式会社とエーテンラボ株式会社による野菜摂取を促進する共同事業がきっかけです。この取り組みを通して、“一人ではなかなか続かないが、誰かと一緒に取り組めば続けられる”という手応えを感じました。また、集合型が苦手な方でもチャレンジしやすいので、参加者の裾野も広がると思いました。コロナ禍で様々な制約が出てきたことをきっかけに、私どもの部署でもみんチャレを試してみることになりました。

豊橋市長寿介護課の神谷 琴美さん

導入前の課題

神谷:コロナ禍の影響で、「人と会うことが無く、気持ちがふさぎ込んでしまう」「外出する機会が減り、足腰が弱ってしまった」といった声がたくさん寄せられました。感染症対策を講じた上で、できる範囲で介護予防の運動教室や講座を実施し、通いの場も徐々に再開しましたが、足腰が弱って通うこと自体が難しくなったり、感染が怖くて参加できなかったり、ご本人は行きたいけれど家族に止められたり、といった事態が起きました。感染症対策の考え方は、人それぞれで多様なものだと実感しました。そうした経験を通じて、より一層多様な価値観に対応できる介護予防事業の必要性を感じていました。

デジタルデバイド解消という観点でいうと、コロナ禍でスマホを持ち始めた高齢者は多いものの、活用できていない人が多いという声を聞いていました。家の電話と同じ感覚で、基本的には通話するだけ。たまに届くメールを見るのがせいぜい、という状況です。数年後には、スマホを使う高齢者の数はもっと増えるだろうと考え、スマホを活用して人の繋がりを作るという点でも、チャレンジしてみたいと思いました。

事業内容

神谷:フレイル予防を目的とし、「みんチャレ」を活用して、5人1組で歩数と外出した写真などの共有にチャレンジしていただくことになりました。運動をするスタイルは、一人で黙々とやりたい人、みんなで集まるのが楽しい人、他の人とはちょっと関わる程度が心地いい人など、様々です。みんチャレは、自分のペースで一人で活動しても人と繋がっていられるという距離感が新しいですね。

豊橋市専用ページ

どのようなプロセスで実施したか

告知方法

神谷:通いの場に来て下さっている方々へ、直接お声がけさせていただきました。また、報道発表をしたところ、ケーブルテレビや新聞(※)などのメディアが反応してくれ、取り上げてもらうことができました。その効果もあって、予想以上にたくさんの方が講座に参加してくださり、「新聞を見て応募した」という方も多くいらっしゃいました。
中日新聞「スマホでフレイル予防 豊橋市、12月から高齢者向け講座」

事業の実施方法

神谷:初年度は、通いの場でお声がけした方々と一般市民公募の方々で、グループを分けて実施しました。知り合い同士が絆を深めるパターンと、初対面同士のパターンで効果を確認するためです。各2回ずつ、合計4回の講座を実施しました。

豊橋市でのみんチャレ講座の様子

導入成果

取り組み成果

神谷:実施してみて、知り合いパターンと初対面パターンでは、それぞれに良さがあるなと感じました。知り合いパターンでいうと、通いの場の頻度は月1回~4回とバラつきはありますが、直接顔を合わせない時でも交流が図れ、仲が深まったようです。共通の話題が増え、ご近所さん同士であれば更なるコミュニケーションが生まれたりもして、その後の活動にも良い影響を与えてくれました。一方の初対面パターンでは、「初めてなのに、こんなに仲良くなれるんだ!」と驚きました。

東田:直接会ったのはたった数回でも、みんチャレ上で毎日メッセージを送りあったり、お互いのウォーキング日記を読んでいるような状況なので、単純接触効果(※)で親しみを感じてくるのかもしれませんね。
(※)繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。

豊橋市長寿介護課の東田 周也さん

神谷:講座後に実際に会っているチームもあり、参加者同士の絆が深まっているなと思いました。
自主グループへの参加を呼びかけると、中には「関係性が出来上がっている既存のグループに入るのはハードルが高いが、新しいコミュニティを作るなら参加したい」という方もいます。みんチャレなら、少人数で新しいグループを立ち上げるのも簡単ですし、気軽に参加できるのも良かったです。

参加者の声

神谷:みんチャレが歩くきっかけに大きく寄与した様子が見受けられました。「歩く習慣がつき、雨の日でさえも欠かさず歩いた」という人もいました。また、「やってみたら面白かった」「通知音が鳴ると、すぐにスマホを見ちゃう。仲間とのやり取りが楽しい」という声が上がったのは、想像以上の効果でした。

自治体職員目線のメリット

東田:みんチャレが、運動のきっかけ・継続促進・参加者同士の仲を深める、という3つのメリットに繋がったのは、驚きでしたね。
デジタルデバイド解消の観点で言うと、高齢者の方がスマホを持って会場に来て、「この前こんな投稿があったね」など和気あいあいと話しているのを見ると、職員としてもやりがいを感じました。

神谷:高齢者は、折に触れて友人と連絡を取り合うことはあっても、自分の日常を発信することには馴染みのない世代です。SNSのような仕様が、逆に新鮮に映ったのかもしれません。写真を工夫して撮ってみたり、どうしたら歩数を増やせるかを考えたり、とても真剣に取り組んで下さいました。
歩くことも、スマホを使うことも、人と繋がることも、全てがチャレンジなんです。「高齢者になっても、新しいことを頑張る!」という刺激にもなっているようです。
ピアサポート効果で行動変容が起きやすいのではないか、と考えています。私たち職員がいくら「運動するといいですよ」とアドバイスしても、発言や行動の変化まで実感できることは、なかなかありません。しかし、みんチャレでは、参加者同士がフォローし合い、言動が変化していく様子を目の当たりにしました。人と人との繋がり方の新しい形、と言えるのかもしれませんね。

東田:何年後かには、高齢者同士でもオンラインでコミュニケーションをとることが普通になっていく可能性があると思います。

今後の展望

神谷:みんチャレの活用はとても面白い取り組みですが、どう地域に広げて行くといいのか、まだ模索中です。
みんチャレは、繋がり作りの一つのツール。市全体で大規模に実施するだけでなく、各地区で講座をしたり、既存事業に組み込んだりして、地域ごとに気軽に仲間づくりをしていってほしいと思います。

東田:地域包括支援センターの職員の方、体操リーダーの方に協力を仰ぐだけでなく、大学と連携して、大学生ボランティアというコラボレーションができるとよいと考えています。大学生にとっても、地域づくりに関わるのは良い経験になるのではないでしょうか。

神谷:みんチャレユーザーの集まりを企画して、グループ同士の横の繋がりも作れたらいいですね。メンバーが変わったり、人数が減ったりすると、継続率が下がってしまいがちです。横の繋がりがあれば、人数が少なくなったグループ同士を統合するなど継続した活用に向けて工夫していきたいと考えています。

みんチャレ事業の開始初年度を担当した豊橋市の神谷さん、山本さん、海野さん

文:天田 有美 / 取材:鈴木 庸介 / 編集:渋谷 恵(みんチャレ編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

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