東京都 府中市
高齢者同士でつながるフレイル予防事業を
関係職員一丸となって普及推進中!
- 人口
- 26万人(令和5年6月1日時点)
- 事業目的
- フレイル予防
- 導入サービス
- みんチャレフレイル予防
- SDGsの目標
府中市は、東京都西部の多摩地域に位置する人口26万人の自治体です。平成18年に全国に先駆けて介護予防推進センターを設置するなど、市として高齢者の介護・フレイル予防に注力しています。令和3年4月から、Withコロナ時代にスマートフォンを活用して高齢者同士がつながる、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業 を導入し、市内での積極展開を推進しています。
府中市のみんチャレフレイル予防事業は、令和3年度の実績として開始から1年で参加者数は219名、アプリの60日間継続率は71%、歩数はアプリ利用によりコロナ禍においても1,600歩/日増加しました。どのようにして新規事業を成功させることができたのか、ご担当の平澤様、神田様、本田様にインタビューしました。スマートフォンを活用した高齢者支援事業をお考えの自治体のご担当者様、すでに取り組んでいるけれどうまくいかないという方にとって、必ず参考になるお話です。ぜひ最後までご覧ください。
(トップ画像左から府中市 福祉保健部 高齢者支援課 介護予防生活支援担当 神田様、主査 平澤様、市民協働推進部 協働共創推進課 本田様)
みんチャレフレイル予防導入の結果
まずは、みんチャレフレイル予防に取り組んだ結果を見ていきましょう。
みんチャレフレイル予防事業とは?
地域の高齢者同士が習慣化アプリ「みんチャレ」を活用し最大5人1組のチームを組んでウォーキングをし、チャットを通じて交流することで、フレイル予防に重要な運動と社会参加が楽しく続けられます。アプリを続けて貯まるコインを地域貢献活動に寄付できることが、高齢者の行動変容のモチベーションとなります。利用開始時にみんチャレの使い方講座を実施することでデジタルデバイド解消にも寄与します。
府中市様 令和3年度事業の結果
11カ所の地域包括支援センターを含む市内全14カ所でみんチャレの使い方講座を17セット(2回連続講座で1セット)実施し、合計219名の市民がみんチャレを利用しました。みんチャレ講座参加者のアプリ継続率* は、60日間で71%と高い結果となりました。
* みんチャレは一定期間投稿しないと所属チームから自動退出となってしまうため、インストールしておけばよい他のヘルスケアと異なり、実際に投稿を続けていないと継続率にはカウントされません。
利用者からは、
- 「アプリがあるから、外に歩きに行かなくちゃって思う」
- 「 講座で初めて会った人たちだけど、アプリ内で和気あいあいとやっている」
- 「みんチャレでは毎日の写真を投稿する必要があるので外で被写体を探すようになった。今まで写真なんて撮ったことがなかったけど、写真を撮ることを通じて今まで感じなかったことを感じていて楽しい」
- 「地域の耳寄り情報が知れて良い。実際聞いたところに行ってみた」
- 「チームのみんなでたまに集まって散歩している」
等、嬉しい声をたくさんいただいています。
平均歩数/日が1,600歩以上増加!
アプリ利用開始から10ヶ月後には、高齢者の平均歩数/日が1,600歩増加していました(令和3年度実績、N数=108)。みんチャレを利用した高齢者の1日の平均歩数はコロナ禍においてもアプリの利用開始から10ヶ月で1,600歩向上し、身体的フレイル予防を支援* できています。
* フレイル予防には1日女性7,000歩(速歩き15分)、男性8,000歩(速歩き20分)以上が必要**という報告があります。
** 青栁幸利:あらゆる病気を防ぐ「一日8000歩・速歩き20分」健康法 身体活動系が証明した新健康常識.第1刷, 株式会社草思社,2013年4月30日、76-77,118-121
スマートフォン利用回数が向上!
アプリ利用開始から10ヶ月後には、高齢者のアプリへの1日あたりの投稿回数が1回から3回に向上しました(令和3年度実績、N数=121)。
本取り組みは、新聞や介護雑誌等様々なメディアから取材の申し込みがあり、フレイル予防事業の先進的な事例として紹介されました。また、府中市役所内の業務改善を評価する取り組みにて「努力賞」をいただき、表彰されました。さらには、厚生労働省第10回 健康寿命のばそう!アワードの介護予防・高齢者分野で優良賞を受賞しました。
取組前の課題と背景
高齢者が主体的に介護予防に取り組める仕組み作りが課題だった
──府中市の介護予防事業における課題にはどのようなものがありましたか?
