日立健康保険組合
チャンピックスの出荷停止の中、禁煙目標達成に向けた日立健保の取り組みとは?
- 名称
- 日立健康保険組合
- 被保険者数
- 199,458人 (2023.3.31現在)
- 導入サービス
- みんチャレ禁煙
日立健康保険組合は2023年度までに喫煙率を25%に低下させるロードマップを敷き、着実に禁煙の歩みを進めています。その中で「みんチャレ禁煙」を導入し、同健保史上最多の515人が参加し、禁煙外来を大きく上回る48%(248人)が禁煙に成功しました。
今回インタビューに応じていただいたのは、事務局長の菊池 勤さんと、健康経営支援課の櫻井 純一さんです。
導入前の課題
菊池:日立グループでは、全法人が健康経営優良法人認定を目指しており、喫煙率は主要KPIの一つでした。健保としては喫煙率を2023年度までに25%にすることを目標に掲げ、各事業所に禁煙セミナーの実施や禁煙プログラムや禁煙外来を紹介し、2018年度30.9%だった喫煙率を2021年度に27.6%まで削減することができました。
そんな中で、チャンピックスの出荷停止の問題に直面しました。チャンピックスを活用した事業自体がストップしていまい、このままでは喫煙率目標を達成できないという危機感を抱いていました。
導入のきっかけ
櫻井:そんな矢先にみんチャレ禁煙を運営するエーテンラボさんから連絡を受けました。正直、禁煙施策については様々な提案をいただきますが、どれも似たり寄ったりな印象でした。しかし、同じ境遇の仲間で励まし合う「ピアサポート」の切り口が新しいと感じ、みんチャレ禁煙に興味を持ちました。
各事業所や喫煙者からは「禁煙補助薬が無いと、なかなか禁煙できない」という声が寄せられていました。そのため、禁煙補助薬とピアサポートを掛け合わせたプログラムなら、受け入れてもらえるのではないかと思い、導入を決定しました。
どのようなプロセスで実施したか
ー告知方法
櫻井:まず社内イントラネットやメールなどを通じて各個人への案内を行いました。通常のプログラムだと裏表のリーフレット1枚で終わりみたいなことも多いのですが、展開用のメール文章や当健保専用の申込みページも作成いただきました。
募集は健保さんにお任せというケースが多い中で、どうやってページにアクセスしてもらおうとか、プログラムの魅力が伝わるにはどんなページが良いかなども工夫してくれたのはとても心強かったですね。
菊池:また個人への案内と併せて、各事業所への周知にも力を入れました。これまでも事業所向けに事業所内周知用の雛形は提供していたのですが、事業所担当者のやる気に大きく左右されていました。そこでみんチャレ禁煙ではオンライン説明会の実施に加え、非喫煙者向けの説明動画を展開しました。
事業所の担当者からは「この動画を安全衛生委員会で使ってもよいか?」などの問い合わせもあり、明らかに反応が違うなと感じました。担当者自身が「これは面白いな」と思って貰えたからこそ、職場に展開され、その結果募集してすぐドンと申し込みが来たのかなと思います。
ー事業の実施方法
3週間の募集期間を経て、3ヶ月間のプログラムが一斉にスタートしました。
櫻井:通常だとプログラムが始まってしまうと健保側はタッチできないことが多いのですが、みんチャレ禁煙では参加者の状況を逐一報告してくれて、また成功率を高めるための色々な提案をしてくれていました。プログラムを良いものにしていくという「熱意」を感じましたね。
菊池:上位職の立場から見ても、事業運営のPDCAを一緒になって進めてくれていたのはとても心強かったですね。
導入成果
ー取り組み成果
櫻井:まず参加者数のところでは、今までのプログラムが大体300人程度だったのが、1.5倍を超える500人を超えたということでその反響に驚いています。また成功率についてもチャンピックスを使わない中で50%近い数字が出たのは大きな成果だと思います。
菊池:チャンピックスには眠くなるような副作用もあるので、職場によっては難しいところもあるんですよね。その点みんチャレ禁煙ではニコチンガムやパッチを使うので、事業に支障なく参加でき、その上で同等の成果が出せるっていうのは、健保にとっても事業所にとっても嬉しいですね。
ー参加者の声
NYさん(禁煙に成功した50代男性。喫煙歴は30年以上)
実は過去に2回、禁煙に挑戦したことがあるんです。1回目は父親が肺がんで亡くなったとき、2回目は結婚したとき。2回ともニコチンの身体的依存にあらがえず、再度吸ってしまいました。
みんチャレ禁煙は会社のイントラネットを見て、「無料で禁煙にチャレンジできるし、試しにやってみよう」と思い、申し込みました。会社でも敷地内禁煙が始まったりして、吸いづらい空気を感じていたこともあり、何かきっかけを探していたのかもしれません。
参加してみて感じたことは、自己流の禁煙ではダメだということ。ニコチンの身体的依存を補助薬のガムで解消するなど、ニコチン不足でイライラしていることを自覚することで冷静に対処できるようになりました。大和先生のガム使用説明動画など、たくさんあるコンテンツを眺めている内に対応方法が身についた感覚でした。
アプリは毎日投稿していましたね。色々なコメントや情報を見られるので、いつの間にか投稿することが習慣化していたように思います。たばこをやめられて、本当によかったと思います!
今後の展望
櫻井:1回目の成果を受けて、第2回目(2023年5月〜)のクールにも参加を決めました。その背景には、1回目に大きな成果が出たことに加え、2回目に向けて参加率・成功率UPに向けて様々なご提案をいただいたことがありました。プログラム参加者数を更に増やす紹介制度や、禁煙成功率を高めるサポーター制度といった新たな仕掛けが追加されたので、成果が今から楽しみです。
菊池:禁煙プログラム以外にも、メタボ対策の保健指導や重症化予防プログラムなどにもピアサポートは応用できる可能性を感じています。これからもみんチャレには期待しています。
取材・写真・文:日下拓也(みんチャレ編集部) (※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)