神奈川県 伊勢原市

伊勢原市の習慣化アプリを活用した健康づくり!行動変容が持続する仕組みとは?

人口
101,503人(令和5年8月1日時点)
事業目的
健康づくり事業
導入サービス
みんチャレ重症化予防
SDGsの目標

伊勢原市では、生活習慣病対策のため、令和3年度からみんチャレを活用した生活改善支援事業を開始しました。本事業は、令和5年度から「習慣化アプリ行動変容支援事業」として市の重点事業にも位置付けられています。事業の対象者は、市の特定健康診査や人間ドック受診者で肥満度やコレステロール値などから生活習慣病予備群に該当すると想定される64歳以下の人は約1,100人。該当者への健康増進事業は長年実施していましたが、健康な生活習慣の維持・継続のためには現事業のままで良いのかと課題を感じていました。そこで伊勢原市は、同じ目的や目標を持つ仲間と励まし合いながら取り組む『ピアサポート』で、1人で続けることが難しいことでも楽しく習慣化ができるのではないかと考え、みんチャレを導入した事業を立ち上げました。

今回インタビューに応じていただいたのは、 伊勢原市 健康づくり課 健康づくり係 係長 鈴木めぐみさんです。本事業を通じて、市民の持続可能な健康づくりの実現を目指しています。

導入前の課題

鈴木:伊勢原市では近年、糖尿病から腎不全になり人工透析に繋がる患者さんの数が増加し、その患者さんのQOLの低下が深刻ですし、医療費の高額さは自治体の大きな負担でした。そこで市としては、人工透析の主要因である糖尿病性腎症のリスク保有者を把握し、その重症化を防ぐため、状態に応じた保健指導や教室への参加を促していました。

生活習慣病予防の教室は、教室自体の満足度は高かったです。しかし、その場では楽しいと思っていただいても、教室後に予防行動を自分ごととして実践していく、さらには継続していくところまでの行動変容の支援ができず、保健師として歯痒さを感じていました。これまでとは違う方法でのアプローチが必要ですが、どうすれば良いのかと困っていました。

伊勢原市 健康づくり課 健康づくり係 係長 鈴木めぐみさん

導入のきっかけ

鈴木:そのような時、神奈川県が行っていた「かながわME-BYOリビングラボ」の実証事業で伊勢原市内にある東海大学大学院医学研究科ライフケアセンターとみんチャレが共同研究しており、みんチャレを知りました。

伊勢原市ではこれまでアプリを活用した健康事業は行ったことがなかったため、東海大学との共同研究で結果が出ているみんチャレを活用してみようと考え、令和3年度に生活習慣病リスクがある方を対象に実証事業を実施しました。
参加者は、みんチャレで伊勢原市民同士5人1組のチームに参加して、3ヶ月間ウォーキングと食事改善に取り組みました。その結果、利用者の3ヶ月間継続率は82%で、参加者の歩数が増加して運動に関する行動変容を促しました。事業終了後も参加者の半数以上がアプリを継続し、住民の生活習慣の改善が持続する効果を実感しました。これなら住民の行動変容を持続させ、健診数値の改善も期待できると手応えを感じ、令和4年度から市として予算を取り事業を開始しました。

事業内容

鈴木:令和4年度からは市の事業として、みんチャレによる生活習慣の改善とグルコース測定器による結果の見える化を組み合わせたプログラムを実施しました。参加者は、みんチャレを活用して市民同士のチームに参加し、グルコース測定器を開始時2週間と1ヶ月後の2週間の2回装着し血糖変動を確認しながら、2ヶ月間生活習慣の改善に取り組みます。開始時と終了時に体組成測定・生活習慣に関するアンケートを実施し、その変化を評価しました。

プログラム概要

どのようなプロセスで実施したか

告知方法

鈴木:告知は、市の公式ホームページや広報誌、チラシ配布に加えて、特定健診国保加入者のうち生活習慣病予備群の方宛に告知ハガキを郵送しました。また、地域・職域連携推進事業として、市内企業と連携し、企業から従業員に対して参加を呼びかけていただくことで参加者を増やすことができました。

当時の告知チラシ

事業の実施方法

鈴木:プログラム期間は2か月間の最初に開始会を、最後に終了会を実施し、事業の参加者がチームメンバーと対面できる機会を設けました。

終了会の様子

鈴木:開始会では、薬剤師の協力を得て、生活習慣病に関する講義やグルコース測定器の配布・使用方法の説明に加えて、アプリの使い方説明を行います。実は、本事業を開始する前に私たち市の担当者も、グルコース測定器を装着し生活してみました。そのような体験談も交えつつ、市民の方にグルコース測定器を使う目的や使い方をご説明しました。