みんチャレを導入する以前は、高齢者が自分で介護予防に取り組む仕組み作りに課題がありました。府中市ではコロナ禍以前から、介護予防の「自主グループ」化に力を入れていました。自主グループとは、介護予防講座の卒業生などの市民同士が主体的・継続的に集まり、介護予防の運動等に取り組むコミュニティーのことです。
自主グループ化を重要視しているのは、近隣住民との交流があり社会参加をしている人の方がフレイルを発症しにくく、身体活動が多く* 、人とのつながりが多いほど幸福度があがる**という調査結果があるからです。しかし、自主グループのリーダーとなる人材の不足や、グループで集まるための会場の確保やグループ運営等の役割分担を負担に感じて地域の介護予防講座に参加し続ける方が多く、市民同士の自主グループはなかなか立ち上がりませんでした。
加えて、介護予防講座はリピーターが多く新しい方を取り込めていない、終了後に高齢者が継続して運動に取り組めていない、効果が把握できないなどの課題もありました。
* 国立長寿医療研究センター, 「感染予防と身体活動 第3報」
https://www.yamada-lab.tokyo/wp/wp-content/uploads/2021/04/67ff97e96904d1739336e570e3ec5daa.pdf
** 府中市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(第8期)策定のための調査報告書, 分冊版(第2部第1章 介護予防・日常生活支援ニーズ調査), P.50
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/smph/gyosei/kekaku/kyogikai/kenko/kore/dai8kore/tyousahoukoku.html
コロナ禍で通所が困難に、個別のフォローには限界があった
──コロナ禍での課題にはどのようなものがありましたか?
新型コロナウイルス流行により感染対策で集合通所型の介護予防事業が中止になり、高齢者のフレイル化が加速してしまうことが大きな懸念でした。しかし、コロナ禍でも高齢市民が主体的に活動できる取り組みを市や地域包括支援センターだけで考えるのには限界がありました。
例えば、高齢者が自宅で介護予防活動ができるよう、市から体操や運動のパンフレットを送付したり、地域の包括支援センターの職員が電話連絡等で個別に対応をしたりしました。しかし、これまで講座で職員の指示を元に受動的に介護予防に取り組んでいた高齢者がいきなり意識を変えて主体的に運動することは容易ではなく、なかなかうまくいきませんでした。支援できる職員の人数には限りもあり、このような個別の対応は高齢者の介護予防支援としては十分ではありませんでした。また、3密回避のためにオンラインで介護予防を行うことも検討しましたが、職員や高齢者がITに慣れていないため、実施が困難でした。
地域包括支援センターからは、「外出の機会や他者との交流が減ったことでフレイルに陥っている高齢者が増えた」という報告が寄せられており、このままでは高齢者の健康やQOLが大幅に低下したり、社会保障費が増加することが懸念されていました。
みんチャレフレイル予防を選んだ理由
「人とのつながり」を持ちながら介護予防に取り組めることが導入の決め手に
──みんチャレを選んだ決め手を教えてください
みんチャレを選んだ決め手は、高齢市民同士がオンラインでつながって主体的・継続的に介護予防に取り組める点です。コロナ禍でも高齢市民が主体的に活動できる取り組みを、市や地域包括支援センターだけで考えるのには限界がありました。そこで関東経済産業局のガバメントピッチというイベントで府中市が抱える介護予防の課題を発表し、25社のベンチャー企業から提案をいただきました。一人で取り組んだり、講座で集まって取り組むという提案が多い中、オンラインを活用して高齢者同士のつながりを作るという提案をしていただいたのはエーテンラボさんだけでした*。
府中市は自主グループ化を目指していたことにも表れるように、人と人とのつながりを大切にしています。みんチャレの、仲間と一緒に励まし合いながら健康行動の習慣化を目指す仕組みが、府中市の求めていた、人とのつながりを持って市民同士で主体的に介護予防に取り組む仕組みと合致していました。また、コロナ禍なので身体的接触なしに、アプリを使って健康づくりが行える点も魅力でした。さらに、フレイル予防を「継続」するための仕組み作りについて提案いただいたのもエーテンラボさんだけでしたのでみんチャレを採用することに決めました。
* 高齢者同士がスマホでチームを作ることが介護予防に繋がる習慣化アプリ「みんチャレ」府中市の介護予防事業に参画
https://a10lab.com/news-20210413/
他自治体への導入実績と効果のエビデンスがあり、信頼できた
──他にもみんチャレを選んだ理由があれば教えてください
他の自治体での導入実績があったことも選定の理由の一つです。高齢者にスマートフォンアプリを使ってもらうのはハードルが高いと感じましたが、エーテンラボさんでは既に神奈川県の実証事業で高齢者を含む市民へアプリを導入し参加者の歩数が増加した実績とノウハウがあり、効果* が示されていました。70代でも問題なく使えるというデータを持ち合わせていたので、「府中市でもできそう」と安心して導入することができました。
* 弊社プレスリリース, 習慣化アプリ「みんチャレ」の効果を日本公衆衛生学会で発表(2020年11月4日)
https://a10lab.com/news-20201104/
みんチャレを活用したフレイル予防に
取り組んで良かったこと
──みんチャレを活用したフレイル予防に取り組む中でよかったことは何ですか?
