広島県 呉市

呉市が進めるフレイル予防!老人クラブ会員やハイリスク者がアプリで継続

人口
20.4万人(令和6年3月末時点)
事業目的
フレイル予防/デジタルデバイド解消
導入サービス
みんチャレフレイル予防
SDGsの目標

広島県呉市福祉保健部高齢者支援課では、高齢者を対象とした介護予防とデジタルデバイド解消に取り組んで来ました。その中で「集団で運動することには抵抗があるが、一人では続かない」という方が、どうやったら運動習慣を身に着けられるかという課題を感じていました。また、高齢者がスマホ講座で学んだ内容を習得し日常使いするように支援するにはどうしたら良いのかという点についても、模索していたそうです。

そこで、「みんチャレ」を導入したところ、運動の継続率やスマホ活用に大きな成果を挙げることができました。特に、老人クラブや一体的実施のハイリスクアプローチなど幅広い対象者に対して、成果を残せたのは特筆すべき点です。

今回インタビューに応じていただいたのは、呉市福祉保健部高齢者支援課介護予防グループのご担当のお二方です。

導入のきっかけ

担当者:「みんチャレ」の運営会社であるエーテンラボ株式会社が自治体向けに実施しているオンラインセミナー「ICTを活用したフレイル予防研究会」に参加し、みんチャレの取組を知ったのがきっかけです。アプリ講座は、2週連続で集まりアプリの使い方を学ぶという内容ですが、1回目の講座と2回目の講座で参加された方の表情が全く変わっていて驚きました。2回目の講座が始まる前から、参加者同士でこういうのが分からなかったといった会話がどんどん弾んでいました。フレイル予防にICTを活用することで、こういった良い変化を期待できることを目の当たりにし、みんチャレの導入を前向きに検討したいと思いました。

また、介護予防を目的とした健康アプリがいくつかありましたが、本市が導入の決め手としたのは、スマホの操作やウォーキングといった取組は個人ですが、5人のチームで参加することでお互いに励まし合い、ピアサポート効果による継続率の高さです。継続することで、デジタルデバイドの解消と介護予防の効果があると考えたからです。

導入前の課題

担当者:課題として2点ありました。1点目は、呉市が実施している介護予防事業は全て集団を対象としており、集団を好まない方が参加できるサービス創出の必要性を感じていました。

2点目は、高齢者のデジタルデバイド解消にもうまく取り組んでいきたいと考えており、昨年度、高齢者向けのスマートフォン教室を実施しました。参加者の様子を見ると、講座内で講師の説明を聞き一度出来るようになった操作も、2回目には忘れ再度講師等に聞くといった状況がありました。このことから一度習得した操作も日常的に繰り返しスマートフォンを触らないと忘れてしまう懸念があることから、継続的な利用機会の創出の必要性を感じていました。そういう点でも、「みんチャレ」というアプリの活用はピッタリだと思いました。

事業内容

担当者:みんチャレを活用し、フレイル予防とデジタルデバイド解消の2つを目的として実施しています。

皆さん「運動は体に良い」というのはもちろん知っているけれど、一人ではなかなか続かないものですよね。「みんチャレ」は取り組む時は一人でも、アプリ内で仲間同士で励まし合えることから、ピアサポート効果で継続率が上がるのではという狙いがありました。しっかりと継続することで、フレイル予防とデジタルデバイド解消に効果が出てくると考えています。

呉市専用ページ

どのようなプロセスで実施したか

告知方法

担当者:本格導入の前に実証を行いました。実証の際は、2種類の対象群を選定しました。1つは、昨年度実施した事業とのつながりから老人クラブ。もう1つは、専門職から届く保健指導報告書から、介入の必要性を感じた高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業のハイリスクアプローチの方です。どちらの対象群も当課より個別に参加を呼びかけることができることが決め手となりました。

事業の実施方法

担当者:昨年度、老人クラブを対象にスマートフォン教室を実施しましたので、教室の後にみんチャレを使うといった流れができたら良いと考えました。1回目の講座と2回目の講座は、老人クラブの会合と合わせ1ヶ月の間隔で実施しました。

また、高齢者の保健事業と介護予防一体的実施事業において、ハイリスク者への個別の保健指導を実施していますが、集団の教室に参加することに抵抗感を示す人が多く、「一人で運動しても続かない」という方もおられ、「みんチャレ」との相性が良いのではないかと考えました。

導入成果

取り組み成果

担当者:「みんチャレ」上でオンラインコミュニティを6グループ作り、30日間の継続率が71%と、高い成果を残すことができました。参加者の平均歩数は、チャレンジ開始前と後で、最大1,900歩も増加しました。

また、参加者合同交流会を開催し、そこで参加者の変化をリアルに聞けたのがよかったです。

みんチャレに取り組んだことで、糖尿病のリスクを判別するために重要な指標であるHbA1cの数値改善や体重の減少、冬期は薬の量が増える方が薬の量を増やすことなく過ごすことができたといった報告が聞かれました。

参加者の声

担当者:「意識が変わり、歩くようになった」「歩数を稼ぐために歩こうと思うようになった」「歩くことが習慣化し、生活のリズムができた」「雨が降っても外に出るようになった」など、ウォーキングや運動することに対する意識が変化し、習慣化できるようになったという声がたくさん聞かれました。

また、「今日はしんどいなと思っても、仲間から励ましの言葉をもらうことで、行ってみようという気持ちになり、歩くことができた」「毎日のやり取りをする中で、仲間意識が強まった」といった声も聞かれました。当初の課題であった「集団は気が引けるが、一人では続かない」という方々にとっては、うってつけの対策になりました。

交流会で表彰状を授与

デジタルデバイド解消という観点では、「今まではスマホを使っていなかったが、みんチャレを導入してからは毎日持ち歩くようになった」「良い写真を撮ろうと思うと距離が伸びる」など、毎日の生活の中で自然とスマホを使う機会が増え、便利さを実感している様子も見受けられました。

交流会で「1、2、3、みんチャレ‼︎」のご唱和

自治体職員目線のメリット

担当者:参加者交流会を実施し、参加者の声やアプリを使ってみて感じた変化を直接聞くことができ手応えを感じました。ハイリスクアプローチの方は、半年に一度ご自身の健康状態を計測します。その結果を受けて看護師さんと一緒に改善に取り組むので、数値に対する意識は高かったのではないかと思います。歩いたことで数値に明確な変化が起きたので、モチベーション維持にも繋がったようでした。

また、自ら体感するため、職員5人も実際にみんチャレを使ってみました。職員のみんチャレへの理解も深まり、参加者に使い方を質問された時も具体的に回答することができました。もともと歩く習慣がなかった職員も歩くようになり、今でも継続しています。

交流会参加の皆さんで記念撮影

今後の展望

担当者:今年度は、エーテンラボさんによるアプリの使い方講座と、アプリの講師育成研修の開催を計画しています。講師については市内2つの大学に協力を求め、学生を選定する予定です。講師を育成することで、講座を自分たちで実施できるようになり、高齢者と学生との多世代交流の促進も図りたいと考えています。また、実証実験ではできなかった寄付プロジェクトの実現に向けて、関係部署と連携していきたいと思います。

呉市公式キャラクター 呉氏(撮影場所:アレイからすこじま)

文:天田 有美 / 取材:川口 裕之 / 編集:渋谷 恵(みんチャレ編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

参考動画