アプリに関しては、参加者は同じテーブルに着席した市民と最大5人1組のチームを組み、みんチャレで同じチームに参加します。お互いの自己紹介や今回事業に参加した理由、2ヶ月間の目標宣言をテーブルごとに話し、チャレンジ開始に向けて意気込みを発表しあいました。

開始説明会の様子

鈴木:グルコース測定器はプログラム開始時と、1ヶ月経過時の2回各2週間装着していただきます。1ヶ月経過時に再度2個目のグルコース測定器をお渡しするために、参加者にはプログラム中間時点で市役所に来ていただき、その際にグループでの保健指導を行いました。参加者が、みんチャレで血糖トレンドを見た驚きや気づきを共有し合っていると聞き、仲間と取り組むことで1人で取り組むより参加者の学びやモチベーション増している効果を実感しました。

参加者のチャレンジの様子(みんチャレの投稿)

鈴木:終了時には、終了会を実施して期間中の振返りや今後の目標設定、2ヶ月の継続を讃える「完走証」の授与などを行いました。参加者の方々が想定した以上に不思議と仲良くなっていて、皆さん笑顔でお話しされていたことが、とても嬉しかったです。

終了会の様子

導入成果

取り組み成果

鈴木:累計参加人数が62名、最終参加人数は56名ということで期間中の継続率は実に90%に達しました。参加者の平均歩数は、維持または増加傾向、体脂肪率は減少傾向、筋力量は増加傾向でした。期間中のアプリ投稿数は、1日あたり1.5回でアプリ上でコミュニケーションが継続していることがわかり、歩数や投稿数の変化などの事業の結果を数値で示せることはとてもありがたいと思いました。さらに、参加者60%が事業終了後もチームを継続し、生活習慣の改善が続いていることが確認できています。

参加者の声

鈴木:参加者の皆さんからはポジティブなお声を沢山いただきました。

参加者の声

鈴木:事業が終了して数ヶ月経過した時に、参加者の方からお手紙が届きました!これまで事業を行って、好転した結果を具体的に記載した感謝のお手紙をいただいたのは初めてだったので、驚いたと共に本当に嬉しかったです。

事業に参加した市民からいただいた感謝のお手紙

職員目線のメリット

鈴木:これまでも、市の健康教室では楽しかったという声はもらっていました。しかし、みんチャレ事業では「2ヶ月間ずっと楽しかったわ」とか「この後も一緒にやっていきましょうね」というお声をいただき、プログラム期間中ずっと、さらには終了後も事業の効果が続いていると感じることができました。生活習慣病の予防には、1年365日の中でどれだけの時間に影響を与えて、健康習慣を続けてもらえるのかが大切なのだと思います。

みんチャレを活用すると、事業終了後の継続率も確認することができるので、嬉しいです。市の事業終了後にどうされているのかは今まではわからなかったので、ICTを活用することのメリットを実感しています。

伊勢原市 健康づくり課の鈴木さんと蝦名さん

今後の展望

鈴木:最初にヘルスケアアプリを色々調べましたが、やっぱりピアサポートじゃないと生活習慣の改善は難しいかなと思っています。1人でアプリ使ってコツコツできる方っていうのは、既に自分でやっています。市の事業としてやるのであれば、1人では続けられない方がピアサポートの力で励まし合いながら、良い生活習慣を獲得することを支援していきたいです。

本事業は、伊勢原市第6次総合計画の令和5年から9年までの5年間の計画である、前期基本計画の重点事業として位置付けられました。加えて、伊勢原市ICT推進計画にて「基本方針3 ICT を活用した地域社会の構築」の中でも「健康管理アプリを活用した生活習慣の改善」として記載されています。私としては、この事業は時代の流れ的にも絶対市民の役に立つと信じています。

さらには、令和4年度事業の中で70代男性が使ってくださり好評だったため、みんチャレは高齢者にも有用だと感じました。その方は今でもアプリを継続されていて、ご友人をみんチャレに誘いたいと先日来庁されました。高齢市民同士で励まし合いながら継続できることから、伊勢原市ではみんチャレを活用したフレイル予防事業も令和5年度から開始しています。成人期および高齢期までの横断的な健康に関する行動変容の支援ツールとして、今後もみんチャレを活用していきます。

伊勢原市役所前で左から伊勢原市 保健福祉部健康づくり担当部長 髙橋 健一さん、健康づくり課長 高橋 和行さん、係長 鈴木さんと伊勢原市公式イメージキャラクターのクルリン

文:久保田 洋介・渋谷 恵 / 取材・写真:川口 裕之・渋谷 恵(みんチャレ編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

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