大きく分けて3つあります。
① 高齢者がアプリで交流しながら楽しく健康づくりを継続している
② 介護予防の継続だけでなく、高齢者の社会参加も支援できた
③ 府中市の課題に合わせたエーテンラボの手厚いフォロー
高齢者がアプリで交流しながら楽しく健康づくりを継続している
まず、高齢者がみんチャレを通して主体的に楽しくフレイル予防を継続できることです。みんチャレを導入する前は、高齢者のオンライン利用は、正直かなり難しいと予想していましたが、実際にみんチャレを利用した方が難なく楽しく継続できていることに驚いています。
エーテンラボさんの手厚い支援と介護予防推進センターや地域包括支援センターの協力により、最初は文字入力すらおぼつかなかった高齢者でもスムーズにメッセージを送れるようになっています。
みんチャレ講座で実施したアンケートでは、参加者の93%が歩くことを意識するようになった、94%が今後もみんチャレを使い続けたいと回答しています。
運動を継続できるようになっただけでなく、高齢者からは「みんチャレを始めて写真を撮るので外に目が向くようになり、世界がきれいにみえるようになった」と聞き、長く介護予防に関わっていた職員もそのような感想は初めて聞いたと驚いていました。また、参加者同士でメッセージのやりとりをするのが楽しいようで、運動の機会が増えただけでなく、心の健康にも繋がっているようです。
予防の継続だけでなく、高齢者の社会参加も支援できた
また、アプリを継続すると貯まるコインを地域貢献活動に寄付できる仕組みが高齢者に大好評で、自分の小さな行動が少しでも地域貢献につながるなら嬉しいと運動を続ける大きなモチベーションとなっています。みんチャレの寄付プロジェクトは、地域のニーズに応じて寄付のテーマを自由に決められます。エーテンラボさんと相談のうえ、協賛企業と寄付先を決定し、寄付原資や物品を協賛企業に提供いただいています。高齢者がアプリでフレイル予防を続けて貯めたコインを、府中の寄付プロジェクトに寄付していただき、寄付プロジェクトの合計目標コイン数が達成された時に寄付を実施するという仕組みになっています。
府中市には東京外語大学や東京農工大学があり多くの大学生、留学生が在住しており、新型コロナウイルス流行の影響で困窮する大学生が増えています。また、みんチャレ講座に参加した高齢者に希望する寄付先についてアンケートを取った結果、最も票数が多かったのが「子ども・若者の食事支援・居場所」でした。そこで、府中市では令和3年度にそれぞれ明治安田生命保険相互会社武蔵野支社および大塚製薬株式会社の協賛のもと、フードバンク府中に2回の食料支援の寄付を実施しました。
一人あたりが寄付できるコインの上限を定めていたのですが、高齢者の方から「もっと府中に寄付したい」「寄付できるコインの上限をあげてほしい」とのご要望を多くいただき、寄付が大きなモチベーションになっていることがわかりました。
府中市の課題に合わせたエーテンラボの手厚いフォロー
エーテンラボさんが、決まりきったサービスを提供するのではなく、導入時から講座の運営、アフターフォローまで、府中市の課題に合わせてスピーディーかつ柔軟に提案・対応していただいたこともよかったです。例えば講座の運営については、チラシやアプリの使い方の資料が分かりやすく、すばやく作成され市民への周知もしやすく助かりました。また講座を実施しながら資料を修正したり、必要な情報を追加したり、事業の作り上げにスピード感があり、回を増すごとに講座内容やフォロー体制がブラッシュアップされていきました。
参加者のアプリ利用状況や事業の効果がデータでわかることもメリットです。エーテンラボさんでは利用者のアプリ利用状況がわかるため、地域包括支援センター等と連携して講座後も困りごとがあった利用者を個別で支援することができています。さらに、事業効果があることをデータとして示していただいたことで、関係職員および議会や財政課に事業の価値を示しやすく助かっています。また、エーテンラボさんでは事業の参加者向けに電話でのお問い合わせ窓口を設置しているため、高齢者が安心して利用を継続することができます。
みんチャレを活用したフレイル予防で苦労したこと
──みんチャレを活用したフレイル予防に取り組む中で苦労したことは何ですか?
大きく分けて3つあります。
① 予算を確保すること
② 地域包括支援センターの職員のデジタルデバイド
③ スマートフォンに慣れていない高齢者へのアプリの導入
予算を確保すること
予算確保の際は、オンラインを活用したフレイル予防事業を実施する理由と事業の優位性について理解を得ることが大変でしたが、コロナ禍で市民のフレイル予防のために急いで取り掛かる必要があると感じていたのでがんばりました。
なぜみんチャレなのかについては、国際特許を出願中であること、他の自治体での実績があること、市の大切にしている人とのつながりを持ちながら介護予防を継続できること、同様の企業がないことを説明しました。また、事業の価値や意義を説明する際に、エーテンラボさんからすぐに必要な資料やデータをいただけて助かりました。
地域包括支援センターの職員のデジタルデバイド
府中市には介護予防推進センターが1カ所と地域包括支援センターが11カ所あり、ITが得意な方がいる所とそうではない所で導入には温度差がありました。そのため、まずは職員向けに説明会を実施し、手を挙げた地域包括支援センターから段階的に拡大していきました。
そして、月に最低1回は市と介護予防推進センター、地域包括支援センター等の全関係職員が参加する定例会を実施して講座の開催状況を報告し合い、既に講座を実施した担当者からこれから開催する担当者に向けてアドバイスを共有し、相談しながら講座内容や実施方法を改善していきました。
また、開催が不安な地域包括支援センターの職員からは高齢者支援課に何度も相談の電話がかかってきたこともありましたが、既に講座を経験し、みんチャレに慣れている職員を派遣するなどしてサポートしました。実際に講座を開始してみると、エーテンラボ社員さんから直接アプリの使い方を学べるので、導入に不安があった地域包括支援センターの職員も安心して利用でき、職員のデジタルデバイド解消の一助にもなっています。
スマートフォンに慣れていない高齢者へのアプリの導入
高齢者にアプリを使ってもらう際、まず、アプリをインストールするまでが大変でした。ご自身でスマートフォンを買った方は少数で、ご家族に持たされた方が大多数であり、ID・パスワードといったアプリのインストールに必要な情報を事前に確認してもらうことなどの注意点がありました。
みんチャレ講座への参加は、LINE等のメッセージアプリの利用経験を条件にしているものの、文字入力に慣れていない方が参加することもあります。そのため、地域包括支援センター主催でみんチャレ講座の前にスマートフォン基礎講座を開催し、LINEの使い方をお伝えするなど、より多くの方に参加していただけるようスマートフォンスキルに応じた支援を実施しています。
さらに講座が終わった後には、地域包括支援センター主催で参加者の茶話会を開催し、そこで包括職員がアプリをうまく使えているか確認したり追加の疑問点に回答したりと丁寧なフォローを行うことで継続を支援しています。
ICTを活用したフレイル予防事業で成果を出すために重要なこと
自治体・地域包括支援センター等の関係組織間の連携と、フレイル予防への熱意
──ICTを活用したフレイル予防で成果を出すために、何が一番重要だと感じますか?
庁内や地域包括支援センター等の関係組織間で密に連携をとり、それぞれが市民のフレイル予防のためを思い、新しい事業に熱意を持って行動することが大切だと感じます。コロナ禍で高齢者が弱ってきているという危機感があり、全員が同じ方向を向いて新しい施策を取り入れることができました。
庁内連携とは例えば、今回みんチャレを採択するきっかけになったガバメントピッチのイベントやサポーターである学生団体の紹介、府中市の寄付プロジェクトの推進自体は協働共創推進課が主導しており、大変助かりました。
また、市と介護予防推進センター、地域包括支援センター等が以前より密に連携しており、今回みんチャレを活用した介護予防事業を採用した時もすぐに皆で協力して全市内に導入することができました。
ボランティアにも協力してもらい、きめ細かな対応を
──他にも成果を出すためのポイントがあれば教えてください
行政だけでなく、地域の市民ボランティアとの協力体制をつくることをおすすめします。みんチャレ講座では、高齢者のスマートフォン操作の支援サポーターとして介護予防推進センターの市民ボランティア「ひろめ隊」さんや地域の学生団体「YAFF(Youth Action for Fuchu)」所属の学生さんに同席いただいたことできめ細かな対応ができています。
同世代でみんチャレをすでに利用しているひろめ隊のボランティアさんからみんチャレの先輩体験談を聞くことで利用開始時の不安を払拭することができたり、若い方からスマートフォン操作を教えてもらえることを高齢者の方は非常に喜んでくださっていて多世代交流にもつながっています。
今後の目標について
市民・職員のデジタルデバイドを解消し、介護予防のオンライン化を進めたい
──今後のビジョンや目標を教えてください
府中市では「長生きいき生活」というスローガンを掲げ、高齢市民が生き生きと元気で自分らしい生活を諦めずに生活できることを目指しています。そのためには、これからの高齢者支援事業、介護予防・フレイル予防の展開においてデジタルの普及推進を啓発していく必要があります。
今後は各地域包括支援センターの職員が講師となってみんチャレ講座を実施し、市民・職員ともにより介護予防のオンライン化に慣れていきたいです。そして、現行の介護予防事業にもみんチャレやLINE等を紹介して、高齢者が有事の際の対応や買い物等の日常生活でもオンラインを活用できるようになっていければと考えています。
予算説明の際、府中市議会から取り組みの質問があり、説明をしたところ「とても良い取り組みなので、継続してほしい」とコメントをいただいており、今後もみんチャレの事業に注力してフレイル予防に力を入れていきます。目先の目標は、2023年度にエーテンラボを介さず職員だけでみんチャレ講座の自走化ができるようになることです。
最終的にはみんチャレの取り組みを通じてスマートフォンを利用できるようになった高齢者が増え、市が講座を実施せずとも、市民主体でこの取り組みが広がっていくことを目指しています。
これから取り組まれる方へのアドバイス
スマートフォンを使うことで高齢者の可能性が広がる
──これからスマートフォンを使ったフレイル予防事業に取り組まれる方にアドバイスをお願いします
導入の面でいうと、スマートフォンを使って介護予防を行うことで、高齢者がスマートフォンに慣れ、結果的に生活面で取れる選択肢が増えたり可能性が広がることをアピールすると良いと思います。高齢者でも、これからスマートフォンを使っていく場面が多くなります。府中市ではみんチャレを活用することでスマートフォンを利用できる高齢者が増えました。
例えばワクチンの予約については、Webからの方がとりやすかったため、スマートフォンを持っている高齢者の方にはWeb予約のお手伝いをしました。また、高齢者は買い物の際に小銭を出すのが大変なので、市内の学生団体の大学生からはスマートフォン決済を使えるようにするとより買い物が楽になるのではといった提案もあがっています。介護予防事業に限定せずに目線を広げ、生活に必要な手続きとしてスマートフォンがますます必要になるのを加味していくとより庁内を説得しやすいと思います。
積極的な地域包括支援センターから段階的に展開
──運営面でアドバイスがあればお願いします
地域での自走化を目指し、導入に積極的な地域包括支援センターから段階的に展開していくことをおすすめします。まずは関係職員向けのみんチャレ説明会を実施し、関係職員自身がアプリの使い方を理解することで市民にも自信を持って紹介することができるようになります。また、いきなり全市に導入することは難しいため、手あげ式で積極的な地域包括支援センター等を巻き込みながら、地域に応じた好事例を作っていき、地域全体に広めていくのが良いと思います。
エーテンラボさんは地域の実情に応じた提案や自走化に向けた伴走支援を行ってくれるので、職員だけで考えて行き詰まった際には積極的に相談することをおすすめします。
おわりに
事業開始1年で府中市全域で展開したみんチャレフレイル予防事業について、ご担当の平澤様・神田様・本田様が成功の秘訣を包み隠さずお話しくださいました。
府中市は介護予防に非常に熱心に取り組まれており、コロナ禍で高齢者の介護予防が止まってしまうという危機感の中、市民のためにできることはないかを模索されていました。弊社としてもその思いに応えたいとできる限りのお手伝いをさせていただきました。結果的に厚生労働省のアワードで優秀賞を受賞することができ、何より府中市民の方に喜んでいただけていることを弊社としても非常に嬉しく思っています。
スマートフォンを使ったフレイル予防事業をお考えのご担当者様にとって、今回の事例が参考になりましたら幸いです。みんチャレを活用したフレイル予防にご興味がございましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。
取材・文:横田 成美 / 取材・写真:渋谷 恵(みんチャレ編集部) (※